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千国にようこそ、新たなる英傑様!

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千国にようこそ、新たなる英傑様!
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 夜、宴会場。

「……夜桜に星空、本当に綺麗じゃな」
「……あぁ……綺麗な。桜と……星空、だ」
 メアリ・ノース遠近 千羽矢は桜の幹にもたれかかるように腰を下ろし星空と夜桜を見上げていた。
 隣の千羽矢を盗み見するメアリは
「……(……良き君主になろうと思う故か最近のチハヤは何かと気負い過ぎておるように見えるからの。偶には肩の力を抜いて心を落ち着ける時間も必要じゃろうから今日は思いっきりチハヤに息抜きをさせるのじゃ)」
 香木を使って『香の調合』で千羽矢の心安らげる香りを演出してから
「チハヤよ、今宵は特別じゃ……」
 そう言い置き香は焚いたまま何やら準備を始めた。
 完了すると
「わしの舞を、その特等席から観る事を許そうぞ」
 天衣を靡かせ見る者を魅了する『蠱惑の舞』を舞った。

「♪♪」
 メアリは美しい銀髪をなびかせ、軽やかにステップを踏み、観客に流す深紅の瞳は妖しく熱く
「今、俺に視線を送ったぞ」
「いや、俺だ」
 観客達を一様に虜にする。

 そんな中
「新(しん)、すげぇ舞だよな。俺も散楽師としてちょっと参加したくなったぜ」
「……」
 メアリの舞を楽しむ20歳の散楽師青年と11歳の少年がいた。ただし楽しんでいるのは明らかに青年だけ。

「♪♪(ふむ、散楽師もいるのなら……盛り上げるのを手伝って貰おうかの)」
 舞うメアリはすぐに青年散楽師を発見し
「♪♪」
 相手役を務めて貰えないかと視線で問い掛け誘うように手を差し伸べた。
「新、ちょっくら参加して来る。何かあったらすぐに呼べ」
 気付いた青年散楽師は少年に一言言ってメアリの舞に参加し
「♪♪(一緒に盛り上げて貰うぞ)」
「♪♪(任せてくれ)」
 メアリと青年散楽師は即興で共に舞い観客達を魅了した。
「……」
 舞を見ていた少年はメアリが焚いた香の匂いに誘われ桜の下へと歩み千羽矢の隣に座った。

「……この……風景、も。人々の、笑顔も……戦乱に。巻き、込まれれば。……いつか。……見られなく。なるん……だろう、か」
 千羽矢は深紅の双眸に様々な物を映しながら思いに耽る。
「……(……君主、なんて。……柄。じゃ、無い。……それでも)」
 今千羽矢は君主ではあるが『【触媒:1倍】人徳』で人に騒がれるのを回避するため頭から黒漆紋の羽織を被ってお忍び風である。
「……(……護りたいものを。護る、為に。……俺は。何を、すれば……)」
 千羽矢が考え事をしていた時
「……」
 隣に市井の子供の格好をした11歳の少年が座り
「……(……賑やかな宴会に、不似合いな顔を、しているな……)」
 思わず少年の暗い顔が気になって千羽矢は
「……どうした……暗い顔を、して……」
 訊ねた。
 気付いた少年は
「……僕が罹った病が父上と母上にも感染して……僕だけ助かって……僕のせいで……」
 水分滲む声で事情を語った。
「……自分を、責めるな……」
 自責の念に駆られる少年がいたたまれず挟む千羽矢の言葉は
「みんなそう言って僕に優しくて、父上の跡を継いで君主になったけど……まだ子供で……後見人のおじ上に言われて友人の青紫(あおむらさき)を護衛に心の療養に外に出て……」
 さらに少年の声に水分を含ませ視線はメアリと舞う青年に向いた。
「……散楽師か……」
 同じく青年に目を向ける千羽矢に
「……僕、どんな君主になったらいいのかな……」
 俯き両親を失ってから常につきまとう悩みを洩らした。
 それに
「……それは」
 千羽矢が答えようとした時
「♪♪(観客全体が引き込まれた所で次はこれじゃ)」
 メアリが絶妙なタイミングで懐剣を取り出し
「♪♪(剣舞か。よし俺も)」
 青紫もまた剣を手に舞う。
「♪♪(鋭くそれでいて優雅にじゃ)」
 メアリもまた相手の動きに呼応して鋭く優雅な『剣舞』を披露する。
「……」
 少年は自分がした問いを忘れて舞に吸い込まれてしまったが
「……(どんな君主に、か…………民なくして。国は、無い。……俺は。国……じゃ、無く。……人を。護る……君主に。なり、たい)」
 千羽矢は忘れておらず密かに炎と桜のネックレスを握り締め胸中で答えてからメアリ達の剣舞に合わせて『桜吹雪』を舞い上がらせながら取り出した神楽笛で迷いの無い真っ直ぐな音色を奏で始めた。
「♪♪(これはチハヤじゃな)」
「♪♪(いい笛の音だな)」
 舞い散る桜の花びらの中メアリと青紫は舞った。

 美しい笛の音と優雅な剣舞に魅了された観客達は
「……」
 全てが終了しても余韻に浸っていた。
 そんな中
「あんたらと共演出来て楽しかったぜ。名前何て言うんだ? 俺は散楽師の青紫だ」
 青紫は千羽矢を一瞥してから名乗った。千羽矢を君主ではなくすっかり笛奏者と思い込んでいた。
「わしの名は……そうじゃな……夜桜の舞姫、とでもしておこうかの」
 メアリはしばし考え込む様子を見せたがすぐに不敵な笑みで名乗った。

 一方。
「……ありがとう……僕、奥村新之丞(おくむら・しんのじょう)。話聞いてくれて少しだけ楽になった……」
 少年は僅かに暗さが薄くなった顔で千羽矢に礼を言い名乗った。
「……そうか……」
 千羽矢は一言そう言った。

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