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建国の絆 第6回

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建国の絆 第6回
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 女王復活の儀式を成功させる/6
 
 
 観客席の最後列、オーロラビジョンの真下にシャムシエルはいた。
「よく見つけたね」
「見つけてみれば、何つう目立つところに、て感じだよ」
 アキラ・セイルーンは、空からの探索に使ったヒポグリフから降りる。
 アキラの背後では、剣の花嫁であるセレスティア・レインが、シャムシエルの能力を警戒していた。
「いい加減、影じゃ時間が掛かりすぎてるから、そろそろボクが自分で行こうかと思ってたところだよ。
 なので邪魔だからどいてくんないかな」
「シャムっちゃん、目的何なの?
 アスコルド大帝は建国まで不干渉を確約してくれたし、シャムっちゃんもシャンバラ女王になりたいの?」
 アキラの問いに、シャムシエルは笑い出した。
「そんなこと、何でわざわざ教えてやんなきゃなんないのさ!
 ま、お察しってやつだよ!」
 簡単に教えてくれるとは思っていなかったが、引っかかるものもアキラは感じる。
 つまりアスコルドの「不干渉」は方便だったということか?
 だが、確かにエリュシオン帝国そのものは攻めてくる気配はない。シャムシエルは別の命令系統で動いているのだろう。
 そしてシャムシエルが女王になりたいというのは違うようだが、何らかの目的があるのは間違いない、とアキラは見る。
「なんかこー、深いわけがあるならさ、持ち帰って校長とかに対応相談してくれるように頼んでみるけど」
 ルシェイメア・フローズンが、護封壁を展開した。
 シャムシエルに対してではなく、下方からの攻撃を防いで止める。
 弾かれた銃弾が、観客席の一部を破壊した。試作型対像ライフルである。
「ふざけたこと言ってんなし」
 角度的にアキラ達を巻き込むことになるのも構わず、彼等ごとシャムシエルを攻撃したのはシレーネ・アーカムハイトだった。
「説得とかそういう段階は、とっくに過ぎてるっつーの」
「ばっか俺は説得とかじゃなくてなあ!」
 言いかけたアキラは、シャムシエルの攻撃に気付いて慌てて飛び退く。
「いいね!
 ごちゃごちゃうるさいのは飽きてたところだよ!」
 シャムシエルは、アキラに影をけしかけると観客席を下りて行く。
「こら待て!」
 アキラはシャムシエルに叫ぶが、影が邪魔だ。
 光条兵器のハリセンを正義の鉄槌で巨大化させると、それをシャムシエルの影に叩きつけた。
「喰らえ、正義のツッコミ!」
 シャムシエルの影は、ハリセンを喰らって体勢を崩す。
 またセレスティアは、周囲の別の影達を牽制する為に剣の結界を展開した。
 ルシェイメアもアキラを援護する。
「シャムシエルは!?」
 待機から動いたということは、神子や校長を狙いに行ったということだ。
 アキラの問いにルシェイメアは首を横に振った。
「見失ったが、奴等が何とかしよう」
 その言葉にアキラはシレーネ達を思い出す。
「そうだな」と言うと、とにかく目の前の影にとどめを刺した。


 初撃を防がれ、やはり確実な場所まで近付くべきだったかとシレーネは思ったが、対像ライフルは近すぎると返って射程が取れない。
「また邪魔が入ったけど、今度こそアーシがぶち殺してやるし」
 シレーネは、シャムシエルのこれまでの言動に許し難いものを抱いて殺気立っていた。
「これ以上好きにはさせられませんしね」
 アルベルト・クラスウェルズは三羽のマシンレイヴンを展開し、ルキウス・アルジェントも聖剣エクスカリバーを構えて、阻もうとするシャムシエルの影達を対処する。
 ブリジット・シャッテンは、シレーネの怒りの理由を知ると、
「シレーネのスイッチが入ることをしでかしたわね」
と納得した。
「まあ、止める要素もないわよね。ロクなことしそうにない人だわ」
と付き合うことにする。
 シレーネの攻撃は当たれば大きいが、万一外した時の伏兵となるべく、シャムシエルの本体を狙って行くことにする。
 どちらかの攻撃が当たればいい。


「それで何をすればいいんだっけ、あのシャム何とかっての倒していけばいいの?」
「然様。
 妾は関わりの薄いことであるが、知人が成すべきことの、せめて介添人で居ようとな。
 何人も邪魔はさせぬよ」
 高橋 凛音が、仁 小龍の問いに答えた。
 シレーネの目的を果たす為に協力する、高橋 蕃茄壬生 杏樹達を支援する、それが凛音の目的である。
「凛姉の言うことは難しいな……」
 小龍はむむむと顔をしかめた。
(でも、凛姉を守ることがオイラの役目なら、それ守るのが漢だもんな)
 そう心の内で納得して顔を上げた。
「よく解らないけど、あの変なピンクの髪の姉ちゃん守ればいいんだよね、凛姉?」
 シレーネを指差す小龍に、細かいことには突っ込まずに凛音は頷いた。
 とりあえず本人の耳には届いていないようである。
「その通りじゃ、頼んだぞ」
 小龍は、静寂のカツガと古浪を二刀の構えで持ち、龍鱗甲鎧で防御を固めた。
 治療と支援担当として、小型飛空艇ボルケーノで上空から状況確認をする凛音の近くを空賊王のブーツで走る。
 シャムシエルを追うシレーネに影が邪魔をするなら、小龍はすかさず走り寄って奇襲し、アルベルト達と連携しつつそれらを倒していった。


 シャムシエルが気に入らない。
 蕃茄がこの場に駆けつけたのはその一言に尽きるが、シャムシエルを仕留めるのはシレーネに任せて援護に回る。
 仕留めたい者がいるなら任せればいい。
 自分はシャムシエルが報いを受ければそれで構わない。
 その為の道を作るのが、自分達の担当だ。
「空から攻めてこないということは、こちらが上を取れるということですね」
「的になりやすいということでもあるがな」
「有利な点を優先することにしましょう」
 蕃茄は巨大カブトムシ・コナラに騎乗し、上空から指示を出して、三羽のマシンレイヴンや名状しがたき獣・ニンゲンに攻撃させた。
 シャムシエルの影に噛み付き、そのまま上空まで咥えて落とさせてみたが、息絶えていない限りは体勢を整えて着地するので、やはり直接攻撃に切り替えた。
 モルダ・エレスチャルも同様に、方天戟を手に、屍飛竜ミカゲで上空からシャムシエルの影を駆逐した。
「低く飛べ、ミカゲ」
 蕃茄の露払いをする為に、屍飛竜にそう指示を出す。
 シャムシエルの影は空は飛ばなかったが、射程のある剣の結界を展開して反撃した。
 光属性の攻撃に、ミカゲがダメージを負う。
 しかし、モルダは構わず突っ込んで薙ぎ払った。
 倒れて土塊となるシャムシエルの影を、冷たく見下ろす。
「私自身が何かをされたわけではないがな。
 お前は気に入らないよ」


 剣の花嫁を使い捨てるシャムシエルの行為を許せないからこそ、自分は冷静でいなくてはならない。
 怒りを鎮める必要はないが、それで我を忘れてはならない。
 杏樹は、マインドリセットで気持ちを切り替えた。
「ここで決着をつけるわ。ローズさん、影はお願い」
「はい。ここで決着をつけましょう」
 自らも剣の花嫁であるローズマダー・ブライトにとっても、シャムシエルの件は看過できないことである。
 ローズマダーは、紅双剣アンタレスに魔力を集中し、雷の力を宿すと、シャムシエルの影に轟雷閃の一撃を放った。

 シャムシエル本体は、一度確認してしまえばほぼ見逃さない。
 シャムシエルは影を周囲に集めて紛れようとするが、本体だけが、特徴的な剣を持っているからだ。
 杏樹は一角獣・白雪に騎乗し、機巧弓アルテミシアによるロングレンジショットでシャムシエル本体を狙う。
 本人にダメージを与える為というよりは、逃げ場を塞いで足を止められればという狙いだった。
 装備した月夜の篭手で一度に4本の矢を放ち、シャムシエルの動きを抑えようとする。
 シャムシエルは影をどんどん投入させて、盾にしたり障害物にしたりと阻んだが、そのことごとくをアルベルトや蕃茄や凛音、ローズマダー達が仕留めて行く。

 足元に矢が突き立ち、シャムシエルは突然身を翻すとそのまま杏樹に特攻した。
「キミ、いい加減うっとうしいよ!」
 シャムシエルの構えた星剣がばらりと割れて、刃が数珠繋ぎになった鞭のような形態になる。
 手綱を引いたが、シャムシエルは一瞬とも思える速さで杏樹の下の死角を取った。
(早いっ!)
「杏樹さんっ!」
 ローズマダーが叫ぶも、間に合わない。
 下方から、伸びるような一撃を喰らい、その強烈さに、杏樹はそのまま一角獣を落馬した。
「くっ……」
 起き上がろうと動く杏樹がまだ動いているのを見て、とどめを刺そうと走ったシャムシエルは、一瞬動きを止めた。
 
 
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