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建国の絆 第6回

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建国の絆 第6回
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 女王復活の儀式を成功させる/7
 
 
「来たっ!」
 アーデルハイト・ワルプルギスが顔を上げた。
「女王に集中せよ、神子達!
 国家神規模の力をここに凝縮する! 力を器に導くのじゃ!」
 アーデルハイトの脳裏に一瞬、この場に妃神子がいれば迷わず導けてやれたろうとの思いが浮かんだが、この場にいる神子達は充分その責務を果たしてくれるだろう。
 陣の紋様の光が増し、神子達の想いが一層高められる。



 さあ、再び



 陣から光と力が迸った。
 噴き上がった、巨大な光の柱が天に向かう。
 それらはふわりと広かるような、またはすうっと治まるような不思議な感覚と共に、陣の中央に収まって行った。



 わたしの美しく、いとおしいこの国を、今度こそ



 起き上がろうと動く壬生 杏樹がまだ動いているのを見て、とどめを刺そうと走ったシャムシエルは、

ボッ

という衝撃と反動で後方に仰け反った。
「——ようやく射線が通ったし」
 過接近を避けて対像ライフルの射程ぎりぎりのところから、シレーネ・アーカムハイトがその一撃を、スナイプで狙って撃ったのだった。
 シャムシエルを貫いた銃弾が、向こう側の観客席壁にめり込んで罅入る。
「…………」
 シャムシエルはゆらりと揺れ、風穴の空いた腹部にゆっくりと触れた。
 すうっ、と目を細め、冷たい表情でシレーネ達を見やった。
「……キミら、もう、許さないよ」
 低く、感情の切れた声。
 腹に向こう側が見えるほどの穴が空いて、どうして立っていられるのかとぞっとする。
 シレーネはとどめを刺そうと再び銃口を向けたが、シャムシエルの影が大挙して押し寄せた。
 それに素早く反応した、アルベルトとルキウスが応戦する。
 ブリジットが、シャムシエルの懐に潜り込もうとした。
 シャムシエルはびくりとも動かないまま、冷たい眼差しでその様子を眺める。
 そのシャムシエルの前にも影が立ち塞がって盾となり、間合いを詰められブリジットは後退した。

「……こいつら、殺すよ。まだ、動ける。殺してから」
 シャムシエルは、半眼でシレーネ達を見据えたままブツブツと呟き、すぐにぎりっと奥歯を噛んで、それからふふっと笑った。
「——まあいいや。
 女王は復活しちゃったみたいだけど、まだチャンスはあるからさ」
 ふわ、とシャムシエルの身体が宙に浮いた。
「逃がすわけないし!」
 シレーネが発砲したが、なぜか外れた。
「次は殺すよ」
 シャムシエルはシレーネに冷たい一瞥を投げると、スッと消えた。


◇ ◇ ◇



 コントロールを失ったシャムシエルの影達が、ただぼんやりと立っている。
 アーデルハイトの指示でそれらが一ヶ所に集められ、まとめて魔法で焼却された。

 警戒していた伏兵の心配もなさそうだ、と判断して、邑垣 舞花花はようやく一呼吸ついた。
(……おめでとうございます)
 影野 陽太は心の中で環菜に祝う。
 校長の仕事はまだ続く。心の中でだけそう言って、護衛の仕事を続けるつもりだ。
 ふと環菜が振り返った。
「ありがとう」
「えっ」
「皆にも」
「あ……、いえ、当然のことなので」
「ようやく、始まることができる」
「はい」
 環菜はそう言うと、毅然と女王に歩いて行く。美しいなと、その姿を見て陽太は思った。


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