三千界のアバター

エデンのロミオとジュリエット

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第1章「【栄具同化】した青年との戦い 上」

 セクターEのとある一画、任務要請された特異者たちはワイリー家へ向かっていた。近未来的な建物が並ぶ中を進んでいくと、目の前に一際大きな建物がそびえ立っている。その真下では隔離する戦闘時の特殊空間が出来ており、人の声や破壊音が響いていた。
「何をしている!? あの敗者をなんとかしろ」
 建物の真下は広い庭のようになっており、その庭の至るところに帯刀者や調律者が武器を持っている。同じ制服から、彼らはワイリー家の護衛たちだと分かった。護衛たちが攻撃する先には、禍々しいオーラを放つ青年の姿があった。
「あれが目標の敗者か」
 まず、ジェノ・サリスが【【栄具】配者の慙愧】で驚異的な動体視力を引き出し、青年を観察する。青年の半身以上は黒い騎士の鎧に覆われ、手から直接生えるように剣が伸びていた。
「栄具同化は暴走の危険をつきまとう……試してみるか」
 ジェノは狙いを定め、【ポゼッション・パージ】を放つ。しかし、物理的な結びつきが強いためか、目に見える効果はなく青年自身にも効いているような反応はない。
「なるほど……しかし、単純戦闘で解除できるものなのか」
 今度は【フューチャーヴィジョン】で見定めていると、ジェノの頭の中に不吉な光景がよぎる。
 崩れ落ちた建物の前で、あの栄具同化した青年が倒れている。彼は指すら動きそうにないほど負傷している。しばらくすると、彼の周りにはたくさんのワイリー家の護衛たちが集まってきた。ジェノが注視していると、護衛たちは一斉に青年に攻撃し始める。袋叩きにされている青年からは声すら聞こえない。惨すぎる光景に、脳内の映像にも関わらず目を一瞬閉じた。
 再び目を開けると、青年はまだ立っている。護衛たちがあんなに過剰攻撃する必要は無いはず。疑問に思ったジェノがワイリー家の護衛たちに視線を向ける。彼らにとって栄具同化した青年は未知の領域で恐怖の対象であってもおかしくなかった。しかし、相対するワイリー家の護衛に恐怖の色はない。むしろ、目の敵である敗者を徹底的に潰すような凄みすら感じられる。
「こいつらも敗者が嫌いってことか」
 ジェノはため息をついた。護衛たちの異常な意欲は他の特異者も察しつつあった。
 葵 司はそれを確かめるため、【【栄具】復讐の牙】と『【栄具】巡礼者の貝殻』を原典回帰し、青年の前に立ち塞がる。
「このまま、攻撃するとお前もケガするぞ」
 司が青年に向かって呼び掛けるが、当然青年は返事などをすることなく切りかかってきた。咄嗟にその攻撃を避け、司はワイリー家の護衛たちの前に転がり込む。
「ちゃんと攻撃しろ。する気がないなら、こっちからやってやる」
 護衛たちが悪態をついたあと、青年に銃弾を放つ。地面に着弾すると、爆発が起き司も巻き込まれた。
「つまりそういうことか」
 司は妨害するように彼らの前へ【霧蝕】を放つ。栄具同化した青年の周囲には毒の霧が立ち込めた。攻撃を受けたと思った護衛たちは逃げていったが、栄具同化した青年は気にすることなく、建物を破壊するように暴れまわる。
「敗者と護衛を離す必要がありそうです」
 ルキナ・クレマティスは【ミーティアレイン】を発動するためにイメージを高めていく。その間にウリエッタ・オルトワートは護衛たちの前に向かっていく。
「気をつけて、ただの剣じゃなくて範囲攻撃とか持っているみたいよ! 私が確認するわ」
 そう話すと、ウリエッタの近くにいた護衛たちは構えを下ろしていった。その間にウリエッタが【偉能力分析】で青年の栄具を分析する。
 分析の結果、栄具の由来はとある世界の騎士であることが判明した。その騎士は婚約者を殺され、復讐のあまり国を滅ぼしたとされている。ウリエッタは分析結果と青年の様子に納得したように頷いた。
「彼自身にも近い事情がありそうね。でも、街ごと滅ぼされてはたまったものじゃないわ」
 ウリエッタは建物の方に近づき、その前に『有刺鉄線』でトラップを張っていく。青年はさらに建物を破壊しようと近づくが、「有刺鉄線」の罠に阻まれてしまった。
 一方、平坂 愛が冷気を纏う『蒼氷の太刀』を発現させ近づいていく。
「さぁて、単騎挑むほどの猛者とは、どれほどの強者なのでしょうか?」
 太刀をさらに【フロストバイト】で凍らせ、【脚斬】で足を狙って刀を振り下ろした。栄具同化しており足元は鎧に包まれていたが、ダメージがあったのか青年は膝をつく。それに気づいたワイリー家の護衛たちの一部は、青年に襲いかかろうとした。
「こいつの息の根を止めてやれ!」
 このままでは彼が袋叩きになってしまう。愛はすぐに『ハロウィンタトゥー2017』でヤクザっぽく顔を仕上げ、護衛たちの前に立った。
「テメェら黙ってろ!! ぶっ飛ばすぞ!!」
 キレたような声色で怒鳴りつけると臆病な護衛は黙る。しかし、まだ騒ぎ立てている護衛たちもいた。
「お前らレオ家の傭兵のくせに、指図するんじゃねえ」
 愛の怒号を無視して、護衛の一人が栄具同化した青年に近づく。咄嗟に愛は【トゥーランスド】で自らの刀を護衛に投げ付けた。刀は護衛の横髪を霞め、地面に落ちていく。護衛の横髪も風に拭かれ、落ちていった。髪が斬られた護衛は、震えながら振り返る。さらに、愛はその護衛を睨みつけた。
「次ほざいてみろ。その耳切り落としてやる」
 その一言にその護衛は声を上げ、逃げていった。一方、イメージを固めたルキナは【ミーティアレイン】を放つ。天から隕石が降ってきて、栄具同化した青年のすぐ側に落ちていった。青年はルキナを含めた特異者の方を見て、剣を構える。
「あなたは何か行き違いをしています」
 ルキナが訴えるが、青年は剣先を向けながら歩いてきた。さらにルキナは忠告をする。
「それ以上進むなら相応の覚悟が要りますよ」
 それでも、栄具同化した青年は特異者たちに向かって走ってきた。ルキナは無力化のために【ショックウェーブ】を放つ。広範囲に衝撃波を飛ばし、青年にも直撃した。一瞬、痺れ動けなくなったように見えたが、すぐにその痺れを振り払った。そして、剣を構え突進してくる。特異者も応戦するように武器を取り、走り出した。

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