三千界のアバター

花と騎士

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第一章 ―プロローグ―

 ロンバルディアの一角、古びた家屋が立ち並ぶ旧市街。
 絶えず賑わい、また黒い煙を吐くことを止めない工場地帯から一転、遠巻きに雑踏が聞こえるほど寂れた路地裏。
 後ろ暗い者達が静かに足音を響かせるだけのこの場所は、とある若き騎士が足を踏み入れたことで物々しい戦場と化していた。
 薄暗く細い路地から、二つの声が響き渡る。

「……速い!!」

 若き騎士――ベルナールは、全身を覆う甲冑を鳴らし、目の前の脅威と戦っていた。
 相手は不気味な笑みと共に縦横無尽に狭路を駆る男――ベルトランだ。
 ベルナールの言葉通り、疾風の如き身のこなし。目で追うだけでやっとだ。
 しかしながらベルトランと対峙する少女は、俊敏に下肢を運び果敢にも掴みかかる。

「ベルナール! 焦ってはダメです! 後ろからも来てますよ!」

 少女――フィオーレはベルトランが放つ銃撃に身を翻し回避。負傷は避けたものの、再び壁を蹴り距離を取られてしまう。
 その間も刻一刻と背後より迫る賊の足音は近づいていた。
 それだけでない。周囲の家屋から嘲るような品のない笑い声が漏れていた。
 まさに四面楚歌。

「……もう、ダメなのか……」

 ベルナールの悲壮な声が、日の当たらない路地裏を一層冷たく染めていく。
 絶体絶命の状況下を切り抜けられるのか。
 それでも――少女の瞳は絶望に伏してはいなかった。
 諦めない心。特異者達が彼女へ見せたその想いは、確かにその双眸に秘められているのだから。

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