三千界のアバター

ヴォルメシ!~冒険者たちの昼ご飯~

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食堂の危機! 食材を集めよう! 1


 ヴォルテックス・オブ・カオスの中には、冒険者たちが集まり、街を作っている場所がいくつかあった。
 その中のひとつ、中層に近い、とある階層の街で冒険者向けの食堂を開いているコックのクラフター、ウインザーが「ヴォルテックス食堂」という店を開いていた。
 4人掛けのテーブルが5つ、カウンター席が5つ。
 奥の方には調理をするキッチンが立っている。
 200層を目前に、座りながら食事を取り、休憩できる場所とあって、最初のうちはさまざまな冒険者が立ち寄っていたのだが、冒険者たちは簡易調理スキルを使えば、自分たちで最低限のご飯を作って食べられることに、気づいてしまった……。

「客が、来ない」

 その悩みは大きかった。
 そしてウインザーは決意したのだ。
 簡易調理で作れるものより、はるかにおいしい料理を作ろうと。

『求む! 新作レシピ!』
『163層には様々な動植物が生息しています。そこの素材を最大限に生かした料理を考案したいと考えています。
ぜひ、素材の提供、新作レシピの考案に協力して下さい』
『【ジョブ】コックやスキル【簡易調理】を持っていない場合は、店主のウインザーが代わりに調理致します』

 この知らせはワールドホライゾンにも伝わり、自分こそは新たなレシピを提供できる! 素材なら狩ることができる! という冒険者が立ち上がり、「ヴォルテックス食堂」へと集まってきた。

「俺はロックソルトを探そうと思っているんだが、欲しい人ってどれくらいいるんだ?」
「はい。私はフライドチキンを参考にしたものを作ろうかと思っています」
「ウチはユキノの料理に添えるソースに使いたいわぁ」
「アッシはラーメンの麺に使いたいんだが、頼めるか」
「なるほど。他にもロックソルトを採取するやつがいるみたいだが、念のため全員が足りる分を集めてくるとしよう」

 クヨウ(九曜 すばる)のロックソルトが欲しいのは誰かという質問に手を上げたのは、マイカ(邑垣 舞花)、時坂 月詠、トッキ(バルター・アイゼンベルト)の3人。
 必要な人数を把握したクヨウはロックソルトがあるであろう洞窟へと向かう。
 それに続くように他の素材を採取・狩猟する者たちもそれぞれ思いつく場所へと分散していった。



◇          ◇          ◇




 163層。森林、平原、街、山、洞窟、川、湖などがある、自然豊かなフィールドとなったダンジョンにはさまざまな動植物が生息している。
 森林へ赴いたノワール(天峰 真希那)はアヴォイドダッチに乗ってビートマンドレイクを探していた。
 生命感知に反応するものがないか用心深く探っていく。
 森林の中は太い木々の隙間から光が射すように点々と光の柱が入り、至る所に苔の生えた岩が転がっている。
 倒木した樹にはキノコや苔が生い茂り、自然界の循環が見て取れた。

「生きたまま採取……ってのがまた難しいが、美味いメシのためだ、頑張ってみるか」

 青々と茂った草が揺れ動けばどのモンスターだ? とクイーンズウィップを構えれば食材にはならないようなモンスターが次々に現れ、目的のビートマンドレイクはなかなか見つからない。

「むっ」

 何度目かの生命感知にクイーンズウィップを構えれば、茂みに紛れるように大根の葉のようなものが地面に埋まっていた。
 アヴォイドダッチをクイーンズウィップが届くぎりぎりの距離まで寄せると、本革の鞭をうならせる。
 葉から茎にかけてクイーンズウィップを絡みつかせ、引き抜くとそれは金切り声を上げながら暴れ出す。
 全長は人間と同程度、全長の半分ほどで葉と根っこ部分に分かれており、根っこの部分に顔と手足が、そして金切り声は耳に響きとてもうるさい。

「こいつか」

 モンスター図鑑に掲載されている特徴と重なる姿からビートマンドレイクだと判断したノワール。
 生きている間に根っこ部分を斬ると、甘い蜜をまき散らすとされているが、そう簡単に蜜を回収することはできなさそうだということが見て取れた。
 クイーンズウィップを振りほどいたビートマンドレイクは金切り声を上げながらノワールに襲いかかる。
 人間と同等の身長から繰り出されるしなりをつけた大葉の頭突きはそれなりにパワーがあった。

「生かさず殺さず、蜜を採取させてもらうぜ」

 クイーンズウィップのエイムスナイプで遠距離から確実にダメージを稼いでいく。
 ダメージを受ければより悲鳴が大きくなるのか、ほかの埋まっていたビートマンドレイクも仲間を助けるように地面からせり出すと、合唱するように金切り声を上げ出した。
 思わず耳を塞ぎたくなる騒音にノワールのクイーンズウィップの鞭捌きも鈍くなる。

「う、うるせぇ!」
―――キィェェェエエエエエ!!

 エイムスナイプをするりと身体をうねらせて回避したビートマンドレイクはノワールに向かって突撃してきた。
 距離を詰められたノワールはそのまま頭部の葉の部分を掴んでバリツの要領で投げ飛ばした方が早いと、その部分を掴み別のビートマンドレイクにぶつけるように投げ飛ばしてしまう。
 ぶつかり合ったビートマンドレイクは根っこがもつれるように絡まり、起き上がることができない。

「活きの良い食材は大歓迎だぜ」

 シュラの多腕でもつれ合ったビーストマンドレイクを押さえ込みながらトラペゾヘドロンフックでぐるぐるに拘束。
 身動きを封じた所で根っこを切り、蜜を回収する。
 貴重な蜜を採取すれば、あとは葉っぱと根っこを採取するために止めを刺した。

「さて、また次の獲物を探そうか」

 数は多いに越したことはない。
 ノワールはさらにビートマンドレイクを採取するために森林の奥へと入っていった。
 アヴォイドダッチで走らせている中、彼は罠を仕掛けているジュノ(ジェノ・サリス)とティオ(T O)とすれ違った。
 狙っているモンスターは別のようだと分かり、作業の邪魔をしないようにそっとノワールはそこから離れていった。

「ウォーキングカエンタケは岩陰に隠れている赤いキノコらしいね。逃げ足が速いらしいし、トラップを仕掛けないと捕まえられないって攻略にはあったな」
「古株の影とかにもいるかな?」
「その情報も合っているはず」
「じゃあ、このマップのどこに仕掛ける?」

 相談しているのはRWOの攻略情報を事前にチェックしたティオが、デフラグメンテーションで分析した情報をジュノに提供している。
 ジュノはオートマッピングで作成した周辺地図をティオに見せ、トラップクラフトを仕掛ける場所を品定めしていく。
 場所を決めるとティオとジュノはトラップクラフトで落ちたら出られない落とし穴を掘り、中にトリモチ弾を置いておき、落ちた衝撃で炸裂するように仕掛けておいた。
 一か所だけではなく、MPが続く限りトラップクラフトを設置しウォーキングカエンタケを捕まえる確率を上げられるだけ上げておくのを忘れない。
 設置したトラップクラフトはジュノのオートマッピングにマッピングされているため、設置したこちら側が引っ掛かることがないようになっている。

「これで準備はいいかな。初初、よろしくー」
「任せて!」
「よーし。辛い物、ゲットしに行くよー」

 ジュノは逃げ道を塞ぐためにウェアトリックで草木の等身大人形を作り、セレスティアの翼を羽ばたかせ飛び上がる。
 猫実 初は振動に敏感なウォーキングカエンタケを誘い出すために、居るであろう岩の周辺で狼牙棒を力強く地面に突き立て、グリッドバーンの衝撃波を生み出した。

「さーて、何匹とれるかな?」
―――ミギィィィイイイ

 グリッドバーンに驚いたウォーキングカエンタケは岩陰から出てくると、ガサガサとキノコの軸の部分に生えた足を動かして逃げだした。
 ゆでると出汁が取れるほか、かさの部分は非常に辛く、乾燥させて粉状にしたものは調味料として使われることから調理範囲が広いため、何匹いても困ることはないだろう。
 持ち前の逃げ足で逃げだしたウォーキングカエンタケを空からはジュノが、地上からはティオのクールアシストを受ける初が追いかけ始める。
 アシストするティオも罠を作動させるタイミングを誤らないように聞き耳を立てて、状況を見極めるために行動していく。

「待てー! 逃がさないぞー!」
「ジュノさん、逃げ出さないようにウェアトリックの人形を設置した方へ!」
「分かった!」

 ウォーキングカエンタケの行動パターンを逃げられる度に慧眼で見極め、精度を高めながら罠で捕獲を目指すジュノ。
 レイスのセレスティアの飛行能力に加え犬狼の素早く、かつ持ち前の持久力で視界から外れることなくジュノはウォーキングカエンタケを追いかけていく。
 初もアヴォイドダッチに乗って見失わないように追いかけ回す。
 罠があるルートから外れようとすれば初が回り込み、エスカッションで形成した盾でウォールアタックを繰り出し正しい方向へ誘導する。
 ウォーキングカエンタケも捕まらないように必死に逃げ回るが、逃げる先にはジュノのウェアトリックの人形だったり、初のウォールアタックがあり、ウォーキングカエンタケは順調に設置した罠へと追い込まれていった。

「ここ! 逃がさないよ!」

 罠がある場所まで追い込んだジュノは捕獲用バズーカを発射。
 網にかかったウォーキングカエンタケは、そのまま落とし穴に落ちトリモチ弾に絡まりながら穴の中でもぞもぞしている。

「捕まえた!」
「逃げ足が早いとは聞いていたけど、こんなに早いなんてね」
「でも、セレスティアとアヴォイドダッチの速さなら食らいつけるとうことが分かっただけ、儲けものかな」
「じゃあ、逃げないように気絶させとこうか」

 振動に敏感ということは至近距離からの刺激を受ければ、許容範囲を大きく超えて気絶するかもしれないと初は落とし穴の上からグリッドバーンを放った。
 衝撃波に目を回したウォーキングカエンタケはそのまま動かなくなり、ジュノたちは焦ることなく回収することができたのだった。

「……そのまま食べることは推奨されませんってどんな味か気になるね」
「え、食べるの? 生で?」
「だって気になるんだもん」

 ティオは好奇心を止めることができずに、ウォーキングカエンタケのかさの部分を一口かじってみた。
―――ボフンッ
 かじった衝撃でかさの部分に仕舞われていた辛み成分の袋が割れ口の中で爆発。
 ティオは口の中だけではなく顔全体にやけどを負う事態になってしまう。
 キュアポーションでHPは回復できたが、口の中のやけどが癒えるまでの間言葉を発することも唾液を飲むことも困難になった結果だった。

「だ、大丈夫?」
「……確かに生では食べられないね」

 好奇心は猫を殺す。
 手酷い結果となってしまったが、それでもこの辛み成分が乾燥させれば味のある調味料になるのだから料理というのは不思議なモノである。
 それにまだ仕掛けておいた罠がいくつか残っている。
 それを利用して、もう少しウォーキングカエンタケを集めようという話になり、ウォーキングカエンタケを探すために初はグリッドバーンをあちこちに放っては追いかけ回すのだった。

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