三千界のアバター

愛の逃避行

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愛の逃避行
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◆序章 2人の愛は◆

 ──駆け落ち当日、夕食後。
 ヘンリエッタは、自宅で密かに駆け落ちの支度を整えていた。
 数日分の着替えや身の回りの品、どうしても持って行きたい物だけを旅行用のスーツケースに詰めていく。
 昼間、両親が出かけている間にドルフェレンファミリーの活動資金の一部を、父親の部屋にある隠し部屋から持ち出してある。
 資金だけでなく、高価な宝石類も混ざっている。
 小袋に入れられたままの宝石類をいくつか持ち出しておいたのだた。
 お金はどうしてもかさばる。
 逃亡するのに荷物はあまり大きくならない方がいい。
 ロメロが頼った特異者から、かなり強くその点については注意されていたので、ヘンリエッタにもロメロから必ず守るようにと釘を差されていた。
「置いて行きたくない物ばかり……でも、ロメロと結ばれるためだもの。仕方ないわよね」
 スーツケースに荷物を詰め込む手を止めて、ヘンリエッタが小声で漏らす。
 部屋には自分しかいないが、部屋の前にいるボディガード役のファミリー構成員に聞かれては台無しだ。
 できるだけ音を立てないよう、支度を整え始めてからずっと気を付けている。
 直前まで、何を持って行って何を残して行くかで迷い続けていた。
 そのせいで、ギリギリになってから支度をする羽目になっている。
 屋敷を出るのは1時間後の予定だ。
 合流場所について、何度も地図で確認する。
 生まれ育った街の中でよく知っている、しかも屋敷からすぐ近くなのに、こんな時だからか不安になって何度も見てしまうのだ。
「大丈夫よね、きっと大丈夫。こんなに近いんだもの……」
 その時が近付くにつれ、ヘンリエッタの緊張は高まるのだった。

 ──同時刻、ロメロ宅。
 一方、ロメロは前日までに支度を終わらせ、後は屋敷を出るだけの状態になっていた。
 ロメロも両親の目を盗んで活動資金を持ち出している。
 ロメロの父は、資金をアタッシュケースいっぱいに詰め、それを隠し金庫に積んでいたので、持ち出すのは容易い。
「あと少し、あと少しでヘンリエッタと一緒になれる。絶対に気付かれないようにしなくては」
 ロメロも不安なのだろう。
 つい独り言が出る。
 何度も時計を確認し、荷物を詰めたスーツケースを何度か開けては入れ忘れた物がないか確認していた。
 かなりソワソワしている。

 やがて暗くなり屋敷を出る時間が来ると、2人はボディガードをしている構成員に嘘をつき、外へと出る。
 ヘンリエッタはマフィアとは関係ない友人に急いで返さなければならない物があり、構成員が一緒では怖がるからと言い、ロメロは昼に父から命じられていた用事があったのに忘れていて、すぐ近くだからと護衛が来ないように言いくるめた。
 荷物はそれぞれの部屋のバルコニーから下までロープで降ろしておいた。
 手ぶらで外に出て、急いで荷物を回収し合流場所へと向かうために歩き始める。
 2人の愛の逃避行が始まったのだった。

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