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ヴァージンロード・エスケープ

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ヴァージンロード・エスケープ
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見届ける者達は何を想うのか



「……見つけた」
 今回の騒動、きっとどこかで“彼”が見ているはずだと。
 そう信じていたユファラス・ディア・ラナフィーネが“彼”と出会った。
「……久しぶりだな」
「そうですね」
 流体となっていた身体を固定化し、一礼する男。
「まるで、あの時と同じだな」
「そういえば、あの時も出会った時、私はこうして一礼したのでしたね」
 彼は“奇術師”と呼ばれた男。
「……とりあえず、追っ手、か」
「えぇ、今回は貴方と同じ目的みたいですね」
 ジルベール達を追いかける追っ手たちの数を減らすため、
 路地裏でかつて特異者を苦しめたギアを駆動させる奇術師。
 対して、ユファラスはメロディーアで音色を奏で軽いショック状態を与える。
「そういえばあの時、名前を聞けていなかったな」
「一度だけ、“彼”が私をこう呼んでくれました。……“ユーグ”と」
“心”という意味のその名は、きっと”彼“の心を託されたものとしての名なのだろう。
「そう、お呼びください」
「分かった。……俺の事はユファと、そう呼んでくれ」
「分かりました」
 かつての時とは違う、同じ目的、同じ想いでギアを振るう2人の邂逅。
「……なぁ、マーヴェルに会わなくてもいいのか?」
「私はあの日の“残滓”です。
 もし、私が彼女の前に現れる時、それはきっと彼女たちの日常に危険が及ぶ時でしょう。
 ……こうしてあることがきっと“彼”の望みですから」
 今はマーヴェル達の“日常”を見届けていたい。
 それがユーグの願いだと、そう答えた。
「……そうか」
 なんて寂しい優しさなんだろう、とユファラスが胸の中で呟いた。
「……貴方は優しいのですね」
 奏でられる音色からユファラスの想いを汲み取ったユーグが呟く。
 せめてそれなら、そう願う2人は邪魔する追っ手たちを振り払う。
 彼女たちが切り拓いた道を歩み、望む未来を手に入れてくれると信じて。



「それだけはダメだー!」
「そ、そうか」
 ジェノ・サリスの提案を頑なに否定するジルベール。
「だが、効果は抜群だと思うのだが。1日で解除されるぞ?」
「そういう……でも、とにかく今は……」
 ジェノの説得に折れそうになるジルベール。
「それはダメだー!!」
 そう言ってジェノの前に現れたのは、仮面の男。
「君は……」
「とにかく! ちょっとこっちへ」
「お、おう……」
 驚くジェノを連れていく仮面の男。
「これを……」
 なにやら招待状を渡され、
 そこに書かれている名前に彼がジェノの提案に横やりを入れた理由を把握した。
「……これは、1日経った後、解除されるのは遅いな」
「今日そんなことされたら大惨事だよ……」
「そうだな。この方法は諦めよう。……何か出来る事は」
 用意した方法が実行できない事もあり、何か出せる案はないかと頭を抱えるジェノ。
「そこは私に任せてください」
 両手に小道具と化粧セットを抱えた暁月 弥恵が現れる。
「先に行くから驚いちゃいましたよ」
「今止めないと大変な事になりそうだったからね。……それじゃあ、後頼めるかな?」
「了解です!」
 この場を弥恵に託し、去っていく仮面の男。
「……それで、何をするんだ?」
「とりあえず、これを使いましょう!」
 ジルベール達と合流し、マーヴェルに対し変装を施す弥恵。
「くすぐったいです……」
「少し我慢してくださいねー。……こんなものでしょうか?」
 パッと見ではマーヴェルと分からない様な変装。
「なかなか大変でした……。この後もありますし」
 視線でそう告げる弥恵の懐には先程ジェノが受け取った招待状が。
「ありがとう。それじゃあ、僕らは行くよ」
「どうかお気を付けて……!」
 弥恵に笑顔で見送られながら逃走を開始する2人。
「ジルベール、マーヴェル!」
 ジェノに呼ばれ、振り向く2人。
「自分の生きたいように生きれ。……結婚は幸せなものでなければ、だからな」
「……ありがとう!」
 別れ際に手を振り、路地裏へと消えていく2人。
「……これでとりあえずやれることは終わりか?」
「いいえ。次は貴方の番ですよ」
 化粧セットを手にジェノに近づく弥恵。
「な、なにをするんだ……?」
「少しじっとしていてくださいねー」
 しばらくして出来上がったのは、ジルベールに似せられたジェノの姿だった。
「…………」
「さすがに手持ちの道具だと彼らに似せるのは難しいですね」
 弥恵はウィッグなどを使いマーヴェルのような姿に。
「これ、バレないか?」
「そうですね。ちょっと大通りに出たらすぐばれるかもしれませんね」
「なら、なるべく裏通りを通るか。暗い路地なら誤魔化せるだろう」
「そうですね。後ろ姿くらいなら勘違いしてくれそうな状況ですし。
 ……さぁ、行きましょう、“ジルベールさん”」
「……なんだか複雑な気分だな」
「追いかけろ、時間が無いぞ!」
「来たな」
「えぇ」
 勘違いしてくれた追っ手と共に逃走を開始する2人。
 ローラーステップ等を使い、踊る様に軽やかに逃走を続ける弥恵と
 彼女の手を掴むジェノの逃走シーンはまるでダンスを踊っている男女の様だった。
「次、会うときは2人にも私の舞を見て欲しいですね」
「俺は今回の顛末がどうなったか、いい報告を聞かせてもらいたいものだな」
 フューチャーヴィジョンを使うジェノだが、
 見えたのは自身が追っ手たちに囲まれる感覚だけだった。
 ジルベール達に効力がなかったのか、それとも彼らに襲い掛かる“不幸”はないのか。
 後者であることを信じ、弥恵と共に明るい未来の話をしながら、
 ジルベール達の未来を背負いながら街を駆け抜けていくのであった。



 路地裏を駆ける蒼い風の姿。
 自ら囮となる形で追っ手を引き付けているのは、戒・クレイル
 用意した“仕掛け人”の準備が整った事を信じ、一度表通りへ飛び出す戒。
「……ぁ」
 戒に気付いた仕掛け人、シャリーゼがこちらに合図を送る。
 打ち合わせた通りパレードに混ざっている彼らの傍に隠れる戒。
「最初は様子を見ましょう。お願いします」
「カイくん、分かってますよね?」
「分かってる分かってる」
 そうは言いながらも隠せない笑みを浮かべながら楽器を構えるカイ。
「それじゃあ、セッション、頼んだぜ」
 シャリーゼと戒に合図を送り、音色を奏で始める。
 シャリーゼは練習したというフルートでカイの奏でる音色に合わせる様に。
「……さて」
 風赦を拡散モードで構える戒。
 狙いの先には先程まで戒を追いかけていた追っ手たち。
 表通りに出て戒を探していた彼らに風の音色が吹き通る。
 その音色はカイたちの旋律と共鳴し、より遠くへ響き渡る様に追っ手たちの元へ。
「な、なんだ?」
 急な突風に少し驚いた様子だが、所詮はただの風。
 そう思い、すぐに平常心を取り戻し動き出そうとする。
 だが、やけに身体が重く感じる。
 それは、先程から吹き付ける風が通る度に徐々に徐々にと重くなる。
「……まさか」
「気づいたみたいですね」
 だが、その頃にはすでに手遅れ。
「マーヴェルさんたちの想いは邪魔させませんよ」
 戒が追っ手たちの足止めに成功したことに気付いたカイたちが親指を立てて合図する。
「後は、この音色を絶やさず、ですね」
 カイとシャリーゼが頷き、奏でられる音色により想いが込められる。
 奏でる音色が2人の愛の音色を繋ぐ風となる。
 そう信じて音色は絶やされる事無く奏でられるのであった。



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