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いたずら狐にご用心?

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いたずら狐にご用心?
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 四章 悪戯妖狐、見参!

「おお? なんだなんだ、もうおっぱじまってるのかい?」
 妖狐がうどん屋から戻ってみると、騒動は既に祭全域に広がって、混沌とした様子を呈し始めていた。猫又がどこかで捕まったという言葉が聞こえれば、狐が現れたという言葉も聞こえる。どこかでいかがわしいことをしては逃げる人間もいるという話も聞こえてきて、すっかり場は出来上がっていた。妖狐はにんまりと笑うと、手近な屋根に飛び乗って高らかに呼ばわった。
「おうおうおう! この妖狐、こがね様をほっぽってこぉんな楽しそうな事を始めるたあ、ふてえ野郎どもだ! おいらも混ぜろ!」
 こがねいろの髪をを逆立て、輝く尾を振りながら叫ぶと、屋根の下から里の者や旅の者達の視線が一気に妖狐に集中した。妖狐を指さしながら口々に叫び、祭すべてに行き渡っていく。
「現れたぞ!」
「悪戯狐だ!」
「どっちが本物だ?」
「構うこたあねえ全部捕まえるんだよ!」
「合点承知!」
「ああこいつどさくさに紛れて俺のたこ焼きを!」
 花道を渡る歌舞伎役者のように、喧騒に煽られて飛び出した妖狐は祭の会場を駆け回り始めた。走り始めると、騒ぎを聞きつけて駆けつけてきたのだろう、人影が立ちはだかった。
「待ちなさい!」
 真っ白な髪と尾を持つ妖狐の姿。レイナ・ハイゼルだった。その姿を見て妖狐、こがねは少し驚いたように走る速度を緩めた。
「こりゃ、お仲間のねーちゃんが出てくるたあ驚いた。なんか用かい?」
「大人しく捕まって、きちんと里の人たちに謝るんです!」
 妖気を漂わせながら退治する二人の妖を人々は遠巻きに見ていた。レイナの口上を聞くとこがねは呆れたというような顔をし、べえ、と舌を出した。
「ねーちゃんもそのクチかよ! やーなこった!」
「なら力ずくでも……」
「へえ? そういう気なら」
 戦う構えを見せたレイナが跳びかかる一瞬前に、こがねはゆらりと陽炎のように揺らめいて消えた。はっとして立ち止まったレイナの胸をむんずと掴む小さな手が二つ。一瞬で幻影を囮に背後に回っていたこがねの手だった。
「やっ、あっ!?」
「うーん。でかい。それでいて腹回りもきゅっと絞ってあって、いい尻してる。わがままぼでぃだなあ、ねーちゃん!」
「くっ、このっ!」
 しがみつくようにレイナの体をまさぐっていたこがねを振り払う。実際、こがねの手と比較して明らかにオーバーサイズのバストがぶるんと揺れて手からこぼれる。すとん、と降りたこがねが強引に振り払ってバランスを崩したレイナの尻を支えた。
「形もいいしでかいが、ちょっと重いぜ」
「言わせておけばっ!」
 ばっと飛び退いてレイナが意識を集中する。妖気が高まり、並みの妖であれば怯むであろう量が放出される。しかし、こがねは涼しい顔をして、対抗するように意識を集中した。
「おお、こわいこわい。でも、カミサマ相手に力比べってのは粋だぜ、ねーちゃん!」
「っきゃ!?」
 突然、ごうと音を立ててこがねの尾が炎に変化する。吹き荒れる熱風がレイナを吹き飛ばした。
 ところで、レイナが必至にこがねと争うとも遊ぶともつかないもみ合いを続けている頃、パートナーであるジョン・ハイゼルは地球人の姿で某とこがねの事を考えていた。
(悪戯と言っても食物を奪い、婦女子に触れる他愛のないもの。害意があるとは思えん)
 そのころ既にレイナは件の狐と取っ組み合いを始めているわけだが、その音は考え事に集中しているジョンには届かない。
(実際の所、理由さえ分かれば捕まえるまでもなく解決する可能性はありそうなものだが)
 やがて「っきゃ!?」という声が聞こえ、やっとそこで事態の異常に気付いたジョンが振り返る。目の前に白く輝く双丘が見えたかと思うと、ぼすん、と勢いよくその谷間に貌ごと巻き込まれ、次いで体にのし掛かられた。
「あっ、ご、御免なさい」
「いや、いい、無事か」
 もごもごと胸に埋もれながらジョンがレイナを支える。顔を真っ赤にするレイナとは対照的に、ジョンは平静そのものだった。「とりあえず無事なら退いてほしい」という言葉に慌てて立ち上がったレイナに続いてジョンが立ち上がる。
「アバターチェンジ」
 呟くと同時にジョンの姿が光に包まれ、侍の姿になる。こき、と首を鳴らすと「さて」と前置きしてジョンが飛び去る妖狐を見つめた。
「考えるべきことは多いが、捕り物を始めるとしようか」
「はいっ」
 こがねを追って二人は駈け出した。


  
「おっちゃんこの塩漬けあんまり漬かってねえぜ」
「おう、ちょっと時間がなくてな……ってああああ!? 悪戯狐じゃねえか! 勝手に食うな!」
「へへん、ぼっとしてんのが悪いのさ!」
 あちらでもこちらでも、風の様に飛び回りながら祭を荒らし回る。狙いはいつでも明確で、食べ歩いては気まぐれに女性に悪戯を働く。そんな嵐のようないたずらが迫ってきた折、出店を見ていた一人の村娘がさっと立ちはだかった。
「そこまでです、妖狐さんっ! この正義の忍者『やおよろず丸』が逃がしませんよっ!
 はあっ!」
 ばさっと一息に着物を脱ぎ捨てると、周囲からおおっとどよめきが上がる。現れたのは忍装束の少女、高天原 さくら。続けてこがねの背後からも声が上がった。退路を塞ぐように立っていたのは吉祥院 雪だった。
「先日の恨み、ここで晴らさせて貰うのです! さくら、挟み撃ちですっ!」
「合点承知です、雪ちゃん!」
 挟撃に成功し、じり、と間合いを詰める二人を面白そうに眺めていたが、少ししてこがねがふと首をかしげた。
「はて、ねーちゃん、先日の恨みってなんだい?」
「しらばっくれないでください! このあいだ、こ、こ、腰巻の下から直接触ってきたじゃないですか!」
 顔を真っ赤にしながら糾弾する雪を尚も訝しげに見ていたが、やがて、こがねはぽん、と手を打つと、楽しそうに笑いながら姿勢を低くした。
「触れば思い出すって寸法だな!」
「させませんよっ!」
 さっと柔術の心得で組みついたさくらがこがねの奥襟を捉える。そのまま投げに移ろうとするさくらがふわっと浮遊感を感じた。
「えっ、ああっ!?」
「奥襟は間合いも近いし、返しを食らうから、仕掛ける時は慎重に、だぜ!」
 体を入れ替えてさくらの手首を極め、すぱっと足払いを仕掛けてさくらを投げ飛ばしたこがねはそのまま距離を取る。背後には雪が控えている。
「その記憶、思い切り殴り飛ばして、消してやるのですっ!」
 ぶうん、とこがね頭を狙って攻撃が振り下ろされる。だが、当たるかに見えた一瞬、こがねの姿は陽炎のようにゆらめいて消えた。幻影であると気付いた一瞬、さくらの背後から声がした。
「実はこっちなんだなぁ」
「速い――って帯が!」
 振り返ろうとしたさくらの帯がいつの間にかこがねの手により解かれていた。あわわ、と着物の前を押さえるさくらの視界から帯とこがねが消える。ぺたん、と座ったさくらに観衆が雄叫びを上げる。
「おおお!」
「いいぞ狐……い、いや! なんとけしからんことを!」
「よくもさくらを!」
 続けて打ちかかってくる雪が間合いに入るより先に、さくらから奪い取った帯がすぱっと雪の脚に絡む。「あっ」と声を上げる間もあればこそ、バランスを崩した雪が姿勢を立て直す一瞬で再びこがねは背後に回っていた。目にも留まらぬ早業、いやさ神業で雪の帯も奪い取り、はだけた着物の裾から手を突っ込む。
「この柔らかさ……確かに! や、ねーちゃん忘れてて済まない!」
「こ、このっ!」
「おっと、動くと見えるぜ」
「えっ、あっ!」
 言われて着物を慌てて押さえた雪の間合いから一気にこがねが飛び退く。丁寧に帯は屋根の上にひっかけた上で、高笑いをしながらこがねは跳んでいく。
「あーっはっは! ねーちゃん! カミサマと相撲を取ろうってんならもっと精進しないとダメだな! じゃーな! いい尻だったぜ!」
「こ、このお!」
 激昂する二人ではあったが、迂闊に動けば見えてしまう。帯をどうにか取るためにはどうしても両手を使う。途方に暮れる二人を置いて、妖狐はまたどこかへ消えた。

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