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津波に運命を囚われた少女達

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津波に運命を囚われた少女達
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プロローグ



 一條 勇人は、崩された波止場の瓦礫の上から海原を眺めていた。
 耳心地のいい小波の音に囲まれた、穏やかで深く青い海。
 ついさっき海蛇に襲われた場所にはとても見えない、そう勇人は思った。

「兄ちゃん。町長に頼まれた船だが、こんなもんでいいか?」
 赤黒く肌の焼けた体格のいい男が、勇人に尋ねる。
 男が指差した先には、小柄ながら頑丈なバルシャ船が泊まっていた。
「小さいが立派な貨物船だ、お仲間を連れていくには十分だろうよ」
「ありがたい、こちらとしても助かる」
 勇人は瓦礫の上に乗せていた、自分の荷物に手をかける。

「……なぁ、兄ちゃんよ……」
 体格の良い男は、険しい顔で声のトーンを下げた。
「海蛇ウイレベイストを倒す必要なんて、あるのかい? もしかして、奴は……!」
「勘違いしないでくれ、ウイレベイストを倒すんじゃない。止めるんだ」
 勇人の言葉を聞いて、男の顔色から焦りが引いていく。
「しかし、ウイレベイストを止めるより全力で救出しに行った方が……」
「ウイレベイストを海上で止められなければ、恐らく砦が襲われることになる」
 攫われた少女達が、街外れの砦に幽閉されているかもしれないと、男は町長から話を聞いている。
 男がみた勇人の厳しい瞳には、決意が宿っていた。

「しかし、問題は水夫か。この船なら俺達でも操れなくはないが、海蛇相手だとさすがにきつい」
 バルシャ船を見ながら勇人が軽く溜息をついていると、太い腕が勇人の肩を掴んだ。
「俺達を連れていってくれ、船の扱いなら任せろ」
 彼の態度に尋常ではないものを感じた勇人は、相手を見据えて一呼吸置いた。
「この戦いは非常に危険だ」
「危険もくそもあるか! こっちは娘の命がかかっているんだ!!」
 赤黒い肌の男は、必死の形相で叫ぶ。
 勇人はその男に気圧されたまま、父親の心を汲むことにしたのだった。

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