「兵をそろえて戻ってきてやったぞい」
老人が再び砂浜へ戻ってくる。
「お待ちしておりましたおじいさん」
カメが老人を見据えてほっと息を吐く。
「こんな事態になってるなんて……びっくりよね」
御巫 ユキが老人の後ろから顔を出す。
「あぁ。俺は女の子を食料にする様なモンスターは放っては置けない!」
ウォークス・マーグヌムが続く。
「最近ワンダーランドでは事件も起きず、せっかく鍛えた力を振るえず、フラストレーションが溜まっておりましたので思う存分暴れさせていただくとしましょう」
ルキナ・クレマティスが口元に笑みを浮かべる。その横では
「私もカメさんを助けたいのは口実だったりしちゃうかも」
無邪気に
八神 京が同じように笑んでいた。
「水中か、あんまり経験のないシチュエーションだにゃー」
リデル・ダイナがどうしようかにゃーと首を捻る。
「確かにそうですね。聞いた話ではカリュブディスは夜にしかでてこないのでしょう? 暗闇の対処も必要になるでしょうね」
雨咲 時雨も同じように首を捻る。
「夜は、暴れ者の斉天大聖である俺としては、水龍を相手に戦うのは望むところだ。」
と
青井 竜一が意気込む。
「でも乙姫さんも心配だなぁ……。昼の竜宮は手下のピラニアがいるんでしょ?」
瑞輝 奏音が心配そうに海を眺めます。
「水龍の影に隠れてる肉食魚なんてまともなわけがない。殲滅しとこ?」
邪神 水希が提案する。
「いい考えかもしれません……乙姫さんの負担もそうですし……村人の皆さんも不安になっているでしょう……急がなくてはなりませんね……」
ルイーザ・キャロルが賛成した。
「じゃぁ、何人か昼の間に乙姫、助けにいこっか!」
邪神が全員を見渡す。
「俺は構わない。昼に出ると夜の戦闘にでるのは体力的に難しいだろうから、参加はしないがな」
青井が言う。
「同感だ。気を付けて行ってくるといい」
ウォークスが頷く。
「もちろん私も残ります」
ルキナが言うと隣で八神が手を挙げて言った。
「私も残る~!」
雨咲は言う。
「ほかに名乗り出ないということは乙姫さん達の救出ということで問題ありませんね?」
それを承諾するように皆が頷く。
「そういうことならワシも協力するとするかの」
老人が準備運動をし始める。
「ボクも協力しましょう!」
カメが最後にぼそっと呟く。
「……強くはないので道案内くらいですが」
「大丈夫……です。私も戦闘では……お役に立てないので……。でも精一杯……援護します」
ルイーザがにこやかにそう言う。
「仲間達の護衛としてついていくにゃー! 私は水中ではパントマイムで意思疎通するにゃ、簡単な物だけでも、キミたちに事前に教えておくにゃ」
リデルがそう言って教える。
「ありがとう。私、ボートを借りてくる。湖、竜宮城の上へそれで行こう」
邪心が村へ踵を返す。それを合図に皆が準備に取り掛かる。
「カメさん?湖の深さや、到達するまでどれくらいか教えてくれる?」
御巫の問いにカメは
「竜宮は真上からだと数十分は潜らないとだめですかね。人間は水中では息ができないのでしょう?」
と、首を傾げる。
「大丈夫、ダイビングセットがあるからね! 頑張って村人たちや乙姫さんを救出して、みんなに安心を届けるよ!」
御巫が言う。カメはほっとしたようだ。
皆が装備を整えていく中、邪神と村人がボートを持って戻ってくる。
「お待たせ」
村人はどうやらボートを渡した後、砂浜で待機する様子だ。
「ダイビングセット装着オーケーです! よし!救出に行きますよっ!」
雨咲がそう声を上げると、邪神が言った。
「私に少し考えがある。少しいいかな?」
皆は彼女を振り返って首を傾げるのだった。