三千界のアバター

殺人八百長ベースボーラーズ

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殺人八百長ベースボーラーズ
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- 舞台裏 -

 ジャクマカソン近郊、ニューサフォーク・スタジアム──。

 のしかかるような暗鬱な空模様が、スタンドを訪れた人々を迎えていた。
 ひそかに何事か声を交わしあっているのは、多くがマフィアやアウトロー。けれども、そうは思えぬ身のこなしの金持ちの姿も、ちらほらと彼らの間に垣間見られる……大方、カクタスの“顧客”といったところだろう。
 しかし、彼らとて決して無垢な犠牲者ではありえなかった……その証拠に青井 竜一が近づけば、彼らは思わず声を潜めて、あの黄金のマフィアは誰かと囁きあうのだから。

 人々が畏敬を込めてどよめく声が、幾度も竜一の耳を通りすぎていった。
 ただの“野球観戦”の際に貴重な黄金の蜂蜜酒を引っかけてこれる者など、マフィアの中にも決して多くない。黄金色の光を放つ竜一の肉体は、とりもなおさず、彼がいかに偉大なマフィアかを物語っている……少なくとも集まる人々に、そうであると信じさせている。良くも悪くも。

「これは、自分たちの不様な姿を笑ってくれという趣旨なのか?」
 不運にもそんな彼に捕まった“ソーンズ(棘)”――カクタス(サボテン)の構成員たちが、自分たちを特別視して呼ぶ言葉だ――のひとりは、震えあがって竜一に返事した。
「オ、オレにはボスの遠大なお考えはさっぱり理解できないし、理解する必要もないんでね……」
 なるほど、模範的な解答だ。黄金のマフィアに喧嘩を売るような愚かな真似はせず、かといって組織を疑う態度を見せたりもしない。やり取りを耳にした人々の中に地位あるマフィアがいたならば、彼はさぞかしカクタス瓦解後の“再就職先”に困らないことだろう。
「そうか」
 竜一は彼を解放した。一部始終は彼らの周囲の、今はカクタスとビジネスパートナーの関係にあれど、いつ出しぬこうかと虎視眈々と狙っているマフィアらもよく見ていたはずだ。
 忠犬にああまで言わせたカクタスがこの試合に負けたとき。はたして、彼らの裏社会での面目はどうなることか?
 動揺したソーンズが何かを仕掛けてくる前に、竜一はとっとと身をひるがえし、ひそかに彼らの動向を見守りはじめるのだ……。
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