三千界のアバター

ユミの決意

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ユミの決意
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第1章 洗礼

「さて、どうしようか……」
 ユミは辺りをゆっくりと見渡す。
 古い石造りの通路にはいくつもの鏡が、つり下がっている。
 (この鏡からアイツは出てきたわね……)
 鏡から現れた、偽物の自分を思い出しながら鏡を眺める。

「どことなくミラーハウスに似てるね」
 ユミの横からアーフィリカ・アリエスは鏡を調べながら話す。
 【危機回避】を用いて鏡を調べる。今のところは何の危険は感じられなかった。
 (危険は感じないけど……)

「何か来ます!」
 いち早くその気配に気付いたのは津久見 弥恵だった。
 【戦場の匂い】で、殺意を持った何かが近付いてくるのを感じた弥恵はそちらへとフェローの提灯小僧を向ける。
 提灯小僧の【発光】により、暗い遺跡が明るく照らし出される。
 たちまち、ずんぐりとした影達が現れる。

「……ニンゲン……ミツケタ……」
「……コロセ……コロセ」
 棍棒を振り回しながら、ゆっくりと数十のゴブリン達がこちらへと向かって歩いてくる。
 ユミは古ぼけた剣を腰から引き抜き構える。
 ゴブリン達は棍棒を振り上げ、ユミへむかって襲いかかってきた。
「ユミ様!」
 とっさに弥恵はユミの前にでると、大剣を払いゴブリン達の棍棒をはじき返す。
 他の数体のゴブリン達は。弥恵を敵視し一斉に襲いかかる。
 すると弥恵は大剣を右から左へと振り払うと、【ダンシングエッジ】で襲いかかるゴブリン達を切り裂いていく。

「この辺りにトラップも無さそうですし、一気に倒しちゃうね」
 一方でアーフィリカは大きな槌を【形成】させると、ユミや弥恵へとむかってくるゴブリン達目がけ、それを振り下ろしていく。
 思わぬ攻撃に慌てふためくゴブリン達を、弥恵はダンシングエッジで切り裂く。
 ユミは思わずその槌捌きや剣捌きに思わず見とれる。

「さすが……ね。私も負けてられないわね!」
 ユミは剣を構えると、ゴブリン達へむかって走る。
 一瞬、不安を覚えた弥恵達だったが、ユミはゴブリン達に遅れを取る事は無かった。
 剣の振り回し方に不安はあるものの、剣は確実にゴブリン達を捕らえ、倒していく。
 しかし、その振り回し方に弥恵はもう一度よく見る。
「……ユミ様がふた……り?」
「えっ!?」
 言葉通り、ユミが2人に分裂しゴブリンに斬りかかっていた。

「現れたわね……」
 片方のユミは剣を翻すと、もう1人のユミへ剣先を向ける。
「……どっちが本物か偽物かハッキリさせてやるわ」
 もう片方のユミも剣を翻し、剣先を向けるユミへと剣先を向ける。

 しかし、同時に細い刃先(サーベル)がもう片方のユミへと向けられた。
「その必要は無いわ」
 谷村 春香は【形成】された”DELuminous”を片方のユミを睨みながら突きつける。
 そのユミの背後では、逃がさないようにハルキ・ヴィラジも槍を構えていた。
「色を見ろ、元素の動きまでは偽れないってね……ユミさんは青の色相じゃなかったはずよ」
「……もし偽物だったらどうするの?」
「クインテットなら、DELuminousにかけて倒すわ。悪意は止める。それがあたしの「悪滅」だから!」
 
 春香は剣先をさらに突きつけながら答える。
 意表を突かれたのか、偽のユミは一瞬、鳩が豆を喰らったように目を丸くした。
 が、すぐに、にやりと笑みを浮かべた。
「ま、ばれてしまったなら仕方ないね……でもお陰で、”おままごと”をしなくて済むよ」
 偽物が持つ、ぼろぼろの剣は光に包まれ、新品のように艶のある両刃剣へと変わる。
 その両刃剣を偽物は下から上に振り上げると、瞬く間に春香のDELuminousは弾き飛ばされた。
 光のような速さに、春香は少し遅れを取る。

「たあああああっ!」
 本物のユミは、偽物へ向かって全力で斬りかかる。
 しかし、そこには何の手応えもなく。気がつけばユミは空気を斬っていた。
 ユミは慌てて背後へ振り返る。そこには自分と同じ顔をした死神がいた。
「!!」
 偽物は光り輝く剣をユミに向かって振り下ろす。
 ユミが反射的に目を瞑ったときだった。
 偽物の剣はハルキの盾と【ファランクス】により弾かれた。
 ハルキは続けざまに【プリーズ・ド・フェール】で何度も攻撃を繰り出す。
 だが、偽物はそれを軽く避けてみせた。

「邪魔はさせない……!」
 ハルキは歯を強く噛みしめると、さらにファランクスによる攻撃の手を増やす。
 その勢いにようやく偽物は押されはじめたのか次第に動きが鈍くなり始める。
「!」
 その隙に春香のDELuminousが偽物へと襲いかかる。
 ハルキのファランクスによる攻撃と、春香の強力な一撃、【アームズマスタリー】が同時に襲いかかる。
 偽物は春香の攻撃を剣で受け止める。
 同時に春香の剣を受け流し、反撃へ転じようとする。
 
「キミの敵はここにもいるよ!!」
 斬りかかろうとする偽物の目の前に、突然巨大な槌が振り下ろされる。
 思わぬ攻撃に偽物は、攻撃を遮断されてしまった。
 その直後、春香の一撃【スタンバッシュ】が偽物の横腹を見事に切り裂く。
「ぐっ!?」
 偽物は少しよろめき、脇腹を押さえながら後ろへと下がる。
 
「やるね……これはちょっと分が悪いかな……?」
 偽物は横腹を押さえながら、指を鳴らすと姿を消していく。
 途端、偽物は足元から暗闇へと同化していく。
 ユミたちは消えゆく偽物へと、斬りかかろうとした時だった、アーフィリカは「待って!」と大きな声を上げた。
 アーフィリカは暗闇へと手を差しのばした。そこには冷たい何かがあった。
 提灯小僧が近づき、そこを照らす。現れたのは壁と鏡だった。
 アーフィリカは鏡を確認すると手元にあった槌で、鏡をたたき割った。

「なんかよく分からないけど、私の【超直感】だけど、この鏡偽物が出入りするだけじゃないかも知れない」
「懸命ね……よく分からないけど、色相もピタリと消えたしね」
 アーフィリカの言葉に春香も同意する。
 【危機回避】もあり、この先追いかける事が危険だと察知したアーフィリカは、再び鏡を調べた。
 だが、分かったことは”この鏡だけは他の鏡と違い、人が入ることが出来る状態になっていた”事くらいだった。
 「鏡の中に入って、追いかければ」とユミは提案するが、アーフィリカは首を横に振った。
「どこに繋がってるか分からない以上は、無闇に入らない方がいいかもね……」

「ゴブリン達も居なくなってるね」
 春香と共にハルキは周りに敵が潜んでいないか【見破る】を用いて、安全を確認する。
「ユミ様の偽物が居なくなったからでしょうか」
 弥恵は【探検隊バックパック】に入っていた食料をユミや春香達に手渡しながら、疑問を述べる。
 だが、その答えはこの時点では誰にも分からなかった。

 トラップに注意しながらユミ達はさらに先へと進む。
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