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村の宴と疑惑のおじゃる

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村の宴と疑惑のおじゃる
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■宴席にて■


 平吉の訴えを聞いた特異者たちが、竹里村に到着してほどなく、巡察・桐花桜麿を歓待する宴が村長の屋敷で始まろうとしていた。

「此所は国司の弟君、桐花桜麿様のご在所ですかの? 妾は旅の流れ巫女ですが、祝いの神楽舞を一差し舞わせて頂ければ……」
 屋敷の門前にて、そう切り出した高橋 凛音に、応対に出た村長の妻や、周囲で忙しく立ち働く人々が焦がれるような視線を向けた。
 それも当然。始巫の装束を身にまとい、貴族のそれに寸分劣らぬ優雅な挙措で語りかける姿は、田舎の村人たちには天人にも等しく映っている。
 村長の妻は、凛音と従者姿のアヤメ・アルモシュタラを、丁重に控えの間へ案内した。ふたりきりになると、声を潜めて、この後の作戦を確認する。
「さて、桜麿とやらが、真に国司の係累や否や、とくと見極めねばの。わらわは、ひと差しふた差し舞い踊りながら、宴席にて様子を伺おうほどに……」
「その間、屋敷内の者どもの調べは、私が」
 小一時間後、凛音は広間にて舞い踊っていた。
 シャン……シャ、シャン!
 神楽鈴がひと振りされるごとに、清冽な音が響き、舞の幽玄さを高めていく。
「なんと麗しく、素晴らしき舞いでおじゃろう」
 桜麿の視線を感じながら、凛音は神楽鈴で口もとを隠すと、スロートワイヤレスで囁いた。
「わらわが方は、至って順調じゃ。アヤメ……探索は任せたぞぃ……」
 
「凛音様、では行って参ります……」
 控えの間に残っていたアヤメは、スロートワイヤレスで凛音にそう応じると、己の気配を消し去った。同時に彼女の姿がふっと消滅する。従者の変装の下に身に着けていた陽炎の忍装束が、アヤメを屋敷内の風景に完全に同化させていた。
 これでもう、彼女を察知できるものなどいない。控えの間から離れると、素早く屋敷の各所を巡りながら、凛音の耳として、桜麿の護衛や、村人たちの会話を聞き取っていく。
(核心に迫るには、こちらから話を引き出さないと……おや、ちょうどいい獲物が)
 屋敷の裏庭に出たところで、酔いざましに出てきたらしい男を発見する。身なりからして、桜麿に近しい者だろう。
 アヤメはすかさず、背後に迫ると隠形を解き、男の肩にひょいと手をかけた。
「あら……親分さんじゃ御座いませんか? お久し振りですねぇ」
 艶っぽい声音に振り返った男の視線と、アヤメの魅了の力がこもった視線がかちあう。その瞬間、男の表情がふにゃりと蕩けた。
「親分はよせやい、夜盗の地が出ちまうだろ。今日の俺は、国司の弟君の従者様……どうよ、馬子にも衣装だろ?」
 こうなれば、こちらのもの。後は、昔馴染みの女として、聞き出せるだけの情報を聞き出してやるだけだった。
 
 広間中央で行われる神楽舞に見惚れる桜麿の護衛たちの合間を、ふわりと芳しい香りが流れた。
「さ、皆様。まずは一献」
 給仕役に身をやつしたヒルデガルド・ガードナーは、ひとりひとりの杯に酒を注いで回りながら、目指す桐花桜麿へ近づいてゆく。
「麿にもついでもらえるかや」
 声をかけられるまま、桜麿の杯を満たしながら、ヒルデガルドは震えてみせる。
「おう、震えておじゃるな、いかにした」
「恐ろしいのです、桜麿様、なにとぞ賊を……この村をお救いください」
 すがりつくようにしなだれかかってみせれば、桜麿はにんまり微笑み、ヒルデガルドの身を抱き寄せる。
「愛い者の願い、麿は必ずや聞き届けようぞ。じゃからの、もそっと近う」
「あ……い、いけませぬ……このような場では……」
 やんわり拒んでみせたところで、桜麿の懐から、貴族の持ち物とは思えぬ山刀の柄が覗いているのに気づく。一部が黒ずんでいるのは血の染みだろうか。
 ヒルデガルドの判断は速かった。この男は危険だ。早々に落としておくに限る。意識を集中した彼女の全身が、凶器と化したその瞬間、村長が進み出た。
「どうぞこちらへお出ましを。ささやかな進物をご用意しておりますれば」
 応じて桜麿が立ち上がり、機を逃したヒルデガルドは、ふっと息をついた。なんとも間の悪い。だが、収穫はあった。あの男が、都の貴族などであるわけがない。

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