三千界のアバター

農場と騎士

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農場と騎士
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サルマティア冒険者街
道具屋
「回復薬がないってどういうことだ!?」
 声を荒げながら店主にくってかかかる冒険者アルベルト。
「ないことはないんだが……もうこれくらいしか」
 在庫棚には数えるほどしか置かれていない。
「本当にすまないと思っている。しかしヴォルテックス内にある仕入先の農場と連絡が取れなくなってしまってこっちも困ってんだ」
 道具屋の店主も眉をひそめながら寂しげな後頭部を撫でた。
「あそこは火の迷宮が近くにあるおかげで肥沃な土壌なんだ。薬草を栽培するには最も適してたんだが……なにしろ迷宮の近くだ。魔物に襲われてるんじゃないかとしんぱいでしんぱいで……」
 ため息交じりに話す店主の表情からは危惧の念が伝わる。
「なら、俺たちが見てきてやるよ」
「――え?」
「だから、俺たちが見てきてやるよ。魔物が出そうってなら俺たちの仕事でもあるだろ? それに回復薬がないってんならあんたらだけの問題じゃないからな。協力するぜ」
 アルベルトの言葉に驚愕した店主は呆然と彼の言葉を聞いていた。
「おい、聞いてんのか?」
「あ、ああ――すまんな。あんたがそんなこと言うとは思わなんだ。あるだけよこせとか言われると思ってたのでな。その……見た目がアレだから」
 背中に大剣を背負い、鋭い目つきと語気が荒いのも相まって威圧的だとよく言われていたアルベルト。
「悪かったな、見た目がアレで」
「いやすまんすまん。言ってくれるっていうんならそれなりの報酬を出させてもらおう。ただで行かせようとは思ってないさ」
「あたりめーだ俺もノーギャラで行くほど暇じゃねえよ」

■ □ ■


「ということだ」
 アルベルトは集まった面々を前にそう言い放つ。
「これはここにいるメンツだけの問題じゃない。このまま放置しておけばゆくゆくはヴォルテックス攻略にも大きな影響が出てくるだろう。早急に対応したい」
 各々テーブルについてアルベルトの話を聞いている。
「道具屋の親父から聞いた話によると警備もいるらしいがそいつらとも連絡がつかないらしい。どんな状況かわからないから各々準備を怠らないでほしい」
 大まかに概要を伝えるとアルベルトはどこかへと立ち去ってしまう。

■ □ ■


「状況はそうとう芳しくないということか……何が起こるかわからない、そうとうに準備をしなくてはな」
 弥久 ウォークスは地鳴りのような声を響かせ考察した。
 その声に紫紺の瞳を見開いて驚愕した人物がいた。
「声が……」
 ――め(九鬼 苺炎)だ。
 幼い少女の姿をしたウォークスからは想像もつかない男の渋い声だったのだから仕方のない。
「それはそうだけど、農場の人たちも心配なのにゃ。傷ついてなければ良いのニャけれど」
 めの横からウォークスに話しかけるようにさばかん(リリー・シャ・ノワール)が可憐な声をあげた。
「申し遅れたにゃ、さばかんって言うにゃ。こっちがめにゃん」
 めは妖艶な雰囲気とは相反して子供っぽく頰を膨らませてさばかんに訴えかける。
「もうちょっとちゃんと紹介してよね。よろしくね、えっと……」
「ウォークスだ。見た目は少女だが御察しの通り俺は男だ」
 引きつった笑いをしながらめはまあ、これはこれでありかなとひとりでに納得していた。
「それでだが、先の情報だけでは少し心もとない。急を要する事態で彼も情報を集められなかったのだろう。どうだ? 共に情報収拾してみるのは」
「そうね、私たちも準備するのに情報が必要だからウォークスちゃんに同行するのもいいかもしれないわね。いいよね、さばかんちゃん」
「いいにゃよー。面白そうにゃ」
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