三千界のアバター

【「生きててよかった」続編】君生キタマフ事ナカレ

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【「生きててよかった」続編】君生キタマフ事ナカレ
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  <ディアティア>の街。からりと晴れた空を小鳥が飛んでいく。その様子が、捕虜の女性の視界をかすめた。彼女の名前は、イルマ。先の<アノマラス>での戦いで連合側に寝返った、第24大隊所属の元共和国士官だ。
 
 「それでは、また来ますから」
 
 「ああ、次は……そうだな、君が言っていた”ラブコメディー”とかいう小説が読んでみたい」
 
 「はい! 何冊か選んで、今度持ってきますね。さようなら」
 
 「ああ、さようなら」
 
 イルマのもとに面会に訪れていた少女――もう戦場に関わりのない人物のため名は伏せる――が、にこやかに笑ってその場を後にした。そして、その少女と入れ替わる形で、デュオ・フォーリーが面会に訪れた。
 
 イルマの表情が硬くなる。デュオも神妙な面持ちで口を開いた。
 
 「――第24大隊について、いくつか聞きたいことがある」
 
 「……わかった。私が知っている限りについて話すとしよう。」
 
 しかし、イルマが口を開く前に収容所の各地に据え付けられたスピーカーから聞き覚えのある声が響いた。
 
 『大佐殿! 大佐殿! 監督室を押さえました。間もなくこちらにも援軍が参ります!』
 
 「なっ……!」
 
 ルフタイの放送のあと、間もなくして収容所にミサイルが撃ち込まれた。
 
 『諸君、私は”歎異”レオニード=ボチカリョフである!』
 
 二人の表情が硬くなる。放送を聞き終わる前に、デュオが席を立った。
 
 「どこに行くつもりだ」
 
 「少し考えがある。しばらくしたら戻って来るさ」
 
 そう言って彼は、イルマの独房を後にした。廊下の窓から、外の景色がよく見える。
 
 空は穏やかで、戦争など本当に起きているのか疑問に思えるほど澄み渡っていた。深々とした青に身を浸す入道雲を、突如ミサイルが突っ切っていった。
 
 爆音。炸裂音、起きる悲鳴。銃声、止んだ悲鳴。戦争だ。戦争が始まった。拝啓、市民殿<ディアティア>奪還戦が始まりました。
 ディアティアの救援要請を受けて駆け付けた連合と占拠した共和国軍がぶつかる。一番槍を買って出たのはスカパ・フロー艦長、ロイド・ベンサムだ。
 
 ディアティアの町はずれに陣取る敵エアロシップに向けて、ぐんぐんと接近していく。その艦内のブリッジにて、ロイドが乗組員に檄を飛ばした。
 
 「では作戦を伝えます。目標は大規模暴動の鎮圧です、ではどうすれば良いか? この場合は、相手の脱出手段を潰せば士気も下がり鎮圧も容易になるでしょう。よって、本艦の目標は敵艦船である二隻のエアロシップである! 事前情報ではデストロイヤー級を確認、もう一隻の艦種は不明だが囚人の移送も込みの為、ライトクルーザー級以上の艦船の可能性が高い! 友軍艦艇と共同し、これも可能な限り排除する! 各員は十分に注意せよ!」

 「敵のデストロイヤー級エアロシップを確認、探信宝珠の反応からして、射線上及び後方に障害物・建築物なし。いけるでやんすよ!」
 
 メインオペレーターの川獺 信三郎の報告を受け、スカパ・フロー全乗組員が動く。先ほどから、敵艦の弱点を探しているテレフォトコマンダーが、情報を上げた。敵艦は戦力投下のためにハッチの開放を開始、全開されるのは三十秒後とのことだった。
 
 「主砲、副砲、発射用意!」

 ロイドの指示に呼応して、スカパ・フローの各砲台が敵艦に狙いを絞る。
 
「オープンファイア!!」
 
 中型連装砲・両用砲から砲弾が発射された。ディアティア上空で耳を壊さんばかりの爆音が響き渡る。しかし、敵艦も案山子ではない。すでに出撃していた敵のスカイライダーが発射後の無防備になったスカパ・フローに集中攻撃をかける。
 
 「2時と9時の方角に敵スカイライダーでヤンス!」
 
 マジックチャフを撃ちたいところではあるが、いまだ味方が完全に展開できていない以上、撒くのは厳しい。
 
 「受け止めろ! ダメージコントロール発令だ」
 
 「了解! 整備班各員、ダメージコントロール発令でやんす」
 
 信三郎の放送で、寝不足な整備士が被弾箇所に向かう。簡易防壁があるものの、敵の猛攻撃にスカパ・フローの艦体が揺れた。整備班の何人かは、バランスを崩しかけるものの、なんとか被弾箇所にたどり着き、修復作業を開始した。
 
 状況を打開せんと信三郎が動く。
 
 「チャージ完了。ホーリーライト、行くでヤンスよ!
 
 信三郎の合図にあわせ、スカパ・フローの外部ライトが敵スカイライダーに向けて放出される。視界を奪っていられるのは一時的なため、その間に事を進めなくてはならない。
 
 彼は急いで探信宝珠で潜伏中の敵の探索と通常レーダーで周辺を索敵し、己の技能も用いて敵艦船・敵僚機・MEC・味方船を全て把握しようとした。
 
 そして、地上部隊の配置が完了したことを確認すると、信三郎は通信を送った。
 
 「スカパ・フローより各機へ、敵の潜伏位置、配置を送るでヤンス!」
 
 彼の通信を受けて、地上部隊も動き出した。まず初めに焔生 セナリアたちが進軍を開始する。
 
 シールドクルーザー級エアロシップ、『アズールコール』に乗ったセナリアが、自身の隊に向けて通信を開く。
 
 「もう一度作戦を確認するわよ。上空の敵艦は砲撃に注意しつつ、私達は敵地上部隊を撃破するわ。同じく地上部隊へ向かう方とも連携を意識して」
 
 この艦のメインオペレーターはリィーツェ・アドラスティだ。
 
 「索敵機器・探信宝珠起動……セナリア様、全方位索敵を開始します。――敵戦力の分布、戦闘状況モニターに表示完了。スカパ・フローの情報も合わせるとこのようになりますね」
 
 ブリッジの大モニターに敵の、主に地上部隊の分布が表示される。セナリアはリィーツェからの情報を元に、どこに打って出るかを模索する。左側はだめだ。手厚いうえに居住区も近く援護射撃ができない。右も厳しい。となると必然的に中央突破となる。いわゆる戦場の定石とは異なるがセナリアはむしろこれをチャンスと考えた。
 
 「リィーツェ、隊に通信を」
 
 「はい! ――各員に連絡します。こちらアズールコール。作戦は中央突破です。左右からの砲撃に対処しながら迅速に捕虜収容所までの道を切り開きます。アルト様、ご武運を」
 
 「こちらウィンタラー。了解した」
 
 セナリア隊の切り込み隊長、アルト・エンフェリアが地上部隊の進軍から一歩先に出て梅雨払いを開始する。
 
 陣形を組んでアルト小隊は前進する。彼女の僚機はメック混成小隊・壱。サイフォスキャノン、サイフォス、ロンデルといった編成のメタルキャヴァルリィ3機1組の僚機だ。僚機のキャノンは小隊のやや後ろから援護射撃を担当。ロンデルは攻撃を庇うために中央、アルトとサイフォスは前方、といったY字陣形を基本に前進する。
 
 上空のアズールコールでは、モニターでアルト小隊の陣形が完了したことを確認すると、セナリアが援護射撃の指示を飛ばした。
 
 「牽制の砲撃用意! リィーツェはアルトに前進する指示を」
 
 「出しました」
 
 「よし、それでは砲撃開始、およびスカイライダー出撃!」
 
 アルトの方でも、リィーツェの指示に即座に対応し、攻撃を始めた。セナリアの援護を受けつつ、僚機と共に敵小隊と接触する。
 
 彼女は自身が持つ優れた空間認識能力で、お互いの陣形と僚機の位置を把握した。
 
 「陣形変更、盾の陣。そして、キャノンは砲撃を開始。敵小隊長の回避先を誘導することを意識して」
 
 アルト自身は敵の連携を阻害させ、なおかつ自分たちの隊は連携して敵の僚機を優先して落としていく。そして、ちょうど敵小隊の陣形が崩れた瞬間、彼女は通信を開いた。
 
 「リィーツェ! セナ姉! チャンスだよ」
 
 「了解、セナリア様、いつでも打てます」
 
 「よし、バーニングブリット発射!」
 
 アズールコールの主砲から魔法の弾丸が発射され、着弾地点に炎を生み出した。これで敵の小隊は分断されたことになる。リィーツェはこのチャンスを逃さぬようにマジックミサイルポッドを操作し、敵僚機へミサイルを撃ち込んでいく。
 
 それに、アルト小隊が続く。
 
 「陣形変更マルチバースト。敵僚機を一機ずつ狙って落としていくよ」
 
 分断され指揮系統を失った敵小隊にアルトたちが突撃した。彼女らは一撃離脱を繰り返して多方面から断続的に攻め、敵の四肢を破壊して一機ずつ行動不能に追い込み、ついに敵小隊の隊長の包囲に成功したのであった。
 
 一方、共和国の地上戦力が密集する地帯に向けてアルヤァーガ・アベリアは動いていた。
 
 (レオニード=ボチカリョフ……あの男の所業は常軌を逸して、いや……奴なりの意をもって抗っているともいえるのか。だが、だからと言ってその行いが許されない事は間違いない。故に、貴様に否定された希望達の報いを……お前の希望を否と断じる事で成そう。手向けには、少し荒っぽいだろうがな)
 
 敵と味方の位置情報から、戦況を分析していたアルヤァーガは、いち早く敵のデストロイヤー級エアロシップに向けて、自分のエアロシップを動かす。彼が乗る重巡【希望】はメガリス達を周囲に滞空させて、いつでも射撃できる状態のまま、敵エアロシップに近づいた。
 
 それだけではない。彼はエアロシップ同士の位置だけでなく、地上戦力との位置関係も考慮しながら艦を進める。敵のエアロシップと地上戦力の重ならない範囲に行くためではない。むしろその逆。彼が主戦場に選んだのは、エアロシップと地上戦力のちょうど中間だった。
 
 一見、両側からの集中砲火を受けそうなこの布陣。しかし、アルヤァーガは経験上分かっていた。敵艦と敵地上戦力の中間に自艦を置くよう立ち回れば、双方の誤射を恐れる気持ちを利用できることに。そしてその予想は的中する。初めは彼を積極的に攻撃していた地上部隊も、自軍のエアロシップに当てないようにするために、慎重にならざるを得なかった。そこを狙って、彼は、高角魔力砲とメガリスの『十字砲火』で敵エアロシップを攻撃し始めた。
 
 「シュナ、頼んだ!」
 
 アルヤァーガの策略はこれだけではない。彼が砲撃を開始したのと同時にシュナトゥ・ヴェルセリオスも僚機のペガサスリッター、地天衆と同時に動いた。
 
 (レオニードを、捨ておけば……ふあんが、広がる。それは、だめ……私が、許さない。あんしんを、みんなに届ける。その為に……私はたたかう)
 
「行こう、ちてんしゅー……、ベルンシュタイン……!」

 ワンスマニューバに加えてベルンシュタイン搭載のスラスターの速力で飛翔した彼女は、アルヤァーガの艦の砲撃に紛れつつ空を飛んだ。僚機の地天衆には『盾の陣』で死角をカバーしてもらいつつ、十分な距離まで近づいたシュナトゥは、敵艦に決死の突貫を試みる。
 
 迎撃ミサイルを己の空間把握能力と見切りでよけ、彼女はエアロシップに限界まで接近した。その、ほぼゼロ距離の状態で、ヘヴィウェポンのグレネードランチャー付きショットガンとミニガトリング2丁・更にはベルンシュタイン標準装備の頭部ガトリング2機とビームランチャー、それら全てを一斉掃射して敵艦を沈めにかかる。眼が眩むほどの猛攻で、デストロイヤー級エアロシップに大損害を与える。しかし、これだけではまだ沈むに至らない。
 
 落下するシュナトゥを受け止めたのは、大華 桜のガンブリッククルーザー級エアロシップ、グランデェア・レイダだった。彼女も、アルヤァーガに負けず劣らずの熟練した操縦の腕を持っており、巧みな艦体捌きで敵のエアロシップに接近する。
 
 その前に、シュナトゥと同じようにグランデェア・レイダの上で待機していた卯月 浩人が、長距離からグレネードランチャー付きショットガンとミニガトリング2丁の<ローカルレイン>を一斉発射した。局地的な弾の雨が下から上に降り注ぐ。
 
 桜も攻撃の手を緩めない。グランデェア・レイダのマジックトーピドー・小口径単装魔力砲、および備え付けの中口径砲が連続して火を噴く。しかし、対する敵エアロシップもデストロイヤー級の本領発揮というべきか、豊富な火器と僚機でグランデェア・レイダと互角の戦いを繰り広げた。しかし、グランデェア・レイダが高機動かつ戦闘向きであることと、先に受けたシュナトゥの攻撃の傷のおかげで、敵エアロシップもどんどん押されていく。一方こちらは、敵の砲撃を回避重視の操縦とそもそもの技量でよけて行っている。
 そして、彼女が攻撃をよけると同時に、機雷を射出した。すれ違いざまに放たれた機雷が、グランデェア・レイダの後方で大きな煙と爆炎を上げた。
 
 「そろそろ、お願いするわ。浩人さん」
 
 「了解……」
 
 補給を完了した浩人が大盾のルーンを使いながらワンスマニューバで敵艦に突撃する。ぐんぐんと近づいていき、接近次第、彼は武器を発砲した。ミニガトリングがうなりをあげて、敵艦の砲台を破壊していく。近距離から放たれたミニガンの集中砲火に、敵艦の砲台が完全に破壊されたことを確認すると、かれはエアロシップへと乗り込んだ。乗り込んだ瞬間に、サイコプレッシャーを発して敵を妨害する。乗り込んだ直後に放たれた砲撃は、何とか大盾のルーンでカバーした。そして、ある個所をつぶした後は、次の砲に、また次の砲……といった具合に、どんどん攻撃手段を破壊していく。
 
 「弾がなくなった……」
 
 「じゃあ、もどっておいで」
 
 そして弾がなくなれば、とりついていたグランデェア・レイダに戻り、再度弾を補充し、再び出撃していったのであった。
 
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