三千界のアバター

悩める調律者少女とネガティヴな偉人!?

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■プロローグ■

 
 
 決闘者たちが、封鎖された広場へと足を踏み入れる。
 そこは既に、通常のエデンとは隔絶された特殊空間。
 偉能力の衝突によって生じた――
 彼らがその能力を揮うべき、異形ひしめく決闘空間であった。



■決闘者の戦い■

 
 
 広場に入った一行に、早速多数のフェイルが反応する。
 猛然と決闘者たちに突進するそれらに先ず対応したのは、前段の「調律者」九曜 すばるだった。
 
「早速お出ましか――」
 殺到するフェイルを認めると、すばるは躊躇なく駆け出す。
 疾りながら雷撃――「スパーク」――を放ち、敵先頭の鳥型フェイルを一掃すると、続けて「ロックスワロウ」の飛礫でもって、後続の獣型、亜人型を足止めする。
 鮮やかな先制攻撃によって機先を制した彼は、そのまま最寄りの彫刻の、頑丈な台座の影に滑り込んだ。
 
 一般に後衛戦闘に適性を有する「調律者」にとって、無謀にも思える一番槍の単騎駆け。
 しかしそこには、すばるが常重要とする考えがあった。
 
 ――遠隔戦にアドバンテージを持つ「調律者」であるこそ、それを最大限発揮するための間合いの維持に努める。
 ――最初になるべく肉薄して一撃を見舞うことは、相手に接近を躊躇させることにも繋がる。
 
 すばるが自らに定めた戦闘哲学は、一行全体にとっても有益に機能した。
 彼らは基本的に見通しのよい此地にあって、強固な陣地に拠って攻撃と行動阻害を繰り出す「調律者」という、有力な橋頭堡を得たのである。
 
 もう一人、すばると同じく迅速な初動を見せたのが、弥久 ウォークスである。
 彼もまたフェイルの接近を確認すると、「レッドコメット」のアクセルを全開にし、すばるとは別方向の台座に取り付いた。
 そのまま「ラーストリガー」を発現し、攻撃を開始する。
 
 1発、2発――「憤怒」の性質を宿した偉能力による炸裂弾が、群がる異形を薙ぎ倒す。
 台座でフェイルの吐き出す弾体を防ぎながら、僅かに攻撃の止んだ一瞬だけ身を乗り出し、的確に標的を捉えて行く。
 人間離れした精度のサーチ&デストロイを可能にしているのは、彼が使役するスノーラビットであった。
 砲火飛び交う下に場違いな愛らしい使い魔は、そのつぶらな瞳でじっ……と敵影を見据える。
 ウォークスは台座の陰からその様子を観察し、あらかじめアタリをつけた上で攻撃を実行しているのだ。
 「使える手は何でも使う」が信条の彼らしい、一流の搦め手なのだった。
 
「いいぞ、フェイルども。どんどん出てこい! 手早くさっさと片付けられて大助かりだ!!」
 
 獰猛に笑うウォークスの顔を、発砲の閃光が断続的に照らしていた。
 
* * *

「そろそろ頃合いですね。行くのでしょう、狭間?」
 言いながら、シン・アイビーは「賢者の砂」を放つ。
 砂粒は風に流されながら、しかし緩やかにも意思持つように前方へと拡がる。
「ああ」
 パートナーの言葉に短く答えると、四柱 狭間もまた、たゆたうようにふわりと跳躍する。
 「グラビティフリー」が可能にする、特有の滞空時間。
 彼はそのままフェイルの群れの上空まで進出すると――
 
 「ドン!」という衝撃音。
 自らの背後の空間に炸裂させた偉能力の衝撃波で加速した狭間は、一瞬にして敵のど真ん中に突入する。
 そのまま周囲を掃射すると再び跳躍し、自身に殺到した直下のフェイルをまとめて爆破。
 その反動で再び上空へと舞い上がると、屹立する「壁」の上へと降り立った。
 
 ――「壁」。
 忽然と姿を現した鉄壁群。
 それらはシンが散布した「賢者の砂」を元に錬成されたものだった。
「こんなところでいいですよね?」
 自身も「壁」の上に立ち、彼女が言う。
 「偉人」と契約者の「感覚共有」がありながらあえて言葉に出したのはつまり、質問ではなく「もうこれでいいだろう」ということだ。
「ああ」
 狭間はまた短く答えると、再び敵中に突入した。
 
 地上に降りて攻撃を加える。
 地面や「壁」やフェイルを蹴って跳ねまわる。
 ある程度のところで上空に退避し、足元を爆撃する。
 一連のパターンをくりかえし、黙々と敵を殲滅する狭間。
 壁上を逃げ回りながら散発的に銃撃を加えつつ、回復支援でそれを支えるシン。
 効果的に回転する連携が、フェイルを確実に撃破していった。
 
「まったく……インドア派に肉体労働をさせないでくださいよ……」
 息を切らせながらシンが言う。
「次の『壁』を寄越せ。もうじき今のは切れる」
 パートナーのボヤきを流して淡々と言い放ちながら、一方で狭間は情況を分析していた。
 
 ――それなりの数を倒したはずだが、未だ目に見えて減ったという感じはしない。
 広場の奥から次々に……湧いてくるようだ。
 誘引物に惹き寄せられているというより、そちらから溢れてきているような――
 
 一瞬の閃光の後、新たな鉄壁群が発生する。
「とりあえず……これで。あと、そろそろ一度下がらせて下さい」
 いよいよ息も絶え絶えといった様子で言うシン。
「ああ」
 やっぱり短く、狭間は答えるのだった。
 
 
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