王都ケントルムの街にあるとある酒場の扉が勢いよく開く。
バタン!!
酒を飲み騒いでいた人々は驚いて入り口を振り返った。
そこには白衣をまとった男が一人、膝に手をついて乱れた息を整えていた。
ワイングラスを磨くマスターが声をかける。
「そんなに慌ててどうしたのですか?」
カウンターまで詰め寄った男がマスターに言う。
「栄養剤につられてマンドラゴラが集まって、アルラウネまで来てしまったんだ! 至急駆除依頼を出せないか?」
「警備隊に依頼されてはいかがでしょう?」
落ち着き払ったマスターが答える。
「警備隊に知られてしまって大事になってしまえば研究を続けられないんだ! 頼む!」
ため息を一つ零したマスターは、男にではなく酒場全体に聞こえるようにこう言う。
「と、いうわけだそうですよ皆さん? 腕に自信のある方は助けてあげてはいかがでしょう?」
「そんな言い方で人が集まるわけ……」
ちゃんとした依頼を出して欲しいと訴えようとした男は次の瞬間耳を疑った。
ガタガタと音を立て何人かが立ち上がったのだ。
「親切な人はどこにでもいるものなのですよ。さぁ、店の奥をお貸ししましょう」