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アイドルたちの夏休み

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アイドルたちの夏休み
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◆ショップ巡り(2)

 高瀬 誠也はショッピングモール『イクスピナ』にやってきた。
 特に買物の目的はなかったが、
(ウィンドウショッピングだけでも楽しいかな?)
 と各店舗をぶらぶらと見て回ることにする。

 まず訪れたのは、飲食店のゾーンだった。
 アイスクリームも氷イチゴも、夏の日差しを受けて、より一層おいしそうに引き立てられる気がする。
 誠也もつい、傍のアイスクリームショップでアイスを一つ買ってしまった。
 フレーバーはオーソドックスなバニラ。
 奇を衒った味を選んでがっかりするかもしれない危険を冒すよりも、バニラにしておけば間違いない。
 事実、期待通りの美味しさだった。

 次にファッションや日用品のゾーンに行ってみると、どのショップも夏らしい商品で溢れていた。
 水着に浴衣、サンダルにパラソル、そういえばキャンプ用品も夏が旬だ……。
 明るい色合い、鮮やかな色合いの商品は、どんなジャンルでも見ていて気持ちが浮き立つ。

(この夏の思い出に、何か一つ新調しようか……)
 そんな気分になった誠也は、今日は買物の予定はなかったけれど「もうすぐ誕生日だし」と自分に言い訳をして、買う気になって商品を見始めた。
(……何にしようかな?)

 その時ちょうど雑貨店の前にいた誠也は、涼しげな風鈴の音に呼び留められた。
(ああ、いい音だ……)
 音がする方を見ると、ガラスの風鈴の下に扇子が置いてあるのが目に入った。
 メンズ用も種類が多いようだ。
 開いてみれば一つずつ異なる柄が面白く、次々と手に取って見てしまう。
 あおいでみると結構涼しい。

(扇子にするか。扇子は来年も使えるし……)
 気に入った一本を見つけた誠也は、何だかウキウキした気持ちになった。
「すいませーん。この水色の扇子下さい」

 店員に「プレゼント用ですか?」と訊かれ、少し迷って「はい」と答えた。
 きれいにラッピングしてもらった水色の扇子は自分の誕生日プレゼントだ。
 誠也の胸が、ほんのり温かくなった。


 ***


 シア・クロイツ月路 海璃(10歳)は、フェスタ出身の月路 海璃(16歳)に連れられてイクスピナにやってきた。
 海璃(16)は異世界の二人が自分の世界に興味を持ってくれたことがとても嬉しく、彼らを案内できることが誇らしい。
「あんまり詳しいわけじゃないけど、精一杯案内させてもらうよ」
 年下の知り合いを引率するような恰好で、海璃(16)は先頭を歩いていった。

 海璃(10)は海璃(16)の後をついて歩きながら、周りをキョロキョロ見回していた。
「ここが別世界の僕のいる世界の街かぁ。経験を積んで立派な大人になれるよう、とりあえず楽しまないとね」
 そんな海璃(10)の隣で、シアは上機嫌ではしゃいでいる。
「……わーい初イクスピナなのです……海璃さんに案内してもらってるし、海璃くんとイクスピナを満喫するのです」
 初めて目にするものに興味津々の二人を微笑ましく見守って、海璃(16)は飲食店が並ぶゾーンに入っていった。

 予め海璃(16)は、二人がスイーツの食べ歩きを希望していると聞いている。
 食べ歩きをするなら、まずは歩きながら手に持って食べられる軽めなものから始めて、次に座って食べるもの、持ち帰りができるものの順でいこうかな、と頭の中で算段している。
「シアちゃん、海璃、何か食べたいものある?」
「……何といってもレインボーかき氷なるものは……絶対に食べないとですね」
 シアがレインボーかき氷に並々ならぬ意欲を示しているので、海璃(16)は計画を変更して、今年流行りのレインボーかき氷を提供している甘味処へ行った。

 注文して待つこと数分。
 ガラスの器に高く盛り付けられたかき氷が、ドーンと出てきた。
 氷はレインボーの名の通り、カラフルなシロップで斜めの縞に染め分けられている。
「……おぉ、これが……おいしそうです」
 赤のイチゴ、オレンジ色のみかん、黄色はレモン、と色別に掬って口に運ぶ。
 その度にシアは、冷たーい、甘―い、と嬉しそうに歓声を上げた。
 シアほどではないが、海璃(10)も初めて見るレインボーかき氷に目を輝かせ、味わって少しずつ食べている。

 大きなかき氷を食べてすっかり冷えきってしまったので、次は少し温かいスイーツにしようということになった。
 そこで定番ながら、熱々ふわふわのパンケーキにたっぷりのメープルシロップをかけて、全員で舌鼓を打った。

 次は何を食べようと物色しながら歩いている時、海璃(16)は、ルミマルの形の水まんじゅうを売っている店を発見した。
 ショウウィンドウの中には、通常の水色のルミマルだけでなく、ピンクやレモンイエロー、エメラルドグリーンなど、涼しそうな淡い色のルミマルがたくさん並んでいる。
(ルミマルを紹介する良い機会だ)
 と思った海璃(16)は、シアと海璃(10)に声を掛けた。
「シアちゃん、海璃、あの水まんじゅうは、ルミマルっていう不思議な生き物の形をしてるんだよ」
「……食べてみたいな……食べよう?」
「ええ? さっきあんなに大きなパンケーキ食べたのに、お腹いっぱいじゃないの?」
「……甘いものは……別次元なのです」

 ルミマルの水まんじゅうは結構な大きさがあったのに、二人共ぺろりと一個完食した。
「よ、よく食べれるね」
 海璃(16)が半ば呆れて感心していると、海璃(10)が、
「美味しかったから、家にいる妹やお母さんへのお土産として買っていこう」
 と言い出した。
 シアも、他の仲間へのお土産にすると言っている。
「食べ歩きだけじゃなく、お土産も買っていくなんて、シアちゃん仲間思いだなあ」
 感心してからふと気が付いて、海璃(16)は海璃(10)に訊いた。
「お父さんへのお土産は何にするの?」
 すると海璃(10)は急に感情の無い表情になり、冷たく言い放った。
「お父さんの?……適当にあの激辛物辺りでいいかも」
 海璃(10)が指さした先には、赤い唐辛子のイラストと「激辛」の文字が躍るのぼりが立っていた。
 海璃(16)は「僕と同じ父さんの評価なんだなぁ」と苦笑するしかなかった。

「……海璃君はどれを持って帰るです?」
「お母さんたち喜んでくれるかな?」
 シアと海璃(10)が肩を寄せてショウウィンドウを覗き込みながら無邪気に相談している様子は、ただ可愛らしいだけなのだったが、彼らにも色々と事情があるようだった。

 スイーツを食べ、お土産も買ったので、シアは最後に洋服を見たいという。
 女の子らしいなと思い、海璃(16)と海璃(10)はシアに付き合って洋服店について行った。

 シアは店の奥までどんどん進み、フリルのついた大人用の浴衣を手に取ってじっくり吟味した。
(フリフリな浴衣……ふふ……これなんか海璃さんに似あいそう)
 入り口で待っている海璃(16)と海璃(10)の方を向いてにっこりと笑う。

「彼女はああいった服が好きなのかな?」
 シアに微笑み返して、海璃(16)はのんびり海璃(10)に訊いた。
 だがシアの笑みを見た海璃(10)は、背中にぞわりと走るものを感じ、固まっていた。
(い、いやな予感しかしない。よ、よし、ほとぼりが冷めるまで逃げよう)
 考えるが早いか、
「ぼ、僕、もうちょっとあっち辺りの店の物見てくるね」
 と海璃(16)に言い残して、そそくさとその場から離れた。

 海璃(10)の後ろ姿を見送って海璃(16)は不思議そうにつぶやく。
「あんなに急いで海璃どこに行くんだ?」
 無防備に突っ立っている海璃(16)の腰のあたりを、ツンツンと叩く者がいる。
 振り返ると、シアが今買ったばかりのフリフリ浴衣を両腕に抱えて、ニンマリ立っていた。
 その笑顔に嫌な予感がする海璃(16)。

「……海璃さん、これ……着てください」
「何言ってるの、シアちゃん。女物のフリフリ浴衣なんか着ないよ!?」
 海璃(16)はやっと海璃(10)がこの場を離れた理由がわかり、遅ればせながら自分も逃げ出した。
 逃げればシアが追うのは当然で。

(と、とりあえずあきらめがつくまで逃げあるのみ)
 逃げ惑う海璃(16)の後をシアはしつこく追いかける。

 食べ歩きに来たイクスピナで、鬼ごっこが始まりましたとさ。

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