三千界のアバター

怪奇、幻惑の森と消えた少女

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怪奇、幻惑の森と消えた少女
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序章 森へと入る冒険者たち
 
 
 コミュニ・セラフムスケテールの案内で森へと入った冒険者たちは、二人と別れ、森の奥へと進んでいた。
 「まったく……うっとおしい森だぜ……」
 妙に柔らかい腐葉土の地面を踏み、濃い自然の匂いを鼻先に感じると、焦げ茶色の髪を後ろで束ねた小柄な美少年世良 潤也は、鼻を擦りながら天を衝くほどに伸びきった森の樹木の先を見つめ、小さくぼやいた。
 この森には名前は無い。ただ、近隣の村で暮らす者にとっては食料、生活用品を調達出来る唯一の場所であり、また、魔獣たちの巣食う危険地帯でもあった。
 「どうしたのよ潤也?」
 潤也の隣を歩く青い瞳の金髪ツインテールの少女にアリーチェ・ビブリオテカリオはその小さなぼやきが聞こえたのか、様子を窺うように声をかける。
 「あぁいや、ずいぶん深い森だなってさ」
 「そうね……でも村人たちが普段入っているような表層は探し終えてしまったわ。残りはこの先の深層だけよ」
 「そうだね……でも、聞いていた目印の矢は確かにこっちに続いてるもん。きっとこの先だとは思うけど……村人と冒険者はどこに行っちゃったんだろうね?」
 アリーチェの言葉に同調して今回の探索対象を心配しているのは銀の長髪に金の瞳の美少女羽村 空であった。
 空がたった今口にしたが、今回の依頼は行方不明となった村人と、それを探索に行ったが同じように音信不通となってしまった冒険者の探索である。
 そして目印の矢とは、この森へと入る村人達が迷わぬようにと行っている習慣で、自分の通った道に等間隔で矢を突き刺していくというものだ。
 彼女はこの矢を目印に森の奥へと進んでいたのである。
 「しかしこの矢の印も一体どこまで続いてるのよ……今この瞬間にだって襲われるかもしれないこんな状況で探索を続けるのはあまり良い事ではないわ」
 空と同じように矢を辿りながら道を往く白金の長髪に青い瞳の色気ある女性ヒルデガルド・ガードナー
は現在自分たちが置かれている状況の危険性を示唆すると——
「確かにあまり良い状況ではありませんが、そこは先頭でタンク役をしている私と皆さまの協力で何とかするしかないですね」
 そうして静かにほほ笑んで見せたのは焦げ茶色のオールバックに緑の瞳、柔らかい雰囲気を醸し出す青年、ブリテン(ロイド・ベンサム)であった。
 「正面は私がしっかり見張っておきますし、帰路の心配はありませんから。いざという時も大丈夫です」
 そう言ってロイドが目配せしたのは、ロイドの後ろに隊列を組みついてゆく二人であった。
 「そうでヤンス。正面はオイラが【発光】で照らすでヤンスし」
 「迷ったり帰り道が分からなくなったりしないようにボクが【オートマッピング】しておくからさ」
 その目配せに答えたのは、黒髪で小柄な特徴のある語尾の少年、ビーストマン(川獺 信三郎)
と、【ダッチ】に乗りながら【オートマッピング】で森の周辺地図を作成している灰色の髪に青い瞳の年齢よりも上に見られがちな青年、メカニック(ローレンス・ゴドウィン)であった。
 「それに、背後には彼らが気を張ってくれていますから」
 そう言ってロイドの「任せましたよ」というような微笑みを向けられたのは、隊列の最後尾を【軍馬】に乗って進む短い黒髪と同じ色の瞳を持つ大人びた少年、しまっち(島津 正紀)であった。
 「あぁ……殿は任せてくれ」
 馬上から見渡し、周囲を警戒していた正紀は、騒然であると言いたさげに答えた。
 「ふん、警戒も何も、現れた魔獣はすべて薙ぎ払えばいいのです。それで良いのでは?」
 答えた正紀の後ろに相乗りしていた波打つ銀色の髪の大人びた女性、ウラスベ(パティア・ノイラート)が猛々しい問いを呟いた。
 「そうだな。でも本番で一番の力が出せなきゃ意味がない……だろ?」
 「……えぇ……そうですね」
 「でも実際それは一理あるよね、本番もなにも片っ端から退治していけばいつか会えるの」
 パティアがたしなめられたその横で、青い瞳の少年私 叫が同調し——
 「はははははっ! まったくもってその通り! 奇襲を食らったら危ないだと? ふっ、俺は【【レイス】ブレイブブラッド】の勇者ウォークスだぞ! 心配は無用だ!」
 と、白い毛皮に覆われた少女弥久 ウォークスが、まるで大柄の男のような声で、なぜか自信たっぷりに叫んだ。
 「魔獣も気になりますけど、例の少女が気になります……私ならきっと交渉が……いえ、正体が見切れると思います」
 その叫びと同じ頃、隊の真ん中を【アヴォイドダッチ】に騎乗し進む金の長髪に赤い瞳の知的な美少女、マイカ(邑垣 舞花)は宣言し——
 「そうでござるな、【辺境商人】の舞花殿ならそれも可能でござろう。なぁに、上手くいかねば力ずくで何とかすれば良い事でござるよ。のう? フォルティス殿?」
 「ちょ、ちょっと待て、人前だぞ! しかし謎の女をさぐる……か。今ある情報はどんな感じなんだ? 蔦が生えているということは木や植物に影響があるようだなってのがわかる。それが自由自在に操れるとなると厄介だが……」
 それに答えた白いポニーテールに赤い瞳の凛々しいござる口調の女性ヨウ・ツイナは、同意を求めるついでに隣を歩くオールバックにした赤い髪と同じ色の瞳の美少年フォルティス・ワーラインに抱き着いた横で——
 「少女を追いかけて行って消えた村人も心配すぁ……早く見つけないとすぁ!」
 そんな二人の目線の高さ付近をふよふよと浮かびながらすすむ、レイス【スライム+ハイエルフ+セレスティア】で耳と羽がぷにっと生えたまるっこスライム、スアマ(天津 恭司)がやる気を出していた。
 そうして冒険者たちは森の深層へと歩み往く。
 森は葉を揺らし音を立て続け、小動物の行き来する音が決して警戒を怠らせない。
 常人であれば気を病んでしまいそうなこの状況で会話をしながら歩ける。
 ただそれだけで、彼らのレベルが窺い知れた。
 「……!? 待って下さい、あれは……」
 先頭にいたロイドが声を上げ、全員が正面に立っている「それ」に注目した。
 「それ」は、少女であった。
 いや、正確には少女の形をした「なにか」であった。
 白いワンピースのような、ローブのような布に包まれたそれは、何やらツタのようなものが股下から伸び、その先は森の奥へと繋がっているように見えた。
ふふっと、それは笑ったのか。声はしなかったように思えたが、確かに、そのように顔を歪ませ、歪に笑ってみせると——
 「あっ! 逃げだしました!」
 舞花が叫ぶのが先か、行動されたのが先か、それは風のようは速さで、しかし決してこちらが見失う事のないように気を使っているような……そんな速さで少女は矢の続く道とは別の方へと消えてゆく。
 「私は彼女を追いかけます!」
 舞花は【アヴォイドダッチ】の手綱を引き、少女を追って駆けだすと——
 「私たちも行くでござる!」「あぁ、そうだな!」「僕も行くすらぁ!」
ヨウ、フォルティス、恭司の三人も、それぞれ同じ方角へと駆けだしたのだった。
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