三千界のアバター

隠された基地を破壊せよ!

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■1-1.強襲!

「さあて、派手にやらせてもらおうか!」

 ヴィッカーズを守るため声を上げた“トクイシャ”たちの内、先陣を切ったのは柊 恭也の部隊であった。基地へ直接乗り込むものたちへの援護、そのために防衛部隊を攻撃しようという腹積もりである。

 砂塵を巻き上げながら陸を疾走する彼らは、もっとも防御の分厚いラインを突き抜けるかのように強襲する。

「ハロー間抜け共、そしてサヨウナラだ!」

 前衛となるMECの上半身をビームソードが両断する。なだれ込むようにして突っ込む彼らによって、防衛部隊は完全にリードを奪われる形になっていった。

 ――長距離支援型が出てくる前に引っ掻き回す!

 こちらが強襲したお陰もあり、防衛部隊は展開しきってはいない。長距離支援機が機能しない内に陣形を崩して状況を打開することが恭也の目的である。

 雪崩れ込むようにして相手の陣形を切り崩す彼らは、あえて大立ち回りを演じることで敵の混乱を招いていた。

 動揺は動揺を生み、硬直したものから切り飛ばされていく。多少の被弾をものともせずに暴れまわるその様は、すわ、悪鬼か羅刹かそのようにも錯覚するほどであった。

 そのような彼らも、これから起こる戦いの先触れに過ぎない――とは言い過ぎだろうか。

 闖入者に狼狽える兵士たちは、突然まるでピン留めされたかのように立ち呆けていく。その間隙を縫うようにして一機の影が敵陣を駆け抜けた。

「柊さんは上手くやってくれたみたいだな……お陰でずいぶん抜けやすい」

 漆黒のオーラを纏うキャヴァルリィ、桐ケ谷 彩斗の駆るファルカタが、その漂う殺気だけで前線を麻痺させていったのだ。

 その存在感は異様にまで膨れ上がっているが、しかし、彼に意識を向けるだけで硬直してしまう。彼から漂う圧倒的強者の気配は、一兵卒の恐怖を煽るだけならば十二分の効果を発揮していた。

 その放たれる殺意を振り切り追いすがる者たちもまた、どこか視野狭窄になっていたのか。彩斗を追うことに夢中になるがあまり、致命的な点を見落としていた。

「さて……存分に、恐怖してもらおう……」

 ファルカタの持つキャヴァルリィブレードが輝き、その剣身から迸るように光が奔る。そう。気づけば兵士たちは彩斗にとって都合のいい――敵の密集する地点へと誘導されていたに過ぎない。

 すべてはこの一撃によって、敵を一網打尽にするため。彩斗の渾身、キャヴァルリィストライクが解放される。

 光は多くの敵をなぎ払い、そしてそれ以上に恐怖を生んだ。それは単なる戦果だけでなく次へと続く布石となっていた。

「はぁい、スレイちゃん♪ 今が“食べごろ”よ!」

「了解です」

 前線が程よくかき回された後、スレイ・スプレイグユエ・スプレイグの率いる二小隊が突入していく。混乱された今こそ最大の勝機、MECによる機動力を駆使して連携を分断を狙った動きだ。

 立て直す隙を与えない。後方では既にハイサイフォスたちが隊列を組んでいることが既に報告に上がっていた。

「連携されたら厄介です。ここは、しっかりと分断していきましょう」

 ハイサイフォスの投入は十分に戦線を立て直す力がある。だからこそ、彼らはそれだけを阻止するつもりで戦場へと攻撃をかけていた。

 これは事前に予定されていた作戦だ。彼のフェローであるMEC専門の整備士も、これに合わせて入念にスレイらの機体に整備を行ない、大地母神の加護を与えてきた。そのお陰もあり、スレイの駆るヴァリアブルイーグルは想定通り、否、それ以上の軽やかさを見せていた。

 高速機としてセッティングされた彼らの機体は敵陣深くへ滑り込む。繰り返される砲撃も、トランスヒューマンであるスレイには文字通り“見えて”いる。そう当たるわけはなく、そして、あえて受け、そしてバリアによって弾くことによって継戦力を高めていた。それでも捌ききれないような相手もユエによる的確な援護射撃によって沈黙させていく運びだ。

 危険度の高い突撃であるが、しかしその損傷までもを計算し、とうとうハイサイフォスの一機へと食らいつく。ユエの小隊とスレイの小隊、それぞれの狙いを分散させることでハイサイフォス同士の連携をも潰し各個撃破を狙う。

「耐えてください。……ここを耐えれば耐えるほど、仲間が助かります」

 僚機にフォローを入れながらスレイが檄を飛ばす。矢面に立つ彼の損傷はかさむ一方であるが、しかし、彼らがここでハイサイフォスを引きつけ、分断する限り前線はより安定していく。他の仲間の安全を確保するためにも最善を尽くしていた。

「短期決戦。役割は着実にこなしましょう」
「はぁい! 後ろに隠れてるような子も逃さないんだから!」

 自身に敵意を持つものの位置を把握する――戦場把握の能力は、こうして突出しているときにも役に立つ。彼らに集中する敵意を着実に捉え、ユエは的確に孤立したハイサイフォスの位置を把握していた。

 救援を呼ばれる前に畳み掛ける。それが今回の彼らの作戦であり、敵陣をかき回す彼らは非常に重要なポジションであると言える。

 逆を言えば、時間が長引けば長引くほど彼らの立ち位置は死地となるということ。スレイは流れる汗を拭うと、口元を引き締めた。

 一方で、混乱の最中体勢を立て直し抵抗を続ける部隊もいる。連携をかき乱されたとはいえ、即応できるのは敵の部隊の練度ゆえか。

「Gはキッツいが……気合でカバーだ! エアロシップに近づけさせないように、速度を上げていくぞ!」

 榛名 千晶の凛とした声が響く。柊たちがオフェンスならば、彼女の率いる小隊はディフェンスを担当していた。前線を滑るようにして疾走、エアロシップへ攻撃を加えようとするものたちを背後から奇襲し防衛に回るのが彼女の役目だ。

「味方は私に気を遣わずどんどん撃ってくれ!」

 そう言い放つと仲間の誤射にも対応するよう、まるで踊るように射線をズラしてスライドするトランスヒューマンの拡張された知覚が、無謀にも思える戦いを可能にしていた。

 最終防衛ライン、ではない。そこに寄せ付けぬためにあえて鉄火場へと身を投じたのだ。

 いくつかの通信が表示されるコンソールに視線を走らせながら、一層強く操作桿を握りしめる。仲間であるニール・ブックの駆るエアロシップへと襲いかかる敵影を認めると、スラスターを吹かし、そこへ向かって急行した。



「どんどん撃つっス! 地上部隊の攻撃は姉御たちに任せてこっちは全力で目立つっスよ!」

 一方でニールは千晶への信頼の元、一心不乱の砲撃を行なっていた。フリゲート級の小回りを活かしながら敵艦の砲撃を回避し、砲門から順繰りに焼霰弾を撃ち出していく。

 雨のように降り注ぐ散弾はエアロシップに対しての効果こそ少ないものの、敵艦から放たれるミサイルを抑制し、継続的なプレッシャーを与えることができていた。

 このようにエアロシップへの対処に専念できるのもまた地上部隊への配慮が必要ないからである。

「敵部隊接近……これは回避できないっすね!? フォ、フォースフィールド展開!」

 レーダーを注視してMEC部隊の接近を認めると、ニールはすぐさま攻撃の無効化に専念する。フォースフィールドは展開中うまく動くことはできないが、

「切り捨て御免……ってね!」

 背後から強襲した千晶が、ビームソードによって敵部隊を鎧袖一触に両断した。

「ふぃー! 分かっちゃいるっスけど、自分で何もできないっていうのはハラハラするっスねえ」

 千晶に安全確認のサインを送ると、フォースフィールドを解いて砲撃を再開するニール。このようにしてエアロシップの動きを制限し、その注意をひきつけることこそが彼の役割であった。

 ニールの派手な砲撃は戦場の視界を曇らせる。その陰に隠れ配置についていたのが松永 焔子であった。

『さあて、お嬢さん。観測する限り敵の布陣はこんな感じだ、さくっといけるよな?』

「貴重なデータですわね。おじさまの観測が正確なおかげで万全にやれそうですわ♪」

 岩陰に潜む彼女は目を閉じて意識を集中させる。軽口を叩くロメオから送られてくるデータは非常に確かなもので、彼女がこれから行なうことをサポートしていた。

「皆様が注意をひきつけてくださっているこの好機。ムダにするわけにはいきませんわ」

 彼女の意識の中で鮮明に敵の艦影が描かれる。そしてそれにめがけ、幾つもの光が奔った。

「そこですわね!」

 機体に搭載されたいくつものミサイルが、意識の中に浮かぶ光の筋をなぞりながら飛翔する。そのミサイルの多くは敵艦の弾幕に撃墜されるものの、それを突破した幾つかのミサイルは艦橋へと直撃、エアロシップを爆炎の中に沈めていく。

「敵に捕捉されるまではこれを繰り返しますわ。次の狙撃点は?」

『座標を送っておくぜぃ。それじゃあ、引き続きよろしく頼む!』

「ええ、おまかせくださいまし!」

 示された場所に向けて即座に転進する。遠距離からの狙撃はこの戦いにおいても重要な立ち回りであった。

 そして、敵艦がミサイルによって狙撃され混乱を生む中、退路を塞ぐようにして舵を取るエアロシップがあった。アルヤァーガ・アベリアの指揮するライトキャリアー級である。

「機は熟したな。今なら完全にこちらへの警戒は減っているはずだ。……シュナ、行けるな?」

「うん。……じゅんびは、できた。いつでもいける……よ!」

 カタパルトに待機させたMECの中でシュナトゥ・ヴェルセリオスが小さく、しかし力強く応えた。

「左舷、大回りを意識して8時方向から突入しろ。地上施設への誤射を恐れているのか弾幕が薄い。そこから装甲を剥いで密着すれば、あとはMECの独壇場だ」

 アルヤァーガはこれまで見に徹していた。彼らは護衛の戦力を引き連れることなく、奇襲のためにじっくりと移動を続けていたからである。しかし一方で、自前でのセンサー類によるもの、そしてロメオから送信される情報を積み重ね、冷静に戦況を見極めていたのである。

「あの艦を落とせば他エアロシップ攻略への大きな足がかりとなる。お前ならやれるはずだ」

「うん。……任せておいて!」

 エアロシップが予定地点に到達した。アルヤァーガの魔力が流れ込み、カタパルトのラインが淡く点灯した。

「シュナトゥ・ヴェルセリオス……乱れ、撃つ!」

 GOサインとともにシュナトゥの駆るMECが撃ち出される。かかるGを物ともせずにスロットルを開き、みるみるうちに加速していった。

 ワンスマニューバが火を噴き彗星の如く空に軌道を描く。指示の通りに大きく迂回しながら敵の左舷八時方向を目指すと、シュナトゥを追いかけるように弾幕がひらめいた。

「うん。……アルヤの言う通り……こっち、からなら!」

 まるで吸い込まれるようにして円を描くと、そのままワンスマニューバを切り離して敵艦の懐へと切り込んでいく。上方から落下の勢いを活かした突入を試みながら、持てる限りの火力を一挙に叩き込んでいく。

 試製オリハルコニウムガンから吐き出される高出力のビームが敵艦の舷側を削り取る。装甲を破ってしまえば、後は残る銃弾が艦内を蹂躙し火災を引き起こした。

「あとは……行けぇ!」

 決死の突貫。落ちるようにして開いた大穴へとビームサーベルを突き立てる。全身全霊の一撃はそのまま敵のエアロシップを切り裂き、

「シュナトゥ・ヴェルセリオス、離脱、する……っ!」

 爆風をかわしながら離脱する。この攻撃を以て序盤の敵艦隊へ痛打を与えることとなり、今後の戦局を大きく左右することとなるのであった。


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