三千界のアバター

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 ゲートを潜り雷都 美幸が訪れた大世界神多品学園都市は秋色一色だった。
 現代の日本に近い文明や文化を持ったその世界は、秋の昼下がりという時間帯も相まって安閑とした空気に包まれている。
 深呼吸をしてから相棒のデジタル一眼レフカメラが入ったケースを、その所在を確かめるように触れて軽く叩き、美幸は愛車の【KSX250】に跨った。
 公園前から反時計回りに神多品湖を一周するルート。
 紅葉の撮影ポイント探しは、走り抜ける一瞬を捕まえるような緊張感と、数秒後にはさらなる絶景と言うに相応しいものが見られるのではという期待に、減速以外になかなかブレーキを掛けられなかった。
 秋の風は少しばかり肌寒いが目に映る赤があたたかくて、緩く目を細める美幸は道側にせり出す大樹の枝が黄金の雨を散らすその真下をゆったりと走り抜けていく。
 そして数秒後に美幸はバイクを停車させた。
 カメラを取り出して、湖越しに神多品神社と東湖岳をぱしゃりとシャッターボタンを押す。慣れた手付きでカメラを操作し液晶モニタに出された画像を確認して、うん、と頷きながら。
 水面に映る鳥居の赤と、紅葉の朱。人口と自然のコントラストは嫌いではなく、むしろ好きだと美幸は改めて思う。互いに喧嘩せず溶け込み合うような融和性が多彩な表情として彩りに華を添えて、撮影のし甲斐があるのだ。何枚撮っても飽きない。
 それでもこの場所だけというのも勿体無いので、多少の物足りなさを感じながら次の場所へと移動を開始する。
 湖をほぼ半周した頃、目の前に先程採った神社と東湖岳が飛び込んできた。
 まずはローアングルから、鮮烈な朱と透き通る蒼の対比も奥深い、青空を背にした紅葉をぱしゃり。遠くから見る紅葉とはまた違った趣である。
「次の目的地は……」
 振り返れば、湖の対岸には空にそびえる神多品山。
「あそこに決めた!」
 訴えかけてくる直感には従うべきだと言わんばかりに、神多品湖の一周から一路目的地を神多品山に変えてバイクを走らせる。
 時計も気にせず夢中になっていていつの間にか夕方の時間帯に突入していたらしかった。
 見えてくる神多品山は今や紅葉と夕日で赤く燃えていて、小さく感嘆の声を漏らした美幸はその場で停車する。逸る気持ちに促されるままに一心不乱とシャッターを切った。切るしかなかった。一分一秒が惜しかった。それがこのタイミングでしか残せない景色だっただろうから。



…※…




 今までに撮った写真を飾るのでもよかった。
 けれど、″このフォトフレームの為に写真を撮るのも悪くない″と思ったのも確かな事で、だからと選んだロケーションは、美幸を散々に悩ませるだけの豊作を与えてくれた。
 時計の針が深夜を回る頃、ようやく決まった一枚は夕日に照らされる神多品山。

 夕映えに黄金にも似た茜色に染まる一瞬をそっとフォトフレームに収めて。

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