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新型メタルキャヴァルリィを守れ!

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新型メタルキャヴァルリィを守れ!
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ヴィッカーズから少し離れた森林地帯。
 そこに、研究所は存在した。
 研究施設と開発施設、そして、それなりの規模がある、実験、研修施設。
 今そこに、多くの人物が集り、一機のメタルキャヴァルリィに視線が注がれていた。
 
「第2フェーズ、異常なし」

 研究所内部、モニタールームで読み上げられる計器の数値は、すべて正常。
 機体状況、パイロット状況、オールグリーン。
「新型機のテスト、開始します!」
 モニタールームに少し緊張の混じった声が響き、新型のメタルキャヴァルリィのテストが始まった。
「了解、起動します!」
 まだ名もないその機体のパイロットは、グローリア・ラディア連合軍所属のトルーパー、ユーリ・ラディウス。
 士官学校を主席で卒業した彼は、この研究所の研究主任、ゲン博士と古くから親交があったため、新型のテストパイロットとして抜擢された。
 元々、彼の操縦技術はそれなりに高く、パイロットとしては優秀である。
 そんな彼の操縦スタイルや戦い方から、ゲン博士はある理論を導き出していた。
 現行のメタルキャヴァルリィを、数倍のスピードで動かすために必要なことは、なにか。
 そのひとつの方向が、この新型機だ。
「軽そうだねえ」
 紫月 幸人は新型を見てそう口にする。
 新型機の大きな特徴は、極度といっていいほどの軽量化と、脚部フレームの構造の見直しだ。
 そのおかげで、理論上はかなり機敏な動きが可能ということになっている。
「そりゃ!」
 さっそくユーリは新型機で地上を走り、研修施設の一部を飛び越えていた。
「その通りですね。実に軽いようです」
 邑垣 舞花が腕を組んで口にする。
「その通りじゃ。まあまだフレームの実験段階だから、なんともいえんがな」
 ゲン博士はメガネを持ち上げて口にする。
「従来のフレームの半分以下に重量を抑えた上、脚部構造と推進装置の位置の見直し。おかげで機動性に関しては、理論値は300%、と」
 幸人がモニターのひとつを操作しながら、口を開く。
「ちょっとあなた、勝手にデータを見ないでください!」
 研究所の職員が幸人にそう注意するが、
「申し訳ありませんが、私もデータは見させていただきました」
 舞花が口にする。
「この新型機の理論、優れた内容ではあると思います。ですが、少々でセキリュティが甘いですね。私のような部外者でも、データを簡単に閲覧できましたよ」
 続けて口にし、博士に視線を向ける。
「しかも、自由に加工できそうだねえ」
 幸人もキーボードに入力をしながら口にする。大画面に表示されたのは、即興で書かれたような落書きだ。
「そうでなくても、こっちはメック開発が遅れているからね。新型を敵が奪いに来る、みたいな展開は燃えるけど」
「ええ。もうちょっと、データの保全については考えたほうがいいかと」
 幸人と舞花が博士に言う。
「あははは、おっしゃるとおりですじゃ」
 博士もセキリュティの甘さは分かっているようでそう口にした。が、それだけだ。具体的な発言はなにもなく、聞こえてきた実験経過にすぐ興味は移る。舞花が幸人のほうへ向くと、幸人は軽く肩をすくめた。
「第7フェーズ、終了」
「どうかねユーリくん、このマシンは」
「最高ですよ博士。俺の動きにダイレクトに反応してくれる」
 新型機は飛んだり跳ねたりを繰り返し、まるで体操の選手かなにかのように空中で複雑な動きを繰り返す。
 その動きが実戦でどう役立つのかは分からないが、なににせよ画期的なことに変わりはない。
「いいなあ……欲しいなあ……」
 天津 恭司はその新型機を見つめてそう口にした。
「それにしても、ずいぶん騒然としているな」
 九曜 すばるは【双眼鏡】で回りを確認しながら口にする。
「メックが複数機にシップも何隻か来てる。博士、宣伝でもしたのか?」
 すばるが聞くが、
「それはわしにもよくわからん。そんな大々的なPRをした覚えはないのじゃが」
 博士はそんな風に答えた。
「僕もどこからか噂を聞きつけた感じですね。なんか、いろんなところで宣伝されていたような」
 恭司は大型モニターから眼を離さずに言う。
「俺もそんな感じだな」
 ジェノ・サリスが、恭司と同じく画面から目を離さずに口にする。
「新型機の実験の話は、気がつけば耳に入っていた、というような話だった。正直、それが気になったな」
 視線だけを博士のほうへ移し、ジェノは言う。
「確かに、ちょっと不自然ですわね」
 松永 焔子も実験モニターを見つめながら、通る声で口にする。
「そもそもこの研究所のこと自体、私達は詳しく知りませんでした。ですが、新型が開発され、実験がされるということは、なぜか私達の耳に届いた。疑いの目を持つことは、当然のことだと思いますわ」
 続けて口にすると、
「ということは、やっぱりなにかが起きるってことね」
 佐倉 杏樹が壁に寄りかかったまま声を上げる。
「やっぱり、そうなるのかしら」
 杏樹と並んでいた今井 亜莉沙が口を開く。
「一応、周囲は偵察しているわ。今のところ、問題のある様子はないけど」
 亜莉沙が通信機に耳を傾けると、『異常なしですですーっ』とエオリア・ドライアウゲンの声が響く。別のモニターには、アデル・今井の姿も一瞬だが見えた。
「なにが起きても対処できるように、警戒は必要だね!」
 水瀬 茜が弾むような声を出した。杏樹も頷き、
「そっちはどう?」
 さらに別のモニターに写っている、装甲巡洋艦【L・コロナリア】内にいる各務原 麻衣に聞く。
『問題ナシよ。いたるところにメックがいて、なんとなく空気がピリピリしているのを除けば』
 麻衣は答える。
『待ってください』
 麻衣の言葉に続いて、同じく【L・コロナリア】内にいる水上 響が口を開いた。
『なにかが研究所に近づいてきています。識別信号から見ると、王国側のものですが……』
 響は口にし、麻衣が確認をする。
『本当ね、杏樹ちゃん、見える!?』
 麻衣がデータを送ってきた。同時に、研究所内部にも警報音が鳴り響く。
「なんじゃと? なにものじゃ?」
『わかりません』
 響が声を上げる。
 そのときだった。よく通る声が、通信機を通じて研究所内部にこだました。
  
「研究所にいる全職員に告げる! わたしはグローリア・ラディア連合軍所属、エリアル・ミューラである!」

「エリアル?」
 新型機のパイロット、ユーリがその声に反応した。
「研究所はただちに武装解除し、我々の指示に従え! 新型機の実験はただちに中止とする!」
 エリアルと名乗った女性は声を張り上げ、周囲を警戒するメタルキャヴァルリィにライフルを向ける。
「ど、どういうことじゃ!?」
 ゲン博士が通信回路を開き、エリアルに声をかけた。
「貴様が研究主任、ゲン博士だな。貴様がこの新型機を手土産に、亡命を模索しているという情報を得た。悪いが、取調べを受けてもらうぞ」
 エリアルは博士に向かって声を上げる。
「亡命だと?」
 ジェノが少し語気を強めて言う。
「どういうこと?」
 杏樹も博士に向けて声を上げる。
「まさか! なにかの間違いじゃ!」
 博士は主張し、
「そうだぜエリアル、博士はそんな人じゃない!」
 ユーリが通信を開き、声を上げた。
「ユーリ! 貴様もこの悪行に加担していたのか!?」
「悪行って」
 ユーリが少しあきれたような声を上げる。
「周囲のメックは直ちに武装解除しろ!」
 エリアルが言い、エリアルの左右に控えていた機体が、一歩前へと出る。
「あのなあ、」
 ユーリがなにかを言いかけた、そのとき。

 銃撃音が、響いた。

「どこから!?」
 すばるが周囲の様子を見る。
 銃撃はエリアルの右側にいたメタルキャヴァルリィの装甲を貫いていた。
「回避!」
 エリアルは左右の僚機に告げ、回避運動を取る。
 しかも、回避運動を取り始めたエリアルに、研究所のメタルキャヴァルリィが攻撃を開始していた。
「エリアル、逃げろ!」
 ユーリが叫ぶが、
「ええい、黙れ! こうなったら仕方ない、ここにいるすべての人間を拘束する!」
「なに言ってんだよ!」
「うるさい! ユーリ、今日という今日は貴様を許さん!」
 回避運動を取りながら、エリアルは叫ぶ。
「どうなっていますの!?」
 焔子が叫ぶ。研究所周辺のメタルキャヴァルリィはそれぞれが行動を開始していた。
「博士が亡命だと、どういうことだ!」
「新型機を守るぞ!」
「まて、新型を敵に渡すわけには!」
 通信からも、現場の混乱した状況が響き渡っている。
 機体によっては、どちらに味方すればいいかわからず、ただおどおどしているものたちもいた。
 そしてその機体に、どこからか銃撃が届く。
「攻撃を受けた! 反撃する!」
 通信が響く。
「周囲に通信を、まず落ち着かせて!」
 亜莉沙が叫ぶが、
『だ、ダメです! すでに戦闘が開始されています!』
 響の言葉に、皆が驚きの表情を浮かべる。
「まずいね、この混乱は、意図的に仕組まれたものかもしれない」
 茜が言う。
「だとしたら……この状況、新型を奪取しようとする策略!?」
 恭司が叫ぶ。
「ち、最悪な予想が当たったってわけか」
 ジェノが走りながら叫んだ。
「どうするの!?」
 亜莉沙が声を上げる。
「場を収める。この状況、おそらく他にもなにかいる」
 ジェノが振り返らずに叫んだ。
「幸人、舞花はここを頼む。俺たちは出撃する」
 モニタールームの扉を開き、ジェノは叫んだ。
「わかりました!」
「任せてよ」
 舞花は頷き、幸人は親指を立てた。答えるようにジェノは指を立て、走り去る。
「私たちも行くわよ!」
 杏樹が叫び、幸人たちに見送られながら、皆がモニタールームを出た。
「博士、研究所のデータをコピーできるのは、ここ以外にもあるのですか?」
 舞花がゲン博士に尋ねる。
「基本的にはどこからでもアクセス可能じゃ。全てはネットワークでメインサーバーに繋がっておる」
 言うと、
「ただちにネットワーク遮断、全システム緊急ダウン、データの記憶装置、記録媒体の保全を」
 舞花は言い、コンピューター端末に向かい合う。
「恐らく研究所内部にも敵の手の者が潜入しているでしょう」
 舞花の言葉に、博士はまだ信じられないという顔をしているが、
「幸人さん、データの保全を行います。手を貸してください」
「はいはい」
 舞花はてきぱきと動き出し、幸人も別の端末の前に腰かけた。
 研究所の残ったメンバーも最初はどうしたらいいか分からないというようなそぶりだったが、
「施設の状況確認とかは任せるよ。データは俺と舞っちに任せて」
 幸人のその一言に、それぞれが立ち上がり、動き出した。





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