三千界のアバター

バファロー農場と隠しダンジョン

リアクション公開中!

バファロー農場と隠しダンジョン
リアクション
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8  Next Last


1.大切な日常のために

 バファロー農場で働く人々は、農場主のイニック=バファロー氏から地下空間が見つかったことを知らされて強い不安を抱いて居た。
「どこか山奥にいると思われていたモンスターの親玉が、足元に居るかもしれないのか……?」
「地下は倉庫群の方にもあったらしいじゃないか」
 バファロー家の幼い子供達の姿が消えたことも、人々の不安を一層強めていた。
「まさか、子供達はもうモンスターに?……」

「大丈夫です! 強力な助っ人も新たに来てくれました! みんなで力を合わせてモンスターから農場を守ります!」
 先に農場の手伝いの依頼でやって来ていたマスカットが人々に声を掛けていく。
 新たに農場に到着した馬車から地下の探索や農場の手伝いの依頼に参加する冒険者たちを向かい入れる準備をする。
「そ、そういえば、前回の依頼できてくれた冒険者の人たちはあっという間に多くのグラウンドビーストを退治したらしいな」
「退治だけじゃなくて、随分頑丈な柵を作ったりあちこちの建物も修復してくれたようだ」
 農場の作業員が口々にそう話す。
 グレイ・ロンマスと名乗る藤原 経衡が木工技術で地道に周辺の防護柵などの補強を行ってくれていたので、安心して農場に残って自分の仕事を続けることができそうだった。
 マイペースではあるがWHの特異者たちのそれぞれの活躍は、農場の人たちに強い信頼を抱かせていた。
「日々の営みを守る事も大切な戦いです。嵐はじきに過ぎ去るでしょう」
 見た目作業員よりも年嵩がありそうながら、柔らかな物腰でグレイが言葉をかけることで、人々も落ち着きを取り戻す。
「愛しき日常を護る為、できる事を為しましょう」
 グレイは道具箱を抱えると次の修理場所へと向かう。

「うわー、広〜い!」
 遠くまで繋がる畑や牧草地を眺めながらヨウ(黒山 羊)が元気な一声をあげる。
「農場のお手伝いするねっ。がんばろー♪」
「収穫前の野菜があるから、本当に助かるよ」
 野菜を荷台に積みながら農場に働きに来ている村人がヨウの元気な働きぶりに感心する。
 ただでさえ人手が足りないというのに、万が一地上にモンスターのボスが現れるかもしれないので、多くの農夫が農場から避難していた。
 それでも農場を心配して残って作業をしている人たちもいた。
「何でもやりますから言ってください!」
 ヨウは村人に必要な作業を確認して取り掛かる。
 基本的には畑仕事は地球での畑仕事と変わりはなく水やりや土を耕すことだが、トラクターといった機械がなく基本的に人力なのでやはりそれなりにきつい。
 ただ、土をいじったり収穫した野菜を荷台に積み込んで牛に運ばせるなど、普段あまり経験がない仕事をヨウは楽しんでいた。
 馬や牛は念のため全部厩舎内に避難していた。
 ヨウが牧草を運び込むと、そこではすでにセラ・ルシェ(ラシェル・ロニセラ)とヒナゴロウ(ディック・ブライトネス)がいた。
「人手が足りないところを率先して手伝いましょう」
 セラ達もこういった仕事に慣れているわけではないが、農場に残っている人たちに率直にいろいろ手順を習いながら動物たちの世話をしていた。
 ヒナゴロウは生真面目にナチュルブックを片手に農場内の動物を確認していた。何かRWOの特殊な生き物がいないかと思ったのだ。
「牛や馬、羊……ニワトリ、うさぎ、ふむ、まあ地球と変わらない動物ばかりのようであります」
「ただやっぱり食欲が落ちているみたいね」
 セラが餌場に入れても、餌場に近寄ってこないで外の様子を伺うように一箇所に固まって牛たちがしきりに鳴いていた。
 ヒーラーであるセラは、特に落ち着きのない牛にレメディをかけて見た。
 しばらくするとその牛は鳴くのをやめ、ようやく餌場に移動してきた。セラはその牛の額をそっと撫でた。
「馬の方をお願い。多分、お馬さんたちも少し不安がっていると思う」
「うん、わかった!」
 セラに言われて、ヨウは馬舎に向かった。
 心なしか馬たちも隅に身を寄せて何かに怯えているようだった。
 それでも、中には好奇心が強いのか、そーっとヨウに近寄ってくる馬がいた。
「怖くない、怖くないよ」
 ヨウがそっと額を撫でると、ぐいっと強く顔を押し付けてきた。甘えているらしくその首元を丁寧に撫でる。
 時間をかけて、ヨウは馬たちに丁寧にブラシをかけてあげた。

「じゃあ、ちょこっと見回ってきますか」
 動物の世話に一区切りつくとセラは自分の乗り物として連れて来たダッチの元に向かった。
「僕も行くであります!」
 ヒナゴロウもアヴォイドダッチにまたがると、セラと共に広い農場へと駆け出す。周辺にグラウンドビーストが出没しないか見張るためだった。
「結果的にこの子たちがここでは一番RWOっぽい動物ってわけであります」
 ヒナゴロウがふと木の根元に毛むくじゃらの子犬のようなものがいるのに気がついた。
「野犬? もしかしたら狼とか?」
 一応周囲に親がいないか見回すが、どうやら子供だけが置いていかれているらしかった。
 とりあえずミルクを与えるとすごい勢いで飲み干した。
「……放っておけないであります」
 ヒナゴロウは懐に小さな動物を入れた。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8  Next Last