三千界のアバター

ワールドホライゾン

それぞれの世界での夏祭り・5

リアクション公開中!

それぞれの世界での夏祭り・5
リアクション
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last

■淑女修行


 快晴の朝、アルテラ、王都ケントルム、図書館。

「リルテがアルテラで過ごしましょうと言うから気軽についてきたら」
 猫宮 織羽は、自分を導いたリルテ・リリィ・レイネッセをちろりと見た後
「えーと、これはいったい……」
 眼前にそびえる堂々たる山積みの本を見やり、ひきつった顔を。
「オルハの淑女修行です」
 本を山にした張本人たるリルテは、至極真剣な顔で答えるや
「わたくしが立派な淑女にしてみせますわ!」
 ぐっと拳を作り、力強く言い放った。
「淑女?」
 想定外の事に織羽は思わず聞き返した。
「そうですわ!」
 リルテはなおも力強い調子で
「オルハ……考えないようにしているのかもしれませんが、もしあなたとユリウス様が結ばれることになったら……あなたがコルリス王国王妃になるのですよ?」
 本日の目的をようやく明かした。
「お、おう、ひ……わたしが……コルリス王国の? 王妃に?」
 織羽は、リルテの口から飛び出した単語に改めて驚き呆然としてから
「……(そうだよね。彼と一緒にいるということは、そうなるんだ……未来はまだ、どうなるかは分からないけど……約束した、から……ユリィが迎えに来てくれる時まで待つって、相応しい淑女になるって……)」
 思い馳せるは、自身の決意と愛しい人の顔。
 そして
「よしっ、わたし、がんばる!」
 気合いを入れ、織羽は手近の本を開き
「その意気ですわ。王妃は直接政治に関わらないでしょうが、無知ではいけません。コルリス王国の歴史、経済知識、他国との関わり等……一通り学んでおくべきだと思いますわ」
 リルテの笑顔のエールをお供に
「……」
 修行を開始するも
「うへぇぇぇ、暗記苦手ええぇ」
 すぐに弱気な声を上げ、降参とばかりに椅子の背もたれにだらり。
「オルハ、相応しい淑女になると、約束したのでしょう?」
 リルテは、織羽の体たらくに少し呆れつつも励ましの言葉を掛ける。
「……うん、がんばるよ!」
 織羽は大切な約束を思い出し、シャキンと椅子に座り直し本と向き直った。
「そうですわ。頑張って下さいませ!」
 リルテは手を叩き、エールを送った。
 そんなこんなで、お昼時まで図書館での勉学に励んだ。

 昼時。
「んー、美味しい」
 勉学から解放された事もあってか、織羽は心底美味しそうにランチを食していた。
「オルハ、午後からはマナーレッスンをしますよ」
 リルテがランチを食べながら午後からの予定を伝えた。
 途端
「午後からは礼儀作法かぁ」
 織羽は軽く息を吐いた。
 とにもかくにもランチを終わらせ、花嫁修業午後の部となる。

 午後。
「公式の場では、長いドレスで優雅に歩かねばなりません」
 リルテのマナーレッスンが開講。
「裾の長いドレスを着て……」
 午前とは打って変わり、瑞々しい粋青のドレスを纏う織羽は、くるりとその場で回転し、ドレスの案配を確認してから
「裾を踏まないように……」
 織羽は慎重にウォーキングを開始。
「歩く……」
 織羽は歩き方を確かめるように歩き
「あ、こうやって裾をさばいて歩けばいいのかな」
 そのうちにコツが分かり、軽やかさが加わる。
「そうですわ。さすが、オルハ。(オルハはモデルだけあって姿勢も良いですし、立ち居振る舞いも雑ではありませんから練習すればもっと洗練された姿になりますわね)」
 講師のリルテは手を叩き、大いに誉める。内心でも大層評価している。
 それから
「次にお辞儀はこう、ふわりと優雅に」
 『令嬢の嗜み』を持つリルテは、雅にぺこり。
「なるほどー、こんな感じ?」
 織羽はリルテを手本にぺこり。
「そうですわ!」
 これまた、リルテは手を叩いて誉めた。
「体で慣れて覚えていくしかないね」
 織羽はそう言って、軽く床をトントン。
「問題はダンスだよね……そのうちパートナー探して練習しないと」
 と洩らした後、織羽はもう一度ウォーキングを始めた。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last