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アイドルたちの夏休み

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アイドルたちの夏休み
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◆ショップ巡り(3)

 合歓季 風華石碑の守り手天草 在迦イシュタム・カウィルは四人で連れ立って、談笑しながらショッピングモール『イクスピナ』内を歩いている。
 目的地はアイドル御用達のステージ衣装の店。

 実は風華は、パラミタの石碑の守り手に普段の姿を見てもらい、自分が契約に値する身かどうか見極めてほしいと思っている。
 それには、衣装デザインをオルトアース・ナゴヤで学び始めた風華の想いとこだわりを知ってもらうのが一番良いというわけだ。
 また風華は今日、実際に衣装を注文しようと思っているので、デザインの参考にと【ロリータドレス】のコーデ一式【EverEphemeral】を着てきた。
 衣装名の由来は不変の少女性。
 穢れのない少女の心が夢見てくれるようなロリィタファッションモデルになれるように、との願いが込められている。
 ヘッドドレスの花飾りは【魔女の花飾り】から作られた【EverLilium】に交換してある。
 白百合に透明や乳白色の宝石を配してあるこの花飾りは、お守りの効果もありそうな、風華お気に入りの品である。

 一行は店に到着した。
 広い店内には、様々なシーンに使える衣装がぎっしり吊られたパイプハンガーが、所せましと並んでいた。
「いらっしゃいませ!」
 店員が、風華たちを笑顔で迎えてくれる。

 風華はここで二手に分かれることを提案した。
「私は衣装の話題になると時を忘れて長くなりますから、お二人は私に構わずご自分のお衣装を見てきてください」
 言われた在迦とイシュタムは互いに顔を見合わせた。
(半分言葉通りだろうけど、ネムさん、気を遣ってくれてるのかな?)
 在迦はそう思ったが「ありがとう、ネムさん」と言って素直に風華の好意を受け取る。
 イシュタムも、風華に気を遣われている気がしたが、風華の言葉に甘えることにした。

 在迦とイシュタムは仲良く手を繋ぎ、衣装の波の中へ進んでいった。
(本当に仲良しのお二人……ふふ、楽しんでらっしゃいませ)
 二人の後ろ姿を風華は微笑ましく見送った。

 風華が石碑の守り手と共にオーダー衣装の受付を探すと、店の一番奥にそのカウンターはあった。
「まあ、素敵なお衣装ですね!」
 受け付けにいた店員が、風華を一目見るなり目を輝かせたので、風華は礼を言って衣装をオーダーする旨を告げた。
 その時、すかさず石碑の守り手がデザインの資料画をさっと差し出してきた。
「いつの間に用意されたのですか!?」
 風華は驚いたが、石碑の守り手の手回しの良さに感謝して微笑んだ。

 オーダー衣装のデザインのテーマは“白百合”。
 全体をホワイトとオフホワイトで統一する。
 ヘッドドレスは左右に花飾りを付けて少女らしく。
 ワンピースドレスはエレガントなミモレ丈にして、裾には花模様のレースと百合十字。
 優しい姫袖には袖留めとアームカバーを付けて緩くなりすぎないように引き締める代わりに、ドレスの胸元に持ってきた花飾りで顔周りを華やかに引き立てる。
 清楚な白いタイツに合わす、すっきりしたストラップのおでこ靴は、足元が重くなりすぎない効果を生む。
 まさに今風華が着ている衣装そのもので、まるで【ダイレクトマーケティング】のようになっていたが、資料と実物でハッキリとイメージを伝えることができた。

 これを元に、デザイナーと一緒に生地や飾りのアレンジを考えていく。
 例えば裾にあしらったレースひとつとっても、材質やギャザーのボリュームを変化させるだけで、全く違った印象になるのである。
 風華は夢中になってアイデアを出していった。

 新たな出発で、風華はアイドルにはなかった視点を得たが、フェスタ入学時の想いも見失ってはいけないと思う。
 姿見に向かう時、嘘が付けない白を纏った自分を見つめ直し、着実に前へ進んでいこうと決意する風華だった。

 *

 一方、イシュタムと在迦は二人で楽しく衣装選びをしていた。
 二人で手を繋ぎながら皇子系、軍服系、カエルパーカー、犬耳など、いろいろ見ていると、これまでの出来事を色々思い出してしまう。

 イシュタムはフェスタで活動し始めて一年半ぐらい経つけれど、着ている服はほとんど故郷のセブンスフォールのものだった。
 そこでイシュタムはこの機会に心機一転し、気持と衣装を新しくしたいと思っている。
 今日は地球風のコーディネートで動きやすいストリートライブの衣装を新調するつもりだ。
 私服に兼用できるようなデザインなら申し分ない。
 イメージする方向は決まっているので、イシュタムは次々と選び出していった。

「……とりあえずこんなところか!」
 イシュタムが選んだのは、チェック柄の長袖シャツ、半袖の丈が短いTシャツ、ホットパンツに灰色のレギンス、革製のスニーカー。
 好きな物を選んでいったら、もうそれだけで見事にコーディネートされたひと揃えになっていた。
 どれも動きやすく、着心地が良さそうな材質だ。

 在迦の方も欲しいものは決まっていて、今回は聖歌隊風の衣装を買おうと思っている。
 聖歌庁ではなく、賛美歌を合唱する人が着ているのをよく見かける、あの衣装だ。
 在迦にとってはこれが一番落ち着いて歌える衣装と言える。

 これまで在迦はハンドルネームの“天草燧”と名乗っていたのを、この機に本名に戻した。
 そのこともあって、原点の姿に立ち返るためにも聖歌隊の衣装を新調したいのだ。
 在迦はガウンとベレー帽を手に取り、アレンジしてもらえるか店員に確かめた。
 オオマツヨイグサの花飾りを付けてもらえたら、素敵だろうなと在迦は思う。
 宵咲きの大輪は一番好きな花だから。
「装飾は個を持って立つ象徴だからね」
 風華の受け売りだけれど、本当にその通りだと思う在迦だ。

 選んだ衣装を持って二人は別々に試着室に入り、試着してみた。
 新しい衣装を着た姿を、互いに見せ合う。
「イシュタムさん、セブンスの衣装にドレスにといつも似合っていたけれど、今回もとても似合ってるよ」
 少し照れながら褒める在迦は、眩しそうにイシュタムを見る。
 イシュタムもガウンとベレー帽を身に着けた在迦の姿を見て、とても彼らしいと思っていた。
「在迦もよく似合っている」
 と素直に言葉が出る。

 その後も二人はいろいろな衣装を試着してみて、思いもよらない色や形が意外に似合うことを発見したりして、お互い大切な人とのひと時を楽しんだのだった。


 ***


 焔生 たまがイクスピナにやってきた理由は、レジャーを兼ねたマーケティングだ。
 同時に、プロデュースしたくなるようなアイドルと出会えることも期待している。
 自分自身より誰か他人を磨き上げる方が性に合っていると、たまは考えているからだ。
 フェスタに近いここイクスピナなら、フェスタ生も多くいるだろう。フェスタ生と縁ができれば好都合だ。

 たまはいろいろな服や今年の水着などを順に眺めて、流行をチェックしていく。
 新しく見るものはどれも、目に新鮮に映る。
 たまは次第にテンションが上がっていくのを感じていた。

 店に入って、店員におススメの商品とその理由を聞いたりして、マーケティングを進めていく。
 時にはこだわりのある店員の強いプッシュもあり、そういうときたまは、金に糸目をつけず仕入れるのだった。

 カジュアルに着られる洋服もセクシーな水着も買い込んで、最後に行ったのが、アイドル御用達のステージ衣装の店だった。
 中に一歩足を踏み入れると、そこは色の洪水、別世界だった。
 “吊るし”の衣装も信じられない程たくさんあり、たまは目を輝かせてそれらを見ていく。

 目的もなく買う訳にもいかず、今年の傾向でも店員に聞いてから帰ろうと思い、店の奥へ向かった。
 オーダー衣装のカウンターがある。
 そこにいた店員と、アイドル衣装の話題にひとしきり花を咲かせた後、たまはついでのように言った。
「私はフェスタのアイドルをプロデュースしたいと思っているんです。かわいらしい女の子がいいなあと思っているんですが、なかなか出会うチャンスってないものですね」
「あら、残念ですわ。さっきまでとても素敵なお嬢さんがここにいらして、衣装をオーダーされていたのに……」
「そのお嬢さんって、フェスタ生ですか?」
「はい、そうだと思いますよ」

 もう少し早くここに来ていれば……。
 少し残念に思ったが、「そのうちまた出会う機会もあるでしょう」と、たまは店を後にしたのだった。

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