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ヴァージンロード・エスケープ

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ヴァージンロード・エスケープ
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花舞う未来を信じて



「ジルベールさん、こっちです」
 優・コーデュロイ先導の元、裏路地を駆けていくジルベール達。
「ルージュさん、だっけ? 悪いね、音楽祭目当てに来てくれたのに……」
「気にしないで。優の想いでもあるもの。それに私だって愛の無い結婚なんて反対だわ」
 毅然とルージュ・コーデュロイがそう告げる。
「でも、何か“当て”はあるのですか?」
「一応、時間までに逃げ切って、この住所にある建物に向かえばいいって」
「でも、その後、どうするんでしょうか?」
「実は僕もどうするか聞いていないんだよなぁ」
 どうやらその先はギヨームも黙っていたらしく、ジルベールも聞き出せなかった様子。
「こんな大事な事、不安が残る形で推し進めるのも迷ったんだ。
 ……最悪、僕自身が考えた方法で、って」
「では、どうして、そうされなかったんですか?」
「“信じろ”って言ったのが、マーヴェルの父親だったからさ」
“それだけで充分”という顔で断言するジルベール。
「……では、私達も彼を信じないと、ですね」
 優にも彼らの逃走について案があった様子だが、今回は心の内に留める事にした様子。
「気を遣わせていたみたいだね。ありがとう」
 その言葉に笑みで返し、改めて彼らが約束を果せる様にと気持ちを引き締める優。
「次は……っ!?」
「優、どうしたの?」
 先導していた優が目を抑えてその場に立ち止まる。
「何を見たの?」
 エイジオブアクエリアスが見せた未来が影響していると思ったルージュが駆け寄る。
「ジルベールさん!」
「追っ手が……!」
「ルージュ、お願いします!」
「えぇ!」
 先の出来事で詰められた距離を離すため、
 ルージュが藍銅のネックレスを使って水弾を放つ。
 それに足を取られた追っ手数名がその場で転ぶ。
「相手は女2人だ! 多少乱暴でも構わない!」
「随分と非常識な方々ですね?」
 雅傘で相手の攻撃を受け止め、
 スリップの技能を使って攻撃を逸らす形で体勢を崩させる優。
「うわっ」
 そのまま地面へ顔面から突っ込む追っ手。
「こっちよ!」
 優が指示した方向へ今度はルージュが先導しながら逃走を続ける一行。
 そうして再び距離を保つ事に成功した様子。
「なんとかなったね。……それで、さっきはどうしたんだい?」
「……ジルベールさん」
 真剣な表情でジルベール達の方へ向き直る優。
「この後、何があってもギヨームさんとの約束を守る様に動いてください。
 ……例え、2人がバラバラになってしまっても。
「バラバラに……?」
 その言葉に不安を抱くジルベール達。
「大丈夫ですよ。貴方達の想いはきっと同じなはず。……だから、お互いを信じて。
 離れても、最後は一緒になれるって信じて……」
 エイジオブアクエリアスが見せた漠然とした未来。
「こんなアドバイスしか出来なくてもごめんなさい」
「そんなことないです。……ありがとうございます」
 優しく優の手を包むマーヴェルの手。
「ここは私たちが足止めします。先に行ってください」
「ありがとう……!」
 優とルージュに礼を告げてジルベール達は先へと進む。
「……それで、本当は?」
 優が何か隠している事に気付いていたルージュ。
「内緒です」
「あら。……でも、悪い事ではなさそうね」
 そう秘める優の笑顔が“良き出来事”であること告げていた。
 そして、その予感は“仮面の道化”を名乗る男から受けとった招待状を見て、
 確信へと変わるのであった。



 先程、忠告された言葉を反芻しながら表通りに出るジルベール達。
「この手を離すもんか……」
 そう誓うジルベール。
「フハハハハハ!」
 突如として、大通りに高笑いが響く。
「トウッ!」
 マーヴェルとジルベール達の前に美しい音色と共に現れた紫月 幸人
 もとい、怪盗光輝仮面。
「“怪盗光輝仮面”参上! サイドチェストォォォオオ!」
 名乗りと共に鍛えた肉体と股間を光らせポージングを放つ。
「あ……あ……」
「まずい! マーヴェルが衝撃のあまり泣きそうになっている!」
「そうかい! だったら、その美しいレディを笑顔にさせてみせよう! ハッ!」
 そう宣言し、マーヴェルを抱きかかえてその場を去る幸人。
「……あっ!!!!!」
 あまりの事にジルベールも思考が止まっていた様子。
「しまったーーー!」
「君はアホかーーー!!!!!!!!」
「また仮面っ!?」
 先程からジルベール達を助けていた仮面の男が思わぬ事態に飛び蹴りを入れていた。
「呆けている場合かい! いいからこっちへ!」
 ジルベールが彼に言われるがままについていく。
「なんのコントだ?」
「いつも通りだなぁ、ジルベール達」
 本人たちは大慌て。
 しかし、街の住民は“いつものこと”だと幸人の登場に歓声をあげるのみであった。
 一方、幸人の方は。
「ひぃぃぃぃぃいぇぇぇえええええ……」
 幸人の腕の中で小さく震えるマーヴェル。
「だから、怖がらないでよ~」
「む、無理です~……」
 一応、事情は説明し敵ではないと理解している様子だが、
 さすがに幸人の格好に怖がっている様子。
「むっ……! 敵の気配!」
 追っ手と特異者数名が幸人を止めようと立ちはだかる。
「仕方ない……。ここは通してもらうぞ!」
 光輝く肉体を武器にパリツで敵の攻撃を受け流す幸人。
「眩しっ……」
「これがシャイニングマッスルチャージだ!」
 マナを纏った強烈な対語りをかまし、強引に突破する幸人。
「……よし、ここなら大丈夫かな?」
 物陰に隠れた幸人が服を着ながら、
 未だ怖がっているマーヴェルをなんとかなだめながらホテルの中へ。
「よし。……それじゃあ、少し身だしなみを整えようか」
「な、なんでですか……?」
「君にはこの後があるんだろう?」
 幸人の言葉に今の状況を思い出すマーヴェル。
「……ですが、私は断ろうと……」
「そりゃそうだよね~。でも、一応、君は花嫁なんだから。
 せっかくのドレスがボロボロだよ?」
 ホテルに用意してもらっていた衣装と道具を勧める幸人。
「……でもなんで?」
「ん? 秘密」
 そう言う幸人の手には1枚の招待状が。
「さて、後は花嫁を“舞台”まで送り届けるだけ、かな」
 準備を終えたマーヴェルを再び抱きかかえて音色の街を駆け抜ける。
 もちろん、葉っぱ一枚で。
「いやですぅぅぅうううううう!!!!」
「ハッハッハー!」
 幸人は高笑いを響かせて、もう1人の“仮面”と約束した舞台へ。



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