第1章『姫令部防衛最終戦』
人間の姿を模した兵器たちが人々を守るために戦う世界「アーモリー」。
アクシスパワーズの本拠地から離れた場所にある小さな姫令部。
その目の前に広がる入り江には、ユニオンジャスティシアの軽巡洋艦と重巡洋艦の艦姫合わせて約20姫が侵攻していた。
「恐喝まがいのことをした上に、それすら裏切る、か。中々に人でなしな教導官のようだな、アレは」
ジェノ・サリスはユニオンジャスティシアの教導官ダニエルの行いに眉をひそめる。
彼女は飛姫マーロの人質としてアクシスパワーズの前に現れた。しかし、それはコウタたちを油断させる作戦だった。
「そういう手を使ってきますか・・・・・・でも負けませんから」
武器を構え
真毬 雨海が言う。
「しかし、数が多いな。接近されると厄介だ、早々に数を減らす必要があるか」
「敵はわざわざ艦姫だけでそろえるという悪手を取っています。空の恐ろしさ思い知らせてあげます」
雨海は
空/九九式艦爆と
空/“流星”と共にユニオンジャスティシアの艦姫たちに近づいていった。
まず、流星が対艦スプリット雷装を射出する。射出された雷装はマトリクスの効果により分裂し、艦姫たちの前で爆発していった。
敵陣が崩れていく中、流星は複数の魚雷を受けた艦姫の1姫に追い討ちをかけるように『【空】霊式固定機関砲・魔』で魔弾を連射していく。
艦姫に命中すると弾が炸裂し、大幅なダメージを受けた艦姫は沈んでいった。
「流星が敵陣を崩してくれました。九九式艦爆は負傷している敵の艦姫に急接近して攻撃お願いします」
「分かったわ」
九九式艦爆は雨海の指示に従い、飛びながら艦姫に近づき機銃を撃っていく。
「“ユニオンジャスティシア”の艦姫なんて目じゃないわ!」
雨海も『【空】焼夷機関砲』を撃ちながら接近していく。放った焼夷弾は着弾すると、炎が重巡洋艦の艦姫に燃え広がった。
その間に高度と速度を下げると、『【空】雷装:LTF5b』を放ち艦姫に大ダメージを与えた。
一方、ジェノの方も作戦を開始する。
雨海たちが攻撃をしている間
超海/戦艦“大和”の霊兵装にマトリクスをチャージした。
「接近する前に疲れさせてやれ」
「了解! 大和砲がうなりをあげますわ」
やがて、大和がマトリクスのチャージを完了させると、『【空】マトリクススコープ』でユニオンジャスティシアの艦姫の様子を窺う。
双眼鏡で敵が密集している場所を確認すると、大和に指示を出す。
「大艦巨砲主義万歳ですわ!」
大和は『【超海】46cm三連装砲』を目標にしっかりと向ける。
「・・・・・・砲撃開始!」
ジェノの合図と同時に爆音と煙を上げ、弾を発射する。着弾した瞬間に衝撃波を生み、さらに艦姫の敵陣は崩れていった。
「私の大和砲の威力、思い知りなさい!」
ジェノは味方の教導官に通信しつつ、大和に声をかける。
「その調子だ。俺のところに戻ってマトリクスを補給しろ」
「了解ですわ」
「こちら、ジュノ・サリス。もし、マトリクスが不足しているのであれば、少ないかもしれないが俺のところで補給してくれ。」
「こちら、真鞠 雨海。お心遣い感謝します。では、武姫たちと一緒に少しずつ頂きますね」
雨海は流星と九九式艦爆が攻撃している間にジェノの元へ飛んでいく。ジェノは雨海が到着すると、マトリクスを渡した。
「ありがとうございます」
「話を聞いた限り、前よりも倍近く艦姫を用意しているようだ。本格的に姫令部やマトリクス鉱山を奪うつもりだろうな」
以前この姫令部に訪れたことのあるジェノは雨海にそう伝える。
「そうですね。でも、的確に敵を片付ければ大丈夫なはずです。コウタさんに専念してもらうためにも私たちは艦姫を倒していきましょう」
雨海は補給し終えると霊兵装を展開し、敵の艦姫へ向かった。ジェノも大和を確認すると再び双眼鏡で敵を窺い攻撃態勢に入った。