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エルベ砂漠残党掃討作戦

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エルベ砂漠残党掃討作戦
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●援軍到着! 上空に散る火花


「敵の猛攻が止まりません!」
 オペレーターの男が悲痛な声を上げる。
 なんとか小口径単装魔力砲で応戦をしているものの、グランディレクタの部隊の攻撃に、ラディア王国のエアロシップは今にも撃墜されそうだ。
 だがコマンダーの女性の顔には絶望ではなく、希望の色が浮かんでいた。
「心配するな。どうやら天は我に味方してくれるようだぞ」
 援軍要請に応じた者達が、ようやく駆けつけてきたのだ。
「このまま放置しておくと、捕虜をそのまま見逃すことになります。私達もサポートにまわりましょう」
 朔日 弥生は、朔日 睦月と共に逃走しようとしているエアシップをグランディレクタの部隊と共に襲撃する。
「精密な狙いは必要ありません。双方の魔力砲の特性を活かし、対空・対地の焼霰弾壁で傭兵とターゲットの分断を狙いましょう」
 弥生は父に向けてそう言うと、狙いを特に定めずに無尽蔵に弾を放つ。
 敵を倒すのが目的ではない。
 手数を最優先し、広範囲にまき散らすことで、エアシップの応援要請を受けた傭兵達と捕虜を分断し、敵を追い込む為だ。
「さて、私は私の役割をまっとうすることにしましょうかな」
 睦月は【魚雷】と【焼霰弾】で上空、及びその流れ弾で地上攻撃も兼ね、飽和攻撃を開始する。
 【僚機】スカイライダーRVerで敵の動きを制動し、【十字砲火】の攻撃範囲に誘導すると、そのまま強烈な射撃を敵に向かって放つ。
「このままあっさりと堕ちてくれれば問題はない、というやつですが、さて?」
 睦月の攻撃は効果的ではあったが、逃走に徹しようとしているエアシップを足止めすることが出来ない。
 いや、エアシップだけであれば弥生達の攻撃であっさりと戦局が決まっていたかもしれない。
 だがエアシップからの応援要請を受けた者達がこの極限の戦局で、我が身をかえりみずにエアシップを庇ったのだ。
 要請を受けてすぐにブラックロータス・エクスマーキナーの【重巡『黒薔薇』】に【デザートパック】で砂地対策を施し、足回りをよくしていた【『白椿』】に乗りこんでいた、狛守 眞白は、艦から飛び出ると真っ先に弥生達の攻撃を読んで、先回りしたのだ。
【重巡『黒薔薇』】は眞白のあとにならうように、降ろしたあと【僚機】メガリス×3】を艦の周囲に配置すると、【小隊陣形マジックテリトリー】を展開し、襲撃を受けているラディア王国のエアロシップを護衛する。
 弥生と睦月、及びグランディレクタの残党の姿を視界に納めた眞白は、オープンチャンネルに切り替えると高らかに【名乗りの号令】をあげる。
「ボクは一撃滑空の天馬媛! 命が惜しくない奴だけ掛かっておいで!」
 敵の戦意の喪失を図っていくが、既に戦闘を繰り返してここまで生き延びてきたグランディレクタの残党には、怯えよりも自尊心や敵意のほうが勝っているようだ。
 躊躇することなく、眞白のほうに向かってくる。
「おっと、これで戦意喪失するほど甘くないよね。【探信宝珠】を使って索敵したあと、味方全艦に連絡を取ってもらってもいい?」
 眞白はストラグルオペレーターに【ファストオペレーション】を駆使して敵の位置を高速伝達するように指示を出す。
「さて、ここからが本番だよ。今度は邪魔なボク達を狙ってくるはずだ!」
 眞白は味方の被害を軽減する為に【『草薙』】や標準装備の盾を構ると、【僚機】スクラマサクスと【小隊陣形】ミラージュシフトの態勢を整えた。
「本格戦闘の前に【四霊の守護】をかけておくですぅ。わたしはここで応援しておくですぅ」
 ブラックロータスの艦に同乗していたクゥネル・レイスは、味方への守護のサポートを行なうと、作戦成功を信じてお茶会の準備をする。
 艦内を【マナフライト】で飛びまわると、【マドレーヌ】や【マカロン】を乗せた【純白のオーバルソーサー】や【特製紅茶】を艦橋にある机のうえに用意していく。
「戦闘が無事に終わったあとは、甘いもので疲れを癒やして欲しいですぅ。みんな頑張って~」
 そこまで勝利を信じられると、戦闘を実際に行なう者達も期待に応じないわけにはいかない。
「ん。戦闘勝利を信じて、お先にひとくち、いただきますわね。……美味しいっ。これを前借りしたからには、絶対作戦成功をさせなければなりませんわ。……トリニティローズカノン…砲門開け!」
 マドレーヌをひとくち口に含むと、ブラックロータスは攻撃開始の号令を下す。
【魔力砲用焼霰弾】を装填した【Tローズカノン】を用いると、今度は【小隊陣形】バレットシャワー】で攻撃態勢に入り、敵部隊へと向けて飽和攻撃を仕掛ける。
 弾幕を張られてしまっては、追撃の手を緩めざるを得ない。
 慌てて【重巡『黒薔薇』】に近づいて攻撃を阻止しようとする敵艦だが、周囲に【機雷射出】している為、接近すら阻まれてしまう。
「よしチャンスだね! このまま畳みかけるよ!」
 ブラックロータスの援護射撃で怯んだ隙に、眞白は機体に内蔵されているワンスマニューバと盾のスラスターで加速し、敵の頭上を飛び越える。
 そして背後を取り敵が気付く前に、すかさず【『草薙』】のビームサーベルで【キャヴァルリィブレイク】の一撃を叩き込み【小隊陣形】マルチバースト】で僚機に追撃を行ない、敵機を沈黙させる。
 ……というのが、眞白の思い浮かべていた未来だったのだが、ことはそう上手くは進まなかった。
 眞白にエアシップへの砲撃を阻止された弥生達は、次の機会をうかがうべく、眞白達の動きを注視していたのだ。
「勇敢なこと。だけど、そう簡単にことを終わらせるわけにはいきませんから」
 弥生に敵機を撃墜させる意志はなかった。捕虜の奪還を目的としている以上、向かって来た敵には撃破ではなく手傷を負わせるだけで充分なのだ。
 横からの【焼霰弾】の攻撃に、眞白は少なからずダメージを受ける。
「傭兵の身分で志を共和国に根ざしている私達の邪魔をするからそうなるのです。別に回復する為に母艦に戻ってくれても構いませんよ。一切、邪魔立てするつもりはありません。戦闘可能なまま追いかけてくくる敵は多ければ多い程良い。焼霰弾の雨のなか、我々は可能な限りの御持て成しをさせていただきます。その対価には「時間」を頂く事に致しましょう。
 ……我々の、御持て成しを受ける以外は何もできなくなる程の」
 その言葉は挑発でも何でもなく、そのままの意味だった。
 それを察した眞白は傷ついたとは言え、退くわけにはいかなかった。
「つまり、ボクはキミをここで阻止しないといけないってことだよね? そうでないと、今回の作戦は難しそうだ。……クロさん! 援護して!」
「私としてもあなたのような、機動力のある相手をみすみす見逃すわけにはいきません!」
 弥生と眞白がそれぞれ号令をかけると、睦月とブラックロータスの【十字砲火】が放たれ、それが空中で激突して焔を上げる。
(これは……手を取られそうですね。さて、この間に我が部隊長は……)
 弥生がちらりと目を配ると、部隊は脇目もふらずにエアシップに向けて加速していく。
(理想の指揮官とは……兵士に楽をさせ、戦いに勝てる人物。もし仮に、意味もなく兵を死地に追いやり、貴重な人的資源を磨り潰し、蛮勇と勇気の区別もつかず、自らも前線に出て労しているなどという、語道断の匹夫……我が共和国にいるとは思えませんが、もし見かけたら【鬼無能様】と呼んで差し上げましょう)
 もっともそれを直接、口にすることはない、と弥生は思い直した。
 心に秘めるに留めるが【令嬢の嗜み】というものだからだ。


「敵が接近してきましたね。艦護衛のサポートにまわります!」
 真毬 雨海は【サイフォスヒーラー「鳥道」】に乗り込んでエアシップに急速に近づくと、【大地母神の憑代】となり、共同で作戦にあたる周囲の味方の能力を向上させる。
「さあ、私がこの位置にいる限り、能力をフルに発揮できるはずです!」
 雨海は接近してくる敵部隊に【ホーリーライト】を開幕としてぶつけた。
 ダメージを与えることが目的ではない。
 捕虜と捕虜を乗せているエアシップの戦線離脱を目的としている以上、目眩ましとして相手の動きを止めることを目的としたほうが、作戦の成功率が上がるのだ。
「神罰の鎚矛で、動きも止めます! 好きを逃さないでください!」
 雨海のサポートを受けて、藍澤 一は友軍撤退の支援に努める。
「戦域を離脱するまで、敵軍を足止めしてやるさ。……しかし脱走までするかね? 余程難がある上司なんだろうな。……いつの世もババを引かされるのは、俺ら下々の兵士か」
【グリフォン】を使用し航空機兵を自負し、かつ僚機も砂漠仕様である一は、機動力を生かして敵航空戦力の無力化を優先し、ホーリーライトでうろたえている敵機の無力化を図る。
「敵だけじゃなく、捕虜達の動向も気になるな。一応、変な真似をしないように網を張っておくか」
 不意の強襲に備え【戦場の匂い】だけは展開しておくと、いよいよ行動開始だ。
 手早く相手を倒そうとするべく、近接戦闘で一気に勝負を決めに行く。
 ……だが、相手も捕虜奪還に動くほどの部隊だ、危機への感覚は鋭いらしい。
 金縛りが解けたか、あるいはかかっていたフリをしていただけか。
 接近した一にカウンターを見舞う。
「一さん!」
 雨海は自身までやられないように【マジックチャフ】を撒き、敵の攻撃に備えて【玉壺氷之盾】を構えると、攻撃で撃墜されていく一のもとの駆け寄り、【大地母神の抱擁】で回復を試みようとする。
 だが実際のところ、それは早計な判断だった。
 一は撃墜されたと砂漠の視界の悪さを利用して倒されたと見せかけて、わざと墜落の動きを演じていたのだ。
 地上に落下したあと、【アングラアタック】で地下に潜り、追撃してくるMECの振動音を聞き取ると、近くに寄った瞬間に【触翼】で飛翔する。
「砂漠の蠍には、ご用心ってね」
【ニア・バレッド】で至近距離から火器を連射し、油断した敵機に砲火を食らわせる。
 その作戦は功をなして相手にダメージを与えることは出来たようだ。
 敵機の一体がそのまま、地上へと落下した。
「やりますね。一さん。ですが、隊長機はそうはいかないようです。今の一連の動きも読んでいたようで、警戒するように距離を取っています……手強そうですね。【キュベレー・レイ】で更に援護します」
 雨海の加護を中心とした応援部隊は、今にも攻撃を再開しそうな敵部隊と対峙する。


 双方が膠着状態に陥ったのは、なにも実力が拮抗していただけではない。
 互いが増援を待ち、戦局を有利に進めようとした為でもある。
 先に増援として到着したのは、共和国側であるコミュニ・セラフである。
 彼女は戦闘の合間を縫って単独でエアシップ撃墜を狙う。
 コミュニは僚機であるオオカミ乗りの背に同上して、膠着の隙に逃げようとするエアロシップに接近する。
「接近したことにすら、気付かせませんに」
 ブラックロータスの艦が視界に入ると、コミュニは【カモフラージュコート】の能力で背景の色と同化する。
【フェイスガード】の照準器でエアロシップの胴体に照準を合わせると、ヤブサメのスキルを使い、対機甲型炸裂砲を放つ。
「くっ、敵にも増援が来たのか!」
 エアロシップのコマンダーはすんでのところでオペレーターに旋回を指示する。
 だが、コミュニの砲撃もまた、カモフラージュだった。
 砲撃にコマンダー以下、エアシップの乗員が気を取られている間に僚機であるオオカミ乗りから降り、そのまま【デコイアサルト】の陣形をとり、僚機を囮とした。
 その隙に【土地鑑(スフィア)】で見渡しのいい有利な地に移動すると、エアロシップに向けてエイムショットで砲撃を行なう。
「避けられるものなら、避けてみせてみますに!」
 エアシップが大きく揺れる。
 墜とされることはなかったが、一部を破損し、一時制動不能の状態に陥ってしまったのだ。
「今のうちに捕虜を奪還しますに!」
 コミュニの号令でエアロシップに向けて、更なるグランディレクタの増援がコミュニの後方より出現し、エアロシップに突進していった。


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