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それは貴方の為に

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暗闇の背を追う者



「ようやく見つけた。貴方が噂の女性ね」
 深くフードをかぶっている事もあり、女性の表情はうかがえない。
 噂の女性の前に立ったのは、司聖 まりあ
「少し話を……」
 そう言おうとしたまりあへ槍を振り落とす。
「問答無用、って感じね」
「構えなさい。弱き者の言葉を聞く暇はありません」
「弱き者、ね。……分かったわ」
 まりあが決意し、武器を構え戦意を向けた瞬間。
 決闘者たちの空間が展開された。
 先に仕掛けたのは、女性。
 速度を乗せた一撃をロアー・オブ・レオによって受け流し、
 フロストバイトによる反撃を放つ。
 これを石突きで弾き、再び刃を向ける。
 幾度か攻防を繰り返し、一度距離を取るまりあ。
「その程度、ですか?」
「確かに強いわね。……けど」
 まりあは、少ないその攻防である確信を得ていた。
「貴女、何も覚悟が出来ていないわね」
「なっ……」
 普段のまりあから想像の出来ない冷たい雰囲気を纏った言葉。
 フォーフォードを使い、高速の4連撃を放つ。
 それらを簡単に往なし、あとは止めを刺すだけ。
 なのに、女性は止めを刺す事無くその手を止めてしまっていた。
「……どうして、そう思うのですか」
「かつての私がそうだったから」
 そう呟いたまりあの瞳には、過去への後悔。
 そして、同じ道を歩もうとする彼女への怒りが込められていた。
 覚悟無き女性と、これ以上の戦闘に意味を見出せないまりあ。
 2人はそれ以上の言葉を交わす事無く、
 女性は再びフェイルを追いかる為に解除された異空間を離脱する。
「弱き者が決して“敗者”じゃないわよ。……だから、貴女は」
“正義の味方”は、暗闇を背負い去っていく彼女の行く末を静かに見送るのだった。



「ぁ、見つけたよー!」
 闇夜を駆ける女性を見つけ、夜を払うような明るい声で叫ぶのはアデリーヌ・ライアー
「……なぜ今宵はこうも客人が多いのでしょうか?」
「ふむ、君が件の女性か」
 アデリーヌの隣に立つのは、クロウ・クルーナッハ
「そして、その手が早いのも噂通りか」
 すでに槍を構えた女性に合わせ、2人も準備を整える。
 そして、戦意を向けた瞬間、異空間が展開される。
「それじゃあ、説得のお時間です!」
 妖縛符と起爆符を使い、牽制を放つアデリーヌ。
 クロウは、ロックスワロウで形成した大剣を放つ。
 符は避け、大剣を打ち落とし2人との距離を詰める女性。
「まだだよ!」
 目に見える牽制で誘導し、不可視の攻撃をブラッシュによって放つアデリーヌ。
 だが、先程以上に容易くこれらを防御または回避され、
 アデリーヌは振り落とされた槍で大きく飛ばされてしまう。
「不可視の攻撃、ですか。ですが、生憎とこの手の攻撃には慣れているので」
「それは、どういうことだ……」
「語る言葉はありません。構えて下さい」
「やれやれ……」
 未だ聞く耳の持たない彼女へ再び、ロックスワロウによって形成した武器を投射する。
 岩石という特性上、攻撃力と重さが高いクロウの攻撃に合わせ、
 符と不可視の斬撃という比較的取り回しの容易な攻撃で合わせるアデリーヌ。
「……成程な」
「何が分かったのでしょうか?」
 クロウの呟きが引っかかった女性は、槍を構えつつも一度距離を取る。
「君がどうして“勝てない”のか、だよ」
 観察眼で得た情報は、彼女の戦いへの意志を見抜いていた。
「…………それは」
「それは当然さ。何せ“勝つ気”が無いんだからな」
「それ、どういうことなの?」
「正直、私たちを倒すつもりなら、何度も決定的な隙があった。
 なのに、その度に君の攻撃は止まった。
 ……それは、君の偉業、なのかい?」
「…………」
「違うな。そうであれば、君1人で噂のフェイルを倒そうとはしない」
「……そっか。そういう理由で倒せないって知ってるなら、1人じゃ挑まないよね?」
「そうだ。“出来ない事”なら止めを誰かに託すだろう。
 だが、彼女は止めを刺せるのにも関わらず、無意識に止めを刺す事を避けている。
 ただそれだけだ」
「私、は……」
 探求の目は、彼女の本質を見抜いていた。
「……ねぇ。どうして、“本気”を出さないの?」
 アデリーヌは、曇りの無い純粋な目で彼女を見据える。
 その視線は、まるで彼女を糾弾する様に。
 先に視線を逸らしたのは、女性だった。
「……アデリーヌ」
「うん。分かった」
 クロウの言葉に、武器をしまったアデリーヌ。
 そのタイミングで異空間は解除されていた。
「そして、これが“答え合わせ”さ」
 それは女性がすでに戦意を喪失している証拠だった。
「私は……!」
 女性は、2人から逃げる様にその場を後にする。
「……追いかけるかい?」
「ううん。なんとなく、それがあの人の為になると思う、かな?」
「やれやれ。……下手に戦う力だけを持っている、というのも難儀だな」
 2人は彼女を止めるだけの“力”を持った者にその役割を託す。
 そして、彼女の追うフェイルと再び彼女が対峙した際に支える者となるべく、
 先んじてフェイルの捜索を始めるのだった。



「……思ったより、消耗されているようですね」
 フェイルを追う女性の前に立ったのは、ノナメ・ノバデ
「おやぁ。聞いていた話とはちょーっと違うかなぁ?」
 狐目 月明は、手裏剣を構えつつも
 事前に聞いた話とは少し違う彼女の様子に気が付いていた。
「……敵、ですよね。分かっています」
 大槍を構え、明確な敵意を向けられた。
 そうノナメ達が感じ取ったタイミングで決闘者たちの異空間が展開される。
「そこを……どいてください!」
 鬼気迫る怒号を放ち、槍での一撃を放つ。
「我らがお相手致そう。……いざ尋常に!」
 大祝 鶴姫が女性の持つ槍にも劣らない長槍で迎撃する。
 ノナメのグラビティフリーによる支援もあり、身軽な動きで女性の攻撃を無力化していく。
 そして、ノナメ自身も身軽になったところで
 銀翼の守護鳥や紅玉の指輪を使った援護攻撃を鶴姫の攻撃に合わせる形で放つ。
「数度の打ち合いで理解した。……やはり我より数段も上の力を持っているな」
「……諦めて、撤退してください。私の標的は貴女たちではありません」
「……不思議だな。……我には、その言葉が我らに向けられた言葉には聞こえなかったぞ」
「…………まだ立ち向かうということですね」
 撤退を勧めた女性だが、今だ敵意を向ける鶴姫に再び攻撃を仕掛ける。
「ライビー殿、合わせるぞ!」
「おっけー! 任せて!」
 ライビー・ティビランシが構えた剣で槍では不向きな小回りの利く連撃を放つ。
 そこに合わせる鶴姫の範囲と威力に優れた攻撃。
 牽制役のノナメも2人の隙を埋めつつ、的確な攻撃を放っていた。
「さぁってと。そろそろ私の出番かなぁ?」
 準備を終えた手裏剣を構え、タイミングを計る月明。
「2人共! いくよー!」
 彼女の声に、ライビーが先に離脱し鶴姫が少し大振りな攻撃で女性の槍をはじく。
 距離を取ろうとする明確な2人の攻撃に、そうはさせないと体勢を立て直し追撃を図る女性。
 しかし、それはノナメによる攻撃によって阻害されてしまう。
 少し距離を作る事に成功したタイミングで、月明が手裏剣を投げる。
 左右の死角へ放たれた攻撃だが、第六感だろうか。
“見えない攻撃”を感覚だけで防ぎきる女性。
「あちゃ~。一応狙ったつもりなんだけどなぁ」
「そう簡単には……くっ……」
 だが、女性は少しふらついた表情を見せた。
「んぉ、ちゃーんす!」
 好機と見た月明が、下がったライビーと鶴姫の隣へ。
「ん? どうした……んぁ!?」
 剣闘士の兜で筋力を高めた状態で、最初に鶴姫を抱きかかえそのまま女性目がけて投擲する。
「おぉ!」
「次はライビーちゃんの番だよ~」
「任せて! ハタチーズ、ライビーいっきまーす!」
「そーれ!」
 なんとも元気な掛け声で鶴姫に続きライビーも突撃。
 鶴姫は、空中で体勢を整えて槍を構える。
 ライビーは、ドロップキックの形で投擲された勢いを活かした攻撃を放つ。
「覚悟!」
「……いど」
 痺れが残る女性は、懐から短剣を取り出す。
 そして、それで自らの身体に傷をつける。
「!?」
「この程度で倒れる程、私たちの“偉業”は甘くはありません!」
 痛みで痺れを克服した女性が再び大槍を構える。
「我が意志……この槍と共に貫き、透す!」
 構えた槍は最初に鶴姫の攻撃を受け、その威力をそのまま自身の攻撃に乗せて反撃を放つ。
 全くの無駄が存在しない受け流しの極点。
 続くライビーの蹴りも同様に流れるような受け流しと反撃により制圧。
 この時、ノナメは反撃に反応して接近し聖域を発動しようと試みたが失敗してしまった様子。
 それほど、彼女の反撃は早く隙の無いものだった。
「……すまない。後は」
 鶴姫は、意識を失う直前にグラントを使いノナメに後を託す。
「残り2人。……まだ続けますか?」
「ノノ……」
「挑まず敗北、なんて笑われてしまいます」
「そうですか。敗北を目の前にして、1歩も退かないその雄姿。
 ……“あの人”には及びませんが、少し本気を出しましょう」
 敵意ではない。
 明確な“殺気”がノナメへ向けられる。
 その刹那、首元にまるで槍先が突き立てられている錯覚に陥った。
(動け……ない……。でも……)
 1歩動けばその槍はノナメの喉元を掻き切るだろう。
 そんな“死”の恐怖を乗り越え、ノナメは1歩を踏み出した。
 パートナーである鶴姫がダウンしている為、コンビネーションスキルの全開を使用することは出来ない。
 だが、意識を失う前に託されたグラントにより活性化された状態。
 デュアルリリースによる短時間のブーストに続き、シーアルブレイズを放つ。
「……見事」
 ノナメの放った高熱の炎を超え、女性が構えた槍で反撃を放つ。
「がっ……」
「死の領域を乗り越え、私に迫った事。同じ戦士として敬意を」
 彼女の“本気”。
 その片鱗とはいえ、見事突破したノナメへの心からの言葉だろう。
「……貴女の名前を。戦士の名を聞かず立ち去る程、無粋な姿はこれ以上晒せませんので」
「…………ノナメ・ノバデ」
「ノナメ、ですね。勇気ある戦士の名。決して忘れません。
 ……私の名は……」
 そう名乗ろうとして困惑した声色となっていた。
「…………そうですね。フィーゼル、とお呼びください」
 自らの本名を名乗る事にどこか躊躇いを見せた彼女は、そう名乗っていた。
 フィーゼル、とそう呟きノナメはその場で気絶した様子。
「あと1人ですが」
「う~ん……。参りました、かなぁ」
 仲間たちの治療を優先するべきと判断した月明は、この場は素直に敗北を認める。
 互いに戦意を失った結果、隔離されていた異空間が解除され女性はその場を立ち去る。
「……どうしてあの人は、あんなに悲しい顔で槍を振るうんだろうなぁ?」
 月明は倒れたノナメ達の治療を始めつつ、どこか彼女に矛盾した“決意”を感じ取るのだった。



「……思ったより、傷だらけですね」
 先を行こうとする女性の前に立ちはだかるのは、天峰 ロッカ
 その隣にはエッセ・レクス・サンクトゥス夏輝・リドホルム
 女性は無言で武器を構える。
「私に言葉は不要です。……そして、貴方たちにも」
「力を示さなければ、貴女は止まらない。だったら、私たちが取るべき行動は1つだからね」
「……ここまでの戦い。それで貴方たちが本気だと充分に理解できました。ですから」
 大槍を持った女性の闘気が1段階上がる。
 同時に、決闘者たちの異空間が形成される。
「最初から、全力で突破させていただきます!」
「来るぞ。下がっていろ」
 女性の攻撃に相対するのは、リドホルム。
 相手の動きに合わせる様に、揺動を放ち感覚を乱し攻撃力を下げる。
 僅かに緩んだ相手の攻撃を構えた盾で受け止め、衝撃を逸らす。
 そのまま、フレックスカウンターを活かし、盾を打ち付ける形で反撃を放つ。
 盾から放った反撃、ということもあり威力としては脅威にはならないだろう。
 しかし、反撃を軽く槍で弾いた女性の隙を狙い、エッセが仕掛ける。
 女王の剣で体勢を立て直す前に、再び攻撃を放ち感覚を共有しているロッカへつなげる。
 攻撃を放ったエッセは、傍へ駆け寄ったリドホルムの背後へ。
 広範囲に影響を及ぼすロッカのショックウェーブから逃れる為だ。
 その範囲から、完全な回避はならず手傷を負う女性。
「くっ……。素晴らしい連携ですね」
「1人じゃ難しい事も、みんなで立ち向かえば、ね?」
「……君はどうして噂のフェイルに1人で立ち向かうんだ?」
 ふとリドホルムが問う。
 その言葉に、女性は恐れる様な表情を見せた。
「…………語らないか。だが」
 盾の代わりに呪術師の札を構えるリドホルム。
「どうやら君を1人にするべきではない事は理解出来た」
 その言葉にロッカも頷く。
「貴方たちは……」
「私たちは“貴女”を知りたい。
 何を悩み、何に傷付いて。そして、何を求め、何を為そうとしているのか」
「知ってどうするのですか」
「もちろん、支えてあげる!」
 そう無垢な笑顔でロッカは言い放った。
 その笑顔に、女性も笑顔を返した。
「時間が惜しいです。……弱き者に支えられる戦いではありませんよ?」
「仕掛けてくるつもりだな」
 リドホルムは隣に立つロッカとエッセに視線を送る。
(先の攻防で各々の役割を理解したはずだ。……素直に盾役を狙うとは思えない。なら)
 盾を構える振りをして、空けた片手に札を構える。
「覚悟!」
 ここまでの戦いで傷ついた身体を奮い立たせる様に、槍を構え疾走する。
 狙い定めた相手は、ロッカ。
 盾役のリドホルムから最も離れた位置に居たからだろうか。
「そうはさせん!」
 構えていた呪術師の札を放つ。
 そして、放った札を中心とし、原点回帰を使用。
 権威の失墜、貴族の香水を2つの道具を機能させる。
「読まれていましたか……。ですが!」
 速度と集中力を低下させられた状態で、槍をロッカへ放つ。
 だが、追いついたエッセが割り込み、槍を弾く。
「ロッカ!」
「任せて!」
 グラントを発動し、ロッカの偉能力を活性化。
 その場で一度高く飛び上がり、放つ衝撃波を回避する。
 女性は、エッセの牽制で回避には間に合わない。
 その為、その場で立ち止まり、ロッカの衝撃波を防ぐ体勢を取った。
「このまま……いっけぇ!」
 そして、上空を取ったエッセが怒りの鉄槌を、体重を乗せた状態で放つ。
 これを受け止めた女性の周囲がその威力に悲鳴を上げる。
 苛烈な鬩ぎ合い。
 先に膝をついたのは、女性だった。
「はぁ……はぁ……」
 エッセも攻撃の反動で、動きが取れない状態。
「まだ続けるか?」
 警戒しつつも、そう女性に声を掛けるリドホルム。
 そんな彼の言葉に、女性は首を横に振った。
 そして、決闘者たちを包んでいた異空間が解除される。
 お互いに戦意を喪失。
 女性が敗北を認める形で勝負が決するのだった。

 武器を下げ、傷だらけの身体を治療する女性。
「私だけじゃ、私たちだけじゃ勝てなかった。
 ……きっと、ここまで来る間に色んな人に出会ったんだよね?」
「はい。……多くの人と対峙し、多くの人の想いを感じました。それに……」
 そう呟いた女性は、ロッカに笑顔を向ける。
「貴女の言葉は、最初から私の心に響いていました。
 どうしてか、分からなかったのですが。……きっと貴女は最初から私の事を」
“心を照らす光”は、女性と出会った時から彼女を支える様に放たれていたのだろう。
 おそらく無意識にロッカがそうしていたのだろう。
「……そうだ。私はロッカ。彼女はエッセ。それと」
「オレはリドホルムだ」
「フィーゼル。そうお呼びください」
「うん、よろしくね! ……立てるかな?」
「はい」
 再び槍を構え、立ち上がる女性。
「行きましょう。……彼の元へ」
 ロッカ達と共に跋扈するフェイルの元へと向かう女性。
「…………“彼”か」
 女性の呟きに僅かに思考を巡らせるリドホルムも、
 すぐさま切り替え女性と共にフェイルの元へと向かうのだった。



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