三千界のアバター

ワンダーランド

ただ、そこに生きる

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ただ、そこに生きる
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 一章 狂い、舞う
 
 森は不規則に動く。
 ミラウス・ロゼッタンはシルバーソードを構え、向かってくるオルトゥスを睨む。
 オルトゥスは吼え、自らの重さと振動で傷口を広げ、ミラウスに飛び掛かる。
 ミラウスの全身に強い風が当たり、はっとする。気配と影を感じ、ミラウスは眉を寄せる。
 オルトゥスはミラウスが想像した以上に跳躍したのだ。腹部を覆う金色のプレートアーマーが双眸に映り、光る。
 ミラウスは咄嗟に横に飛び、顔を葉で切りながら地面を転がり、素早く、立ち上がり、走り出す。
 オルトゥスは舌打ちをし、ミラウス目掛けて妖精の誘いを放つ。

「止まるのだ!」

 オルトゥスは叫んだ。ミラウスはオルトゥスの命を受け、直立不動の姿勢を保つ。
 オルトゥスは嗤い、ミラウスの首筋に咬み付き、空に放り投げる。
 ミラウスは目を剥き、首から血を噴く。同時にオルトゥスは顔を顰めながら、かぎ爪を振るう。
 服が裂け、血飛沫が舞う。ミラウスの身体は真っ赤に染まり、地面に勢いよく、叩きつけられる。
 地面が揺れ、鳥が飛んでいく。オルトゥスは左後肢を引きずりながら、気を失っているミラウスに近づく。
 オルトゥスは口元を歪ませ、自らの甘さを咎める。無意識に手加減をしてしまった。出血の割に傷は浅い。

「嗚呼、とどめを刺さなくてはならない」

 オルトゥスは楽しげに言い、小首を傾げ、笑う。
 ミラウスの手から離れたシルバーソードをそっと咥え、ミラウスの首にあてがう。気分はまさに死刑執行人だ。

「死ね」

 オルトゥスはもごもごと呟き、歯の隙間から唾液を零し、シルバーソードを振り下ろし、途端に青い目を剥く。
 栄光の小瓶が眼前に映り、光と轟音がオルトゥスを襲う。金属音が轟音に混じる。
 オルトゥスのシルバーソードを受け止めたのは紅月 真奈美だ。握られた華撃棍「紅焔」が何度か揺れる。
 オルトゥスはシルバーソードを捨て、邪魔をされた怒りに震え上がった。地面はオルトゥスとミラウスの血で濡れている。

「オルトゥスさん……」

 真奈美は悲しげに呟き、清澄の唄声を使い、歌を歌う。
 同時に空を飛び、オルトゥスと同じ目線になる。オルトゥスは吼え、尾を振り、真奈美に襲い掛かる。

「ふふ、時が満ちるまで私は待つとしましょう?」

 宵街 美夜は真奈美とオルトゥスの様子に目を細めている。
 タイミング良く踏み込まなければ、声を掛けたとしても蟻のように踏み潰されてしまう。
 美夜は微笑み、ミラウスに駆け寄る真毬 雨海を知り、やれやれと肩をすくめた。男はどうでも良い。

「あら?」

 美夜は天廻 陽樹の姿を見つめ、微笑む。陽樹も美夜同様、タイミングを見計らっているようだ。
 
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