■キャンプを終えてから
キャンプ開催中、参加者のほとんどが商店街の品を利用してくれただけでなく宣伝もしてくれたおかげで見た人が次々と興味を持ち釣具やバーベキュー用品や食材や菓子などを利用したり食べたりと賑やかなものとなった。
しかし、キャンプ終了後の楯無商店街の売り上げはというと急激に上向きになるという事はなく、キャンプに参加し興味を持った客がちらほら見られるようになりほんの少しだけ売り上げが向上したという程度であった。何事もすぐに結果が出るものは無いと言う事だろう。
肝心のキャンプでの助言の結果は、
見ればキャンプの光景を思い描く事が出来る賑やかな写真盛りだくさんに共に写る商店街関連の商品の紹介や利用者の声が記載された無料冊子は商店街の無料スタンドや店々に置かれ、無料という事もあって訪れた人のほとんどが手に取ったという。中には紹介された商品を購入する者達もいたり。ちなみに榛名はキャンプ中は閃かなかったが、冊子が出来るまでには宣伝文句の一部を思いつき、冊子作製者に提出し、出来上がった冊子に見事に掲載されていた。
ハーモニカとアコースティックギターのしっとりとした音色と素敵な歌声で彩られた商店街をイメージした曲が商店街に流され、行き交う人の足を止めさせ、耳を傾けさせる。公認ではなく試しに流すという形式であったが、この曲目当てに訪れる者がいたりで客にとってはお決まりになりつつあったとか。
今まで通り地元密着型を目指してマニアックな物を扱うのは変更無いが、一方で利用者にとっての大定番を1押ししたり誰もが立ち寄りやすいように気軽に食べる事が出来たり購入しやすい物を店頭の一番目立つ場所に配置したりとキャンプで受けた助言に対して柔軟に取り入れていた。
和菓子屋『国春』。
これまで通りの和菓子の販売をする横でキャラ和菓子を販売し
「ほら、これ可愛い」
「これってあれだよね」
客の目を引き付けたり
「甘くて美味しそうな匂い」
「食べたくなるなぁ」
店先でキャンプにて提供した焼き饅頭を実際に焼いてシュールな様を見せたり漂う甘い匂いで客寄せをした。
お菓子屋『ウルグール』。
「最初の手順は……」
宏夢は様々な年代性別の生徒を相手にお菓子作りの指導をしていた。
キャンプで開催した菓子作り体験工房に手応えを感じたのか店でも開講する事にしたのだ。手間など諸々を考えて毎日ではないが。
「それで……」
キャンプで開催した事が宣伝となり生徒ゼロという事は無かった。ちなみに指導役は父と息子が交代でしているとか。
他に
「これはいいかもしれない」
「えぇ、間違い無く人気が出るはずよ」
浩一が作った菓子を宏美がチョイスした愛らしい少量の菓子袋に入れて新商品を楽しそうに作っていた。そうして作られた商品は見た目と味に引かれて買われていた。
楯無商店街はキャンプを開催する前と比べて僅かに売り上げは向上したが、やはりショッピングモール『ラデェス神多品』や『アキバロード』の賑わいにはまだまだ勝てず、さらに精進を続けなければならなかった。