三千界のアバター

バファロー農場のモンスター退治

リアクション公開中!

バファロー農場のモンスター退治
リアクション
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7  Next Last


1.深き森の拠点

 馬車はポリアナード王国を離れ、市街地を抜け、長い田舎道をガタゴトと進む。
 馬車といっても貨物用に大きな幌で覆われた荷台を二頭の馬が引っ張るだけのもので、バファロー農場での仕事の依頼を受けた冒険者が仔牛のように乗せられて運ばれている。
 クラフターの修行のために依頼を受けたマスカットが幌の隙間から外の景色を眺めていると、途中に『ようこそバファロー農場へ』という文字と何か動物らしきイラストが描かれた看板が立っていた。そこから馬車は更に山の奥へと向かう。
 そしてしばらく上がると突如開けた場所に出た。
「わあ……、想像していたより大きい!」
 マスカットの第一印象はそれだった。
 周辺を山に囲まれ、ところどころに遺跡の名残のような古い石柱と城壁跡が点在するが、他は草原と広大な農場が広がっていた。
 馬車から降り立つと、ポン、と軽い音がしてマスカットの操作盤内の位置項目に『バファロー農場』が加わっていた。今後は直接この位置にログインできるようだった。
 深く息を吸い込むと草木の香りとともに厩舎の匂いも強く感じる。風に乗って動物の鳴き声や鈴の音も聞こえる。
 一定の広さで柵で囲われて耕された畑が並び、それぞれ違う種類の作物が植えられているようだった。

 馬車から荷物を持って降りたコタロー(小山田 小太郎)も、周囲の風景を眩しげに見回す。
「山を切り開いて開墾した農場のようですね」
 大型の機械などない世界だから、苦労してここまで人の手で作り上げてきた場所だと感じられた。
(どうしてもヴォルテックスに目を奪われがちですが……)
 コタローはこのRWOの世界が今でも広がりつつあることを感じ、もっとこの世界のいろいろなものを見て回る必要があると考えていた。
 そして、どの世界でもコタロー自身の役割として『困っている人の力になる』と決めていた。
「大事に育てられた畑です……皆で護りましょうね」
 コタローの言葉に、同じく荷台から降りた世良 潤也も頷く。
「畑を荒らされて農場主のバファローさんが困っているのを放っておけない」

 そんな潤也らを、馬に乗って出迎えたのは農場主のイニック=バファロー氏だった。
「諸君、よく来てくれた」
 背筋をピンと伸ばし、カウボーイハットに革のベストとジーンズ姿でよく通る声で挨拶する。
「移動の疲れがあるところ悪いが、宿舎は向こうにある。そこで食事をとってもらったあとでそれぞれ軽くミーティングを行うのでよろしく頼む」
 バファロー氏の他にも数人の農夫らが馬に乗って農場を定期的に見回っているようだった。
「ここでは馬に乗れるの?」
 潤也がバファロー氏に尋ねる。RWOは基本的に移動手段としては騎乗動物が利用されているようだ。
「日中の農場内の移動や荷物の運搬で馬を利用することは可能だ」
 バファロー氏が示した先に厩舎があり、何頭もの馬が窓から顔を出していた。
 その手前にやはり手描きの看板で『乗馬コース』とあった。そういったイベントで農場に近所の村から家族で遊びに来る人たちもいるようだった。
 潤也自身セレスティアの種族として翼で飛ぶこともできるが、長い移動となると馬を使う必要もあるだろう。
「これだけの広さがあるんだもの。当然といえば当然ね」
 潤也と共に依頼を受けたアリーチェ・ビブリオテカリオが荷台から重そうな荷物を降ろす。
 モンスター退治の時に支援するヒーラーとしてレイウッドスタッフの長杖やキュアポーション、マジックポーションなどの回復アイテムをしっかり準備してきていた。
 潤也と同じように、アリーチェも畑の作物を食い荒らされて困っていると聞いていてもたってもいられなくなったのだ。
 ただどうしてもアリーチェはストレートに感情を出すことが苦手なので表向きはクールにあくまで自分は仕方なく潤也の手伝いをしているだけというポーズをとっていた。
「まったく、しょうがないわね……。あたしも手伝ってあげるんだから、しっかり戦いなさいよ」

「モグラのモンスターですか……ヴォルテックスの地下にもいてもおかしくないですよね」
 シンデンを名乗る七瀬 永見も今後のためにもいろいろ経験を積みたいと考え、罠を仕掛ける人と共に周辺を調査することにした。
 特にバファロー氏に詳細にグラウンドビーストの弱点などに関して確認する。
 本体の動き自体は素早くはないのである程度の狙い撃ちで倒すことができるのだが、やはり問題は数が多いということだった。
 知能はあまり高くないが、戦闘時は波状に同時に飛びついてくるため、それで大きな傷を負わされてしまう。
 シンデンはできるだけスムーズに動き回れるようプレイガジェットVRを装着していた。
「あとは罠との併用でどれくらい相手の動きを阻害しつつ対処できるか、ですね」

「少し、お借りします」
 ミーティング後、クヨウを名乗る九曜 すばるは馬を借りると明るいうちに農場を一回りし、ガンカメラで農場一帯を撮影した。
 どこまでも草原と畑が広がるが、何箇所か土がえぐれた状態になっている。そういった地面の様子も注意深く観察し、気になる箇所を図に記しておく。

「のどかですねえ」
 同じくモンスター退治の依頼を受けてやってきていたジュノと名乗るジェノ・サリスも馬で移動しながら情報収集を開始していた。
 広大な農場のあちこちには地元の住人も作業していて、みな笑顔で今回の助っ人の面々に手を振る。
 ぱっと見はゲーム内NPCなのかプレイヤーなのかはわからないが、中には純粋に農作業を楽しむために来ているプレイヤーも居そうだった。
 農道を牛が荷台を引っ張り、収穫した作物を運搬している。倉庫もいくつかあってそこでも作業する様子が見える。
「雰囲気としては悪くないわね」
 近くの村から多くの従業員も来ているようで、ジュノが話しかけると誰もがいろいろ気さくに答えてくれた。
 だが、これだけの農場を経営するには人手が常に足りないようだった。そこにモンスターが出没するようになり、ますます人手が……という状況だった。
「作物だけを狙ううちはまだいいが、もしも人を襲うようになったら……」
「できれば、バファロー農場さんでなんとかしてほしい」
 今のところモンスターが動き出すのは深夜だけで農場内に限られていたが、やはり近隣の村人の不安は大きいようだった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7  Next Last