三千界のアバター

秋の収穫祭で思い出作り!

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第三章 秋空に花びらが舞う
 
 日が落ちると村周辺の妖魔は活発に動き始めるが、村の安全は今も尚、特異者達と武士団が身を呈して守ってくれている。
時刻は酉の刻。村の広場では、収穫祭の目玉である宴会が始まろうとしていた。
舞台の周囲は無数の松明がぐるりと取り囲んでおり、柔らかい明かりが辺りを照らしあげている。
村人たちは、昼間の内に特異者達が作った料理を持ち寄って甘酒と共にいただきつつ、舞台の前に設置された長椅子に腰を下ろして、巫女の舞を観賞するのだ。
 本日、祭りの開幕を華々しく飾るのは、松永 焔子の役目である。
(では、私も祭りを盛り上げる一助となりましょう。時には伊達と酔狂で、刃を振るうのも悪くはありませんわ)
【鍵守の振袖】を纏い、【妖刀「無間地獄」】を携えた焔子は、この祭の時期に村を訪れたことも何かの縁だと感じていた。
村人のささやかな娯楽に華を添えるのも、大切な役割のひとつ。【オンステージ】により、舞台への心構えも完璧に整えていた。
焔子が舞台へ登壇すると、村人から歓迎の歓声が上がる。
「今宵、私が皆様にご覧いただきますのは、炎の舞にございます」
丁寧に一礼をした焔子は、まず自身の舞台を演出するための特設ステージを創りあげる。
「この季節に、桜が……?」
焔子の【桜の木召喚】により、舞台の脇に桜の大樹が召喚された。
月光を反射して薄桃色に光る桜は神秘的で、誰もを魅了する存在感を放っている。人々の目線が桜の木へ集まると、焔子の演出はさらに派手やかさを増していった。
(私の剣舞が、皆様の心に残る思い出になりますように)
【猿楽】の散楽に合わせて閃々と剣舞を舞いながら、焔子は袖口に忍ばせた【タイムリンカー】のスイッチを押す。
「おおっ、なんと美しい」
「不思議……。どうしてこんな光景が見えるのかしら……」
タイムリンカーは、焔子が胸に秘めた思い出を、剣のひらめきに合わせて映し出していった。
三千界で過ごして経験したできごと、目にした光景、そのひとつひとつを。
 美しいだけの剣舞ではない。思い出の記憶は、いつも綺麗なものとは限らないからだ。
焔子は、舞の拍子に多彩な緩急をつけながら、村人たちに届けたい光景を描き出していったのである。
村人もまた、次々と移り変わるタイムリンカーの幻影を見つめながら、これまでの村での日々を振り返っていた。
楽しいことばかりではなく、時には妖魔の脅威に怯え、眠れない夜もあったこと。不作が続いて、生活が困窮した年もあったこと。
だが、楽しいことも辛いことも、村人全員が一丸となって乗り越えてきたことを……。
 剣舞がラストへ近づくと、焔子は鞘に収めていた刀を抜刀。【抜き付け】により、【妖刀「無間地獄」】を発火させた。
「素晴らしい。鮮やかな剣捌きだ」
”かがり”の名に相応しい紅の炎が焔子を包みこみ、その姿を眩く浮かび上がらせる。
炎が揺らめくたび、桜の花びらが幾重にも重なって舞い落ちていった。
村人たちは時間も忘れて、うっとりと炎の剣舞に見惚れていたのだった。
「――拙い炎の舞でしたが、如何でしたでしょうか?」
「ありがとう、素晴らしい舞を魅せてもらったよ」
「炎の中に、花びらが舞って……。夢のような光景でした」

焔子が剣を帯刀し挨拶を述べると、村人は心からの感謝と称賛の拍手を焔子に送ったのだった。

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