三千界のアバター

ヴォルテックス低層、クエスト危機

リアクション公開中!

ヴォルテックス低層、クエスト危機
リアクション
1 | 2 | 3 | 4  Next Last

レプリカント出現! プレイヤーを守り抜け!


 “ヴォルテックス・オブ・カオス”第30層付近のダンジョン。
 ヴォルテックスの低層に分類される場所のそこはそこまで難易度の高いダンジョンではないとされている。
 地面は乾燥した土。壁面は蔦や植物に覆われたダンジョンには小さな草むらが点在しており、普段ならばそこから雑魚モンスターなどが飛び出してくるのが普段の状態だったが、現在はレプリカントや大ムカデの出現により、雑魚モンスターの気配はなかった。
 その周辺では街ほどの規模ではないが露天など、簡易的な店舗を経営しているクラフターが数人と山木 瞳のプレイキャラアレッシアが受諾したクエストと同じ【ラネルのお願い】を受けたであろうプレイヤーがダンジョンを破壊しようとしているレプリカントの集団に戦いを挑んでいる。
 だがレプリカントはここ半年の間にRWO内で、出現しはじめた謎の敵である。
 情報も少なく、分かっているのは通常のゲーム内のモンスターやボスとは違う独立した存在で、破壊や殺戮を行っているということ。
 そしてサーバによっては重要なNPCが殺される、ダンジョンが破壊されるなどの事態によって、シナリオが進められないなどの事態が発生している危険な敵キャラであった。
 レプリカントは人型が中心だが影のような姿をしており、ユーザーキャラクターのデータをコピーして作られたと言われている。
 だが、コピーされた元のキャラを使用していたユーザーは行方不明になっているという黒い噂が立っていることでも有名であった。
 それを周知しているのは特異者たちが中心で通常のプレイヤーにはそれらのキャラも普通の敵キャラとしてしか認識がされていない。

≪おいおいなんだよこれ……≫
≪やべえwwwつよいwwwww≫
≪バグ?^^;≫
「どうしてあんなモンスターがこんなところに……!」

 アレッシアはレプリカントと同時に発生した、低層には現れるはずのない強力なモンスターである大ムカデに向かって駆けだす。
 大ムカデは巨大すぎて窮屈そうに空間を命一杯使って暴れ回っている。
 空間と大ムカデの隙間はせいぜい2~3人が通り抜けるくらいの隙間しかなく、回避行動をするにも難しい状況であった。
 大ムカデだけでも大問題であるのに、ここにはさらにレプリカントがダンジョンの構造を破壊しようと動きまわっている。
 この世界に来て間もないプレイヤーたちはそれすらイベントのようにしか思っておらず、経験値を稼ごうと向かう者が後を絶たない。
 アレッシアはそんな危機感のないプレイヤーが大ムカデに襲わないように防衛に徹するしかない。
 初心者プレイヤーの中には無謀にも大ムカデに挑む者もいるが、それらのプレイヤーを止めることはアレッシアにはできなかった。
 まずはレプリカントをどうにかしないといけない。
 だが、自分は大ムカデの足止めをするので精一杯。
 誰か……誰か強いプレイヤーが来てくれないとここにいるNPCが殺されシナリオ進行に重大な欠陥が起こってしまう……!
 それだけは阻止しなければならない。

「これ倒したらどれだけ経験値もらえると思う?」
「どうだろうね。強いし、けっこうな量もってるんじゃ」
「馬鹿野郎! そいつは垢バンモンスターだ!」

 見た目は10歳くらいの白い犬っぽい毛皮を被った少女の戦士である弥久 ウォークスがダッチに乗ってそう警告する。
 だが見た目とは裏腹に声は30過ぎのおっさんである。

「おっさんかよ!?」
「でも、俺たちより強くね?」

 ウォークスはダッチに乗った状態でアタッカーが最初に覚える火炎魔、ゼアルを撃ち込んで回っている。
 プレイヤーに襲いかかるレプリカントに向かって何度もゼアルを放ちヘイトを集めるために。

「いいか! 垢バンモンスターは見た目で判断しちゃいけない! 誰を元に作られているか分からないんだからな! 俺が惹き付けるから、お前たちは離れるんだ!」
「で、でもよ……おれたちも経験値がほしいんだよ」
「そうだそうだ!」
「一人占めとか許さんぞー」
「今はそんなこと言っている状況じゃないんだ! 緊急イベントとは訳が違うんだ! もしかしたらこいつらの攻撃で行方不明になるかもしれないんだぞ! あの垢バンモンスターには黒い噂が絶えなんだ。ただのゲームでそんなことになりたくないだろ?」
「だけど……」
「それは噂だろ?」
「火の無い所に煙は立たないというだろう。こいつらが一体どういう存在なのか解明されてから挑んだって遅くは無いんだ。今は離れてくれ」

 ウォークスの説得にレプリカントを経験値キャラクターとして認識していたプレイヤーも「どうする?」といった表情で見合っている。
 そんな中でもダッチを乗り回してゼアルを放っていくウォークス。
 彼女がレプリカントを惹き付けていると黄泉ヶ丘 蔵人が現れた。
 RWO名ではダークネスを名乗っている。

「くくく……レプリカントどもめ。我が闇の気配に誘われたか……などと言っている場合ではないな」

 ダークネスはウォークスが惹きつけきれない外へ向かおうとするレプリカントに視線を向けると手を前に出す。
 クラックで自身の魔力を地中に送り込み、狙いを定めると地面に魔法陣が展開される。
 展開を完了させると手を下げてクラックを発動した。

「魔力の奔流よ……大地を巡り彼の者らの歩みを止めよ!」

 ダークネスは魔法人が展開された地点を棘状に隆起させて攻撃することでレプリカントの拡大を防いでいく。
 ウォークスもダッチの機動力を最大限利用してレプリカントが広がらないようにしながら引き撃ちで数を減らすのを忘れない。

「怖じた者は退くがいい。だが、奴らの追撃を許さぬようにな」
「分かってら。これでよし……と。守りは任せたぜ」
「ありがとうございます……レンジヒール展開中です。負傷した方はこちらへ来てください」
「負傷者は彼女の近くに行け! サルマティアの街へ帰るにも傷があっては帰るに帰られなくなるぞ!」

 保智 ユリカがバタメントでシジマ アキナのリカバーケーンを修繕し性能を向上させた。
 アキナことRWO名シジマアキナは地面にリカバーケーンを突き立て、そこを中心に体力を回復させる魔方陣を展開する。
 レプリカントに挑んでボロボロになっていたプレイヤーたちはシジマアキナを囲むように体力を回復していく。
 フェローのラビリンスランナーは体力回復しているプレイヤーたちが攻撃にさらされないよう護衛している。

「無理に戦う必要はありません。ただ、負傷したまま逃げては帰り道も危険です」
「そうだけどよ……」
「やっぱりダンジョンに来たからには戦いたいというか」
「大丈夫です。私もまだ始めたばかりで不慣れですけど、こうして自分のできることを確実にやれば、きっとなんとかなりますよ」

 シジマアキナはハートケアで戦闘心でささくれだっている心を精神療法技術を用いて精神疲労を回復し、メンタルケアを行うことで戦闘心を低くしていった。
 その甲斐もあってシジマアキナの周辺にいるプレイヤーたちは、このレプリカントたちに自分たちは叶わないこと、引き際を見極めるのも大事な戦術であることを思い出す。

「援護するぜ、ダークネス。このほっちーさんお手製の妨害アイテムでな!」

 ユリカことほっちーはネヴァームーブで粘着性のある薬品をレプリカントの足元へ投げつける。
 薬品が付着したレプリカントたちは動きが鈍くなった。

「今だ! 逃げるなら今だぜ!」
「行ってください。サルマティアの街へ帰るまで気を抜かないでくださいね」
「ありがとよ!」
「助かったぜ!」

 逃げるプレイヤーにレプリカントが向かわないようにほっちーはスモークボンブを投げつけ、爆発を起こしダメージを与えると共に煙幕を発生させる。
 さらに金属を溶かす液体の爆弾、金属溶解液爆弾を敵へ対して投げつけることで金属製の武器や防具は威力が弱めた。

「よーし、敵さんの装備はもうボロボロだ。やっちまえ!」
「平穏を乱した報いだ。我が魔導の雷にて闇へと沈むがいい!」

 ダークネスはレプリカントに接近するとレージによる落雷でトドメをさしていく。
 目視できる範囲内一点に雷を落とすそれは射程は長く威力も高いが、対象から遠ざかるほど命中率は下がるデメリットがあった。
 そのデメリットを埋めるようにダークネスは至近距離から雷を落としたのである。
 雷の直撃を受けたレプリカントはそれにはひとたまりもなく抵抗することなく倒れていった。

「ざっとこんなもんか」
「お疲れー」
「あ、あの……ダッチに乗った方も協力ありがとうございました」
「どういたしまして。これで少しでもレプリカントの脅威が知られればいいんだが」
「自ら経験したことは話を盛ることがあっても控えめに話すことはないだろう。きっとこの噂は徐々に広がっていくぞ」
「そうだといいがな。だが多くの人がアクセスできるこの世界は、逆を返せば多くの世界に繋がっていると言うことでもある。もしもレプリカントが他の世界にも現れることがあった場合、いち早く対処できる人が少しでも増えてくれないと、待つのは悲劇だぞ」
「それは……怖いですね」
「あたしたち特異者だけじゃなくて一般のプレイヤーも自分の身くらいは守ってもらわないと、後手に回っちまうね」
「それだけは避けなくちゃいけねぇな」

 ウォークスの指摘はこれから巻き起こる悲劇の引き金になるかもしれない重要なことである。
 いつでも特異者がプレイヤーを守ることができるとは限らないのだ。
 そしてプレイヤーだけではなく、逆にRWOが世界に溢れる可能性も秘めている。
 その時対応できる者がひとりでも多くいることに越したことはない。
 ウォークスたちは顔を引き締めこれからのことを考えるのだった。



◇          ◇          ◇




 ウォークスたちが初心者プレイヤーたちを守りながら戦う中、紅紫 司ジェノ・サリスはレプリカントの情報を集めるために行動していた。
 司ことRWO名ドクターエムはアンプルヒールを自分にかけ能力の強化を図る。

「レプリカントの情報はまだまだ少ない。診察を開始する」

 負傷箇所を解析、使用者に伝えてくれる聴診器、アナライズスコープ【アナライズグラス】で負傷箇所割り出し機能を応用して弱点察知しようとしたが、アナライズスコープは直接触れずに調べられる道具ではない。
 そんな応用も効くはずなく仕方なく目視で分かる範囲でレプリカントの脆い部分を銀製の刀身を持つ長剣、ズィルバーシュヴェルトで削ぎ落とす。
 武器を振り回すレプリカントには黒曜の盾【ホライゾンシールド】で防ぎ、もしものために備える。

(レプリカントに攻撃を受けたら自分もレプリカントになる要素に感染する恐れがあるからな。可能性がゼロじゃない限りはできるだけ不確定要素は減らすべきだ)

 思案していると視界の隅に傷を負ったプレイヤーが座りこんでいることにドクターエムは気付いた。
 負傷者の傷からなにか分かることがあるかもしれない。
 ドクターエムはジェノのキャラクター、ジュノに負傷者を見つけたことを伝え前線から引く。

「レプリカントが『キャラコピー』なのは間違いないみたい。でも詳しいことはわからない。ここに出現してるレプリカントは低レベルみたいだし……試すなら今かな?」

 ジュノは慧眼でレプリカントの挙動を観察。
 それにあわせウォールアタックする。
 敵の攻撃を雪結晶の盾で受け止めた上で、体重を乗せて押し返す。
 雪結晶の盾で押し返しながら盾の冷気を至近距離から浴びせ動きを鈍らせるとそのまま拡大させたシュレディンガーボックスで押さえつけるように鹵獲を試みた。

(さて、結果はどう出るかしら)

 鹵獲しようと押しつけたシュレディンガーボックスにレプリカントが格納されることなくそのまま押しつける形になったことからレプリカントは生物であることがわかる。
 なぜならばシュレディンガーボックスは武装に装備した生物以外のアイテム1つを格納しておくことができる道具だからだ。
 格納できないということは生物であること。
 それが分かるとジュノは静寂のカツガでレプリカントを両断するように叩き斬った。
 周りにレプリカントがいないことを確かめ治療しているドクターエムの元へと向かう。

「もう大丈夫だ」
「ありがとうございます……」

 アナライズスコープで的確に負傷個所を受け取り、治療術によってアンプルヒールを施すと恐怖に揺れる精神をレメディで癒したことで女性プレイヤーは落ち着きを取り戻している。
 体力、精神を回復した彼女はたくさんの礼を言ってサルマティアの街へ帰っていった。

「サンプルはこれくらいでいいだろう」
「そうだね。私も確かめたいことを確かめたし、もういいかな」

 レプリカントはこれで全てを倒したハズである。
 遠くの方で大ムカデの咆哮が聴こえていることからまだ安心はできないが、ひとまずNPCを守ることができた。
 あとは低層のレベル帯からは外れた強モンスターである 大ムカデを倒すことが出来れば【ラネルのお願い】も続けることができるだろう。

1 | 2 | 3 | 4  Next Last