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憎しみを抱いて 第三部:復讐編

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憎しみを抱いて 第三部:復讐編
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【第一章】



 心のよりどころとしていた宮司に裏切られた村人達は、悲しみや怒り、憎しみと言った感情を抱えながらも、村の復興にまい進していた。

 そんな村の外れで、ロイド・ベンサムとそのパートナーの川獺 信三郎が村を囲む川をたどりながら、その外周を歩いていた。

「川獺、妖魔の気配は?」

 ロイドが尋ねると、【妖力探知】で辺りの様子を伺っていた川獺が、特に何も。と言う風に首を振る。

「多少の気配は感じるが、それほど異様な気配は感じないでヤンス」
「こちらは特に怪しいところは無い言う事ですかねぇ。なら、次は消えた宮司を探すことにしましょうか」

 言いながら、ロイドは村の南の山へと足を向ける。
 山の中は、昼だというのに薄暗く、人の気配は感じられない。
 妖魔に近づけさせまいと【気迫】を使いながら進むロイドに続く信三郎が、辺りをキョロキョロと見回す。

「今のところは妖魔の気配は感じないでヤンスが……。ベンサムの話じゃ山の中には妖魔が居るんでヤンスね? 逃げた宮司もとっくに妖魔の餌になっていそうでヤンス」

 致命傷ではないとはいえ腹部を刺された人間が、妖魔のはびこる山の中で無事でいるとは思えない
 それはロイドにも分かっていた。

「かもですねぇ……。しかし、なんだか妙な胸騒ぎがするんですよ。……まあ、その正体も」

 ぴたりと足を止めるロイド。
 その視線の先には、枯れ葉に覆われた地面が広がっている。

「これを辿れば、分かると思いますよ」

 そこには、点々と続く赤黒い血痕があった。



◇◇◇



 ロイド達がいる場所から少し離れた山のふもとを、【探検隊バックパック】を背負って、【マシラの草鞋】を履き【忍びの歩法】を使う弥久 ウォークスがものすごいスピードで走っていた。

 山を流れる川のすぐそばを行きながら、その目は油断なく周辺に走らせる。
 と、ウォークスが何かに気づき、足を止めた。

「これは……」

 こんこんと流れる川のすぐそばに、男の物と思われる大きさの足跡があった。

「まだ新しいな。例の宮司の手下の男の足跡か?」

 この辺りで村の男が川に毒を流していたという特異者達からの情報を思いだしながら、ウォークスがつぶやく。
 
「他に怪しいところはないか。まあ、さらに上流にさかのぼれば何かあるかもしれないな」

 村人を助けて欲しい。
 暁の最後の願いを思い浮かべる。

(お前の願い、確かに受け取った。村の連中は俺たちが必ず救ってみせる!)

 その強い思いを胸に、ウォークスは解毒法を探すため、再び走り出した。



◇◇◇



「……それはすすめられぬな」

 正面に正座している六道 凛音とパートナーのアヤメ・アルモシュタラに、村長が渋い顔で首を振る。

「なぜじゃ? 何か理由でもあるのか?」

 鋭く見つめて来る凛音の視線にもひるまず、村長は淡々と語る。

「火上草があった村に行って、そこで調べ物をしたいというおぬしの気持ちも分かる。しかし、その村はここより遠く離れ、山をいくつも越えねばならぬ。人の足では三日はかかってしまうのじゃ」

 そこまで言って、村長はちらりとアヤメを見る。

「……そちらの天狗様の翼でも、一日では帰って来れぬじゃろう。それに、今その村がどうなっているかはわしにも分からん。いくら手練れだろうが、たった二人で向かうには危険すぎる」

 真剣に諭す村長に、凛音とアヤメは火上草のあった村の探索を諦めざるを得なかった。

「ならば代わりに、その村について教えて頂きたいのう」
「……いいじゃろう。その村の名は、火ノ出村(ヒノデムラ)と言って、先ほど言った通り、この守水村から歩いて三日ほどの山奥にある。……いや、あった、と言う方が良いかの」

 そう語る村長の目には、隠しがたい悲しみの色が浮かんでいた。

「他の方に聞きました。その村は二年前に滅んでしまったのだと」

 アヤメが促すと、村長は沈痛な面持ちで頷き、先を続ける。

「詳しい事はわしにも分からんが、風の噂では妖魔に襲われたらしい。女こども含めて、村人全員が……」

 その先は聞かなくても分かる。
 凛音とアヤメは火ノ出村についてさらに尋ねようとしたが、何をどう尋ねたらいいのか分からず、口を開く事が出来なかった。

「……おぬしの協力に感謝する」

 結局、凛音はそれ以上何も聞かぬまま、村長の家を後にするため立ち上がった。
 と、その時、村長の家の扉が叩かれた。

「失礼します。村長さんはいらっしゃいますか?」

 聞き覚えのある声に村長が入室を許可すると、扉の向こうから服部 秋也とパートナーの如月 今宵が姿を現した。

「なんじゃ、今日は手土産はないのかの?」

 秋也の手元を見た村長が残念そうに言う。
 それに困った顔になる秋也達に、村長はいたずらっぽく「冗談じゃよ」と返した。

「して、今回は何用じゃ? わしが話せる事はほとんど話したぞ?」

 いつまでも座ろうとしない秋也と今宵を不思議そうに見上げる村長。

「いえ、あなたにはまだ話して頂きたい事があります」

 ただ、と秋也は続ける。

「私に。ではありません」

 意味が分からず困惑する村長にかまわず、半開きだった家の扉に手をかける秋也。

「あなたに話をして頂きたい相手は、暁さん……“守水神様”です」

 秋也が開いた扉の先には、ぶるぶると鼻を鳴らす【大和馬】がいた。


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