【プロローグ】
ワールド:エデン・セクターE、勝者と敗者に別れた世界において、ある種の異様さを持った地区である。
あからさまな待遇の違いがありながらも勝者と敗者が混在する環境、当然のように勝者は自分達よりも待遇の劣る敗者を見下し、敗者は自分達よりも待遇の良い勝者を憎んでいた。
けれど、それでもこのセクターが崩壊せずにいられたのは、最低限の生命の保証はされているからだろう。
それは勝者と敗者の決闘者達による迅速なフェイル討伐が所以であり、ギリギリのところで保っていた。
だからこそ、些細なきっかけが大きな問題へと発展する。
その大きな問題、一言で言い表せば『乱戦』。
敗者の決闘者達が縄張りとしてフェイル討伐を率先して行なっている地域からフェイルが逃げ出し、勝者の決闘者達が率先して防衛している地区に。
同じように勝者の決闘者もフェイルを取り逃がし、敗者の方へとフェイルを逃してしまった。
勝者と敗者の決闘者がかち合い、フェイルとの戦闘で気が高ぶっていたこともあり、結果、乱戦。
あるところではフェイルと敗者が、あるところではフェイルと勝者が、またあるところでは勝者と敗者が戦い、目まぐるしく戦況が変化していっていく。
そんな乱戦は、一度目ではなかった。 それまでに何度も発生していたことから、そのセクターを統治していたサイガは、勝者に対しても敗者に対しても偏見が少なく、尚且つ腕の立つ者達……つまり、特異者達に依頼をしていた。
「乱戦を収め、自体の再発を防いでくれ」と。