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建国の絆 第6回

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建国の絆 第6回
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■ダークヴァルキリーを『解放』するため『討伐』せよ!(4)

「僕、思い出したんだ。とても親しかったアムリアナ様とネフェルティティ様。あの頃のような二人に、また戻ってほしい。
 いろんな問題があって、簡単にはいかないってわかってる。それでも僕は……僕達は、諦めたくはない、諦めたりはしない!」
 神子に目覚めたコハク・ソーロッドの波動は、ダークヴァルキリーでさえも無視することはできずに行動を鈍らせた。だがその力は神子を亡き者とするべく暗躍するシャムシエル・サビクの影をも呼び寄せることとなる。
「邪魔をしないで! 助けてくれる友達のためにも……僕はこんな所で倒れたりしないよ!」
 死角から斬りかかろうとするシャムシエルの影を、予め付与しておいた魔法が迎撃する。影が魔法を浴びて一旦怯みはするものの、それだけでは戦闘不能には至らず追撃を行おうとするも、それによって失った時間は影にとって致命的であった。
「悪いな、ここから先は通行止めだ。神子には……コハクには指一本触れさせないぜ!」
 世良 潤也が力を解放して炎を纏わせる剣を振るい、シャムシエルの影と斬り合う。
「なるほど、確かに強いが……本物のシャムシエルほどじゃないな!」
 何度かの交戦で相手の力量を見極めた潤也が攻撃の勢いを増す。最初は拮抗していた力関係が徐々に潤也へと傾いていき、ついに抗いきれなくなった影は仰け反るようにして大きく体勢を崩した。
「跡形もなく吹っ飛ばしてやる……爆ぜろっ!」
 潤也の握る剣に光が宿り、振るう斬撃に波動が生まれる。そして潤也が攻撃を行うと同時、後方からアリーチェ・ビブリオテカリオの波動をまとった光線が影へ撃ち込まれた。二つの波動は影の中でひとつに重なり、大きな爆発を引き起こす。
「お疲れさま、潤也」
 シャムシエルの影からコハクを守った潤也を、アリーチェの聖なる息吹が癒やした。

「皆さん、お願いします。どうかダークヴァルキリーを……ネフェルティティ様を救ってあげてください」
 十二星華【乙女座】ベアトリーチェ・アイブリンガーのもたらす加護が、ダークヴァルキリーと戦う仲間に施される。
「リコ、私は信じてるからね。リコが必ず、ネフェルティティに掛けられた呪いを断ち切るって。
 シャンバラ建国は私たちの夢、だけどネフェルティティを犠牲にした上での建国なんて、そんなの嫌。私はネフェルティティを助けたいしリコだってそう思ってるから……だから最後の一太刀はリコに預けるからね!」
 ベアトリーチェから加護を受けた小鳥遊 美羽リリア・リルバーンがダークヴァルキリーと近接戦を行い、ミューレリア・ラングウェイはパッフェルと合流し、光属性による攻撃で闇を弱めることで無力化を図る提案を行う。
「パッフェル! 皆の最強の一撃でヤツの『闇』を吹き飛ばすぜ!」
「わかった」
 パッフェルの星銃バスターショット、そしてミューレリアの星弓パビルサグに光が収束していく。だがその力を危険と感じ取ったダークヴァルキリーが強引に美羽とリリアを引き剥がし、闇弾を放って妨害を試みた。
『!!!!』
 着弾する闇弾が粉塵を巻き起こす。だが粉塵が舞い落ちた後に見えたのは、七色に輝く扇を展開してミューレリアとパッフェルを守ったベアトリーチェの姿だった。
「これが私に与えられた力……大切な人たちを守る乙女座の力です!」
「助かったぜ、ベアトリーチェ! ……よし、こっちは準備完了だ! いつでも行ける!」
「私も行けるわ」
 二人の発言を肯定するように、それぞれの武器が十分な光を蓄え、発動の時を待っていた。
「リリア、一緒にネフェルティティの動きを止めるよ!」
「はい!」
 美羽とリリアがダークヴァルキリーに挑む。ダークヴァルキリーはコハクの波動で十全な力を発揮できない上にこれまでの戦いで消耗しており、無理をしてかろうじて拮抗に持ち込んでいたがそれも限界が来て徐々に押し込まれていく。
「チッ!」
 支え切れずに退いたダークヴァルキリーは肩で息をし、脚で立つことができずに地面に膝をついていた。しかし、二人を見つめる視線は憎悪に満ち、未だ呪いによる暴力の支配は続いていた。
「今だよ、合わせて!」
 美羽とリリアが同時に聖なる光輪を放ち、ダークヴァルキリーを二重に拘束する。身動きの取れなくなったダークヴァルキリーをパッフェルとミューレリアが照準に収めた。

「ネフェルティティ! 私達はお前だって救ってみせるぜ! 物語はハッピーエンドのほうが絶対良いからな!」
 アムリアナ女王とネフェルティティ、両方を救いたい、そして友達になりたいという想いを込めた全力全開の一撃が光の不死鳥となってダークヴァルキリーを突き抜ける。

「女王様だけで全てを解決できるなら、国なんていらないのです! 国民の皆で協力し合って、女王様を支えて、そうしてようやく問題が解決できるのです!
 女王様だけが頑張っても、貴女だけが頑張ってもダメなのです。皆でシャンバラを建国して、皆で協力していくんです!」
 リリア、そして美羽が理子の持つスレイブオブフォーチュンとほぼ同じ形の刀に想いを込め、地面を蹴って飛び上がる。

「だから、そのためにも!
 貴女を救って友達になってみせるです!」

『ギャアアアアアアァァァァァァ!!!』

 一斉攻撃を浴びたダークヴァルキリーが絶叫をあげ、地面に伏せた。一瞬、最悪の事態が想定されかけたがダークヴァルキリーの指がピクリ、と動いたのと、直後にアリーチェが聖なる息吹で包み込んだことで場の雰囲気は弛緩する。
「あたしの目の前で誰一人死なせたりしないわよ。ネフェルティティ、もちろんあんたもね」


「…………」
「起きられますか? どうぞ、手を」
 目を覚ましたダークヴァルキリーへ、月見里 迦耶が微笑みながらそっと手を差し出す。まだダークヴァルキリーが呪いの影響を残していれば危険な行為ではあったが、迦耶は自分に付き従っている護堂 月光の「既ニ戦意ハ失ワレテイル」という言葉を信じて近づき、介抱を試みた。
「……いや、結構だ」
 ダークヴァルキリーはその手を拒絶こそするものの、丁重さを感じさせる仕草を見せて身を起こした。
「ネフェルティティさんに、見てほしいものがあります」
 そう告げた迦耶に続いて、太神 吼牙が腕に装着したコンピューターを操作する。映像が宙に浮かび、その先には赤ん坊を抱いた王大鋸の姿があった。
『チッ、なんで俺様がこんなことしなくちゃいけねぇんだ。俺様はてめぇらを案内しただけだぞ』
『そんなこと言わないで、赤ちゃんの育て親は多ければ多いほど楽しいじゃない。
 ほら朝陽ちゃん、あなたのお母さんよ、見える?』
 ふてくされた表情の大鋸に抱かれる朝陽と呼ばれた赤ちゃんこそ、ダークヴァルキリー――ネフェルティティと契約を結んだパートナーであった。その名付け親であるジェニファ・モルガンはネフェルティティが戦いの途中で傷つき倒れることで朝陽に影響が出ることを案じ、朝陽が収容……もとい、保育されているシャンバラ刑務所まで足を運んだのだった。マーク・モルガンが腕に装着したコンピューターを操作し、吼牙とのビデオ通話を繋ぐことでこの会話が成立することとなった。
「性懲りもなく……私とこの者とは隔絶状態にあると言ったではないか」
「たとえそうだとしても、ネフェルティティさんにとって朝陽さんは大切なパートナーで、家族。わたしはそう思います」
 迦耶がその言葉と共に、ネフェルティティへ花束を差し出す。紫陽花の花言葉は『家族』。
「…………」
 受け取ったダークヴァルキリーはその花をただ、じっと見つめていた――。

「私はアムリアナ女王……姉さんの甘さこそが、国に内乱を引き起こし滅亡へと導いたと思っている。
 あの時姉さんが為すべきことを為していれば、滅亡はなかった! 私を含む反乱者を殺してさえいれば――」
「あー、ジークリンデにそれは無理ね。ましてや血を分けた妹を自ら手にかけるなんて」
 理子がうんうん、と頷きながらダークヴァルキリー――ネフェルティティの元へ歩み寄る。
「国のためには非情になる必要があるのは、あたしにだってなんとなくだけどわかる。でもアムリアナ……ジークリンデは最後まで、妹さんとの絆を信じたんじゃないかな」
「…………」
 ネフェルティティの沈黙は、肯定の表れ。国の長としての立場より姉妹の絆を優先したアムリアナと、あくまで国の長としての立場を求め続けたネフェルティティ、その正しさも間違いも一様に決められるものではない。
「国が滅んだのは間違いだけどさ。じゃあ、またやり直せばいいじゃない。今は二人だけじゃないんだからさ」
「皆さんがネフェルティティさんを支えてくれます。全部を一人で解決するのは大変ですから、皆でやりましょう」
「…………今はまだ、それを支持することはできない。
 だが…………少しだけ、待ってみてもいいだろう」
 妥協ではあるが言葉を引き出すことに成功したことで、場の空気が弛緩したものになっていく。
「ですが、妹様の呪いはまだ完全には解けていないのではありませんか?」
 しかしティセラのこの言葉で、再び場に緊張が走った。今は落ち着きを取り戻しているように見えるが、再び呪いはネフェルティティをダークヴァルキリーへと変えてしまうだろう。
「それじゃ、私の出番ってわけね」
 理子がスレイブオブフォーチュンを抜き、構える。
「斬るべきものは見出だせたか?」
「ええ、みんなのおかげでね。斬るべきものは『呪い』。斬り捨てていけないものは『絆』」
 理子とネフェルティティ、二人の視線が重なり――フッ、とネフェルティティがわずかに笑みを浮かべた。
「あなたが2500年前に姉さんのパートナーであったなら、迷わず私を斬ってくれただろうな」
「どうかしら? 悩んで迷って……できなかったかもしれない。
 でも、今なら迷わずあなたを斬るわ。そんな機会はないと思うけど、ジークリンデもね」
 それが『斬姫刀スレイブオブフォーチュン』に認められた者の務めだと言うような理子の態度に、ネフェルティティは微笑みを大きくして、そして顎を上げた。その姿はまるで、2500年越しの処刑を待つような仕草だった。
「落ち着いたら、朝陽さんに会ってほしいです。
 一緒に怒って、ダークヴァルキリーさんの心に寄り添って、契約してくださった朝陽さんの為にも」
「……わかった、約束しよう」
 迦耶の言葉に応じて。
 ――直後、理子の振るったスレイブオブフォーチュンがネフェルティティの『呪い』を断ち切った。
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