三千界のアバター

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 サルマティアの街から離れた所に広がる森の中、道と呼べるものは存在しないその場所を進む人影がいた。それも一人二人ではなく、十二人。集団と呼べる人数だ。


 多少腕に覚えのある人間でも移動するだけで苦戦するような場所を、彼らは特に苦戦すること無く、むしろいつも通りと言った様子で進んでいく。
 それは彼らが腕の立つ冒険者、と『RWO』のゲーム内でも言えるほどにはレベルの上がったアバターだからだ。彼らは『強化中和剤』を規定数作って納品するというクエストのため、その素材となる『アッパーマッシュルーム』を求めて、戦闘能力があるアバターが採取班として森にやってきたのだった。
彼らは簡単に隊列を決め、周囲の探索能力を持つアバターが先を進み、戦闘能力のあるアバターを先導することにしていた。
アバターは人に個性があるように、アバターの探索能力もまた、多種多様だ。いま先導している五人のアバターも、それぞれ違った方法で周囲を探索している。


一番先頭を歩く黒と紫のドレス、そう見えるほどにレースやフリルで装飾された、いわゆるゴシック様式の美しい鎧を身にまとうアバター、レティアス黒杉 優はたまに立ち止まっては木や土を凝視する。
「この辺の様子なら……うん、キノコの生えてそうな場所は近いですね」
 彼女は『【レイス】ハイエルフ』のスキルで植物アイテムに関する知識を自在に確認することが出来る。クエストにはある程度の事前情報は貰えるとはいえ、攻略に必要な情報は少ない。
 しかし、植物が関わるのであれば、彼女の知識は並の攻略本よりも詳しい知識を持っている。今もその力を発揮して、道なき道でも確信をもって目的地へ向かって進んでいた。


 しかし、そんな彼女の歩みをミシェルミシェル・ウォンが呼び止めた。
「待って、多分、そのまま進むとモンスターの集団にぶつかるわ。もう少し迂回できない?」
 ミシェルの持つ知的な雰囲気は、彼女の持つ二つのスキルを表している。【位置把握】は周囲の状況から自分たちの位置を把握し、【戦況分析】は敵、味方の戦力を把握する。これを応用すれば、どこに敵性モンスターが固まっているか、つまりモンスターの巣でありそうな場所が分かる。その結果、レティアスの行先にモンスターの集合している場所を事前に予測出来たのだった。
「……その提案、正しいです。向こうから臭うですよ」


 ミシェルの予測に同意したのは、小さな妖精のリーラシア・クロイツ。しかし、彼女はモンスターやペットではなく、立派なアバターだ。彼女は【戦場の匂い】で隠れた敵を感知することが出来る。いくつもの確認によって、予測は確信へと変える事ができる。
「じゃあ、こっちから行きましょう。この辺の様子だと、迂回したほうが移動しやすいかもしれません」
「あー待って待って! ちょっと聞くから!」


 そう言って目を閉じ、聞き耳を立てるジュノジェノ・サリス。彼女は【エコーロケーション】のスキルで周囲を音で感知することが出来る。今回のように複雑に入り組んだ場所では、音での探索は有効な手段だった。
「……うん、こっちは大丈夫そう!」
「ありがとうございます。じゃあ安全も確認できたし、先に行きましょうか」
「でも、安全のためにだいぶグネグネしたよねー」
「大丈夫です! 道はバッチリ記録してます!」


 小さなコロポックルの少女、セリス池田 蘭が自分の地図を振りながら答える。彼女はクラフターでありながら採取班として動いた冒険者だが、【オートマッピング】による道の記録は、土地の情報が少ない探索には欠かせないスキルだ。
 基本的に形の固定されているようなダンジョンでも無い限り、地図があることはほとんど無い。
 そんな中で自分が歩いた範囲であっても地図があるというのは、それだけで判断材料を増やす出来る。
 常に危険と隣合わせの探索に置いて、アドバンテージの確保もまた、欠かすことの出来ない要素の一つなのだ。
 彼らは互いの探索スキルを上手く組み合わせ、協力しながら森の奥へと進んでいく。
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