三千界のアバター

この決意は壊せない【第1話/全3話】

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この決意は壊せない【第1話/全3話】
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 〈荒野のヒーロー(1)〉

「あれは何?」
 プアバスターズの廃墟に籠城中の子供が外を指す。
 その小さな指の先には……
「ロ、ロボット!?」
「こっちに来るよ!」
 廃墟に接近する巨大な人型メカがいた。
 メカはズシンズシンと大股で接近、あっという間に廃墟の前に辿り着いてしまった。
 数人の子供たちが小さな子を庇い身構えていると、コックピットから人影が姿を現す。
「すまない、驚かせてしまったか? 安心してくれ、コロニーからの救援だ」
 人型メカ【試作型ホライゾンIF】を操縦してやって来たのは青井 竜一だ。
 その巨大な手の平にはシルヴェリア・ネルソンもいる。
「俺が君たちより先を行ってテュポーンを撃退する。だから安心してくれ」
 竜一はそう言ってシルヴェリアを地上に降ろした。
「先に行くって……あのお兄さん、避難場所知ってるのかな?」
 子供のひとりが呟くも、
「心配は無用だ」
 と、シルヴェリアが【スロートワイヤレス】を取り出す。
「これで竜一をナビゲートするから、まずは避難場所の方向と距離を教えてくれないか」
「いいよ!」
 傍にいたプアバスターズの少女が挙手した所に、
「私も一緒に聞かせてもらいましょう」
 と、我無 鈴奈が加わった。
「IFは巨大でパワフルですがその分死角も多いかと。速度には自信がありますし、私も先行します」
 更に、四柱 狭間も避難場所の位置を確認すべく輪に入る。
 彼は必要に応じてテュポーンを遠距離から撃ち落としたいと考えている為、移動する子供たちから距離を取っても迷わぬようにしておきたいのだ。

 少女から避難場所を聞き出したシルヴェリアは、【スロートワイヤレス】による無線通信でIF内の竜一に道筋を教える。
「……そうだ、その方向だ。頼んだぞ。そちらの指示が入り次第、こちらも移動を始める」
 通信を終えると、竜一の操縦するIFがズシンズシンと避難場所に向けて移動を開始した。
「スゲー……」
「前にどっかの瓦礫で見つけた絵本に出てきてたナントカ戦隊みたい……」
「強そうだね……」
 子供たちは驚きを通り越して呆けた顔さえしている。
「では、私も……」
 鈴奈は【F-Fギア】を足に装着すると、【光闇のプラーナ結晶】を使って【GQリーシュ】を光属性に変更し、竜一のIFの脚周りを陣取りながら颯爽と飛び出していった。

 程なくして、竜一からシルヴェリアに当面敵の襲撃は無さそうだと無線連絡が入った。
「こちらも問題はない。そうだな、子供たちを進ませよう」
 シルヴェリアは竜一にそう返して無線を切り、いざ出発しようとするが……。
「これは……非常に効率が悪いな」
 シルヴェリアは思わず眉間に皺を寄せた。
 30人近くいる子供たちの中に、自力歩行さえ出来ず年上の子におんぶされている子が数人いるのだ。
「いつもそうして避難しているのか?」
 シルヴェリアの問いに、子供たちは答える。
「うん。あと、あの子たちはテュポーンが見えないから強い子と絶対一緒だし、そっちの子は耳が不自由で、それから……」
「いや、もういい、そうか……」
(ここのリーダーは少々危機感が足りないのではないか?)
「でも、いつもこうしてるから大丈夫だよ」
「何を言う。外のテュポーンの数を考えろ」
「あ……」
 シルヴェリアの指摘に子供たちはハッとして一気に不安げな表情を浮かべた。

 と、そこに、ブルルン! とレトロなエンジン音が響いてきた。
「運搬手段は用意した!」
 2台の【フレイムバギー】を運転しながら佐倉 杏樹各務原 麻衣辻 冥カルラ・カポネ、そして【ホライゾンホバーボート】に乗って六合 春虎がやって来たのだ。
 しかも、それぞれのバギーの後方には【水陸両用荷車】が牽引されている。
「避難すんのかなりいんだろ? ちまちま行軍する間に何体のテュポーンと遭遇するか分かったもんじゃねー。コイツら2台で往復してさっさと避難完了させねーとな!」
 これにはシルヴェリアも目を見開いた。
「これは妙案だ。君たちに自力移動の困難な子たちを頼みたい」
 シルヴェリアの依頼に、春虎はグッと親指を立てる。
「ああ、任せとけ!」
「途中でアクシデントがあっては大変ですからね、出発前に念入りに補強しましょう」
 麻衣は自身が運転するバギーと牽引する荷車、そして双方の牽引部分に【バリアアップデート】を施した。
 同様に、冥も運転手として【バリアアップデート】でしっかりと補強する。
「ええ、慈悲の欠片も無く無差別に子供たちを狙うテュポーンから救うべき命を乗せるのですから」
 補強を終えると、冥は子供たちを見回し、指示を出した。
「歩行に難のある子を最優先で運搬します。荷台にそれぞれ5名ずつ乗って下さい」
 おんぶされていた子が次々と荷台に降ろされ、次に病弱で長距離移動の困難な子が乗り込む。
 2台の荷車の定員はすぐに埋まった。
 それでも、まだ移動に多少の難を抱える子は残っている。
「必ず無事に送り届けます。それと、他の皆さんもその後すぐに迎えに来ますよ」
 冥は荷車の子とこれから徒歩移動を始める子双方に声を掛けた。
「でもこのバギーって、あれでしょ? ほら、何か気分が異様にハイになるやつ……冥ちゃん、運転中は落ち着いてね」
 と、カルラは【療養のお香】を運転席近くにテープで固定する。
 それを見て麻衣も出発前に【療養のお香】を運転席付近にくくりつけ、前後の火炎放射器を見て自身に言い聞かせるように呟いた。
「迅速且つ冷静に行きましょう……くれぐれも火炎放射器は使わないように、と」

「これなら何とかなりそうだな」
 シルヴェリアは安堵の息を吐いた。
 徒歩移動の子供たちには彼女の他にも多くの特異者たちが付いている。
 加えて、竜一と鈴奈の先行に春虎たちのグループによる子供の運搬と、バックアップ態勢も整った。

 いよいよ子供たちの大移動が始まる――!

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