三千界のアバター

敵秘密基地へ潜入せよ

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敵秘密基地へ潜入せよ
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0 誰のために、なんのために

 
「うおーっ、痛てーよー!」
 爆発に巻き込まれ、右腕を失ったマルク・オニールは秘密基地に戻ってからも大暴れしていた。
 右腕の上腕部からは吹き飛び、頭にも破片がいくつか刺さっている。片方の足もねじ曲がり、生きているのが奇跡といっても差し支えないほどだ。
「ええいやかましい! こんな役立たずの腕なんて切り落としてしまえ!」
 痛み止めが効いてきたのか、それとも体の感覚が麻痺してしまったのか、落ち着いたマルクは、処置を施した者たちに向かって叫ぶ。
「……まてよ」
 そして彼は、恐ろしいことを口にした。
「いいことを思いつきました。私を、新型の生体端末にしましょう」
 彼の提案は、とても正気とは思えないものだった。
 が、彼に近い部下たちはそれに従い、彼の体と、そして、開発中の新型の接続のため、たくさんの部品を埋め込んでゆく。
「………………」
 それをジャックは、ただ無言で眺めていた。
 見るに耐えない作業が続く中、ジャックは息を吐き、歩を進める。やってきたのは、誰もいないモニタールームだ。そこにはすでに、先客がいた。
「……ジャック」
 ぐすぐすと鼻を鳴らしているのは、レンだ。
「ルドっちが……」
「ああ」
 ジャックは静かにレンに近づくと、レンは彼にしがみつき、嗚咽をならした。
 レンが握り締めていた写真が、ジャックの腕に落ちる。そこに写っているのは、仲間たちだ。
 黒の傭兵団。
 それは、彼らがそのように名乗っていたわけではない。たまたま、ある任務でメックの色を黒く塗った。
「じゃあこれから、オレたちの機体は黒くしようぜ!」
 そう、嬉しそうに叫んでいたルドルフは、もうこの世にはいない。
 予想外のことが起きたとはいえ、彼は自分のために死んだ。自分が逃げる時間を作るため、命をかけ、そして、散った。
「では、あなた自身はなんのために戦っているのです?」
 朔日 弥生に言われた言葉が、ジャックの耳に再び響く。
 仲間のために。ルドルフを始めとした、多くの仲間のために。
 でも実際、自分がやっていることはなんなのだろうか。
 モニターに写るのは、狂気と化した人間の姿。たくさんのコードが刺さったひとりの人間は、嬉しそうに笑みを浮かんでいた。
 ……止めるか。
 そう思ったが、それはおかしい。
 そもそも、この事態を招いたのは自分だ。
 やむにやまれぬ事情であったとしても。
 こうなったのは、自分のせいだ。
 ならば。
「ごめんなレン」
 ジャックは、疲れて寝てしまったレンを抱きかかえ、近くの椅子に彼女を移す。自分の着ていたジャケットを彼女にかけると、彼は通信を送ることにした。
「わかってくれなんて言わない。俺も、どうすればいいかわからない」
 送る相手は、先ほどまで敵対していたはずの人間たちだ。
 仲間を殺した。死に追いやった。
 だがジャックは、それしかない、と思った。
 狂気を止められるのは狂気に荷担したものではないはずだ。
 その役目を強いてしまうことを、苦しくも思う。
 でも、自分ではどうしようもないから。
「頼む」
 ジャックは通信を送る。
「止めてくれ」
 多くの感情を、単純なデータに託して。

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