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建国の絆 第6回

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建国の絆 第6回
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 女王復活の儀式を成功させる/5
 
 
 みんなが護ってくれるからきっと大丈夫。
 と言いつつ念の為、メビウス・アウラニイスは肉壁もとい猫帝 招来の舎弟達に、ブレイブハートで檄を飛ばして防御力を上げてから儀式に臨んだ。
 神子の波動を女王に送りながら、くもりなきまなこで、祈る。
(女王様復活の為、
 パラミタ、世界中のみんな、それからついでにアワビの神様ル・リエーちゃんとアバローニーも、
 私達に力を貸してください!)


(みんなに背中を預けて、ボクはボクのできることをするんだ!)
 普段はギャルのロザンナ・神宮寺だが、今は心が静まっている。
 元気な自分と不思議に落ち着いた自分が同時に存在している気分だ。
 神子の波動を放ちながら、ロザンナはジークリンデを見つめ、シャンバラの未来に思いを馳せた。
(詩穂ちゃんと契約してから出会って来た人達……。
 シャンバラ女王復活の悲願とか、種族とか地球人とか、……元・鏖殺寺院だからとか。
 心から壁を取り払い、これからは新しい時代が来るんだ。
 だからボクは認める、受け入れる……)
『シャンバラの加護』と『闇女王の加護』を両手に抱く。
(ふたつはひとつの中にある。ボクの中に。ボクは全てを受け入れる)
 鏖殺寺院の祖、ジェルジンスキーの最後を受け入れた覚悟、闇龍の存在、ダークヴァルキリーの解放、そして同じ悲願の為に拳を交えた十二星華達。
 想いは心の底から更に深くへ浸透していくような気がする。



 戻りましょう。戻りたいの。

 己と向き合い、己に手を差し伸べる。

 みんなが、やりなおすことを許してくれる。
 今度こそわたしは、両方を求め、両方を手に入れてみせる。

 それがどんな苦難だとしても。


「有象無象の四天王どもとは一線を画する我の選ばれし舎弟どもよ!
 お前達に、女王復活の瞬間に立ち会う栄誉を与えてやるのだよ!
 若干トラブルがあるがしかと乗り越え、その瞬間を見逃さないのだよ!」
 招来の姿が、禍々しい鮑神の闘気を纏っている。
 D級四天王である招来は、メビウスが肉壁と呼び間違えた舎弟20人をを唆し、彼等を女王や神子を護る人手に回した。
 勿論自らも護りにつく。
 妖気が鳳凰の炎を纏う。
 招来の怒りの拳が、シャムシエルの影達を次々吹っ飛ばした。
「というか、我の可愛いメビウスのお披露目会を襲うとは許せんのだよ!
 死ねぇ——!!」


 自分はシャンバラ王国の一人として、シャンバラ女王復活の為に力を尽くす。
 騎沙良 詩穂は、自身の後ろには一切の攻撃を通さないという強い意志を原動力にし、アーニャ・エルメルト佐伯 まおと共に、女王や神子達の儀式の陣の守護を固めた。
 アーニャはディテクトエビルの反応を感じてシャムシエルの襲来を察知するも、八方からなだれ込むシャムシエルの影とその人数に
「ここまでとは」
と漏らしたが、「絆を壊す」と言い放ったシャムシエルに対して強い反発を覚えた。
「ここは見事な連携で、建国に向けての絆を見せてあげましょう。
 それが、守護ることが至高にて最高の種族である、守護天使であるわたくしの使命ですから!」
「火つけちゃったね」
 詩穂は苦笑するしかない。

 また、マ・メール・ロアのクローン技術を見ていたアーニャは、敵が類似の物量作戦で来る可能性も考えていた。
「あのシャムシエル達は、クローンでしょうか?」
「そうなのかな? そういう感じでもないみたいだけど。
 持ってる武器は光条兵器っぽいね」
 切る切らないを任意で分ける剣の花嫁の能力に対し、盾を挟むことは有効だろう。
 給仕の家系の誇りを以って、詩穂は攻撃手段を捨てて鉄の重盾を持った。
 守り抜く決意のひとつでもある。
 アラウンドガードで敵の攻撃を引き付けて防御しつつ、相手の体制を崩す。
 タイミングが合えば、相手の勢いを利用してカウンターで反撃したり、近くの仲間が範囲攻撃を放つ間合いに押し出したりした。
 まおはひたすら剣戟を飛ばして攻撃して行き、アーニャは襲撃者を迎撃する仲間達を支援して、陽動射撃で弾丸をばら撒いて行く。
 影はまとめてシャムシエルが操っているものらしいが、ある程度の自律系統を持っているのだろう、陽動、と気付かれそうになったところでアーニャは経絡撃ちで急所を狙った。
 シャムシエルの影は、躱そうとしたが被弾し、体勢を崩す。
 そこに大きな隙が出来た。
 招来が、ニンジャのような素早い身のこなしで迫る。
「くたばるのだよ、この罰当たりめが!」
 シャムシエルの影を、招来は凶悪な形の鎌を模った気で叩き斬った。
「フッ、他愛ない!
 下準備ご苦労なのだよ!」
「あ、ああ〜ソウデスネ」
 尊大な態度で礼を言う招来に、アーニャは生返事を返す。
 とはいえ、影の数はまだまだ多く、最初の投入数が多かったせいで、一見した限りではまるで減っているように見えない。
 無傷で凌ぎきれるものでもなかった。


 板谷 辰太郎木寺 アリスを伴い、負傷者を見つけて治療を施して回っていた。
 この混戦の中で、負傷者から負傷者へ渡り歩くのは大変だったが、可能な限り味方の行動予測をして早めに動くことを心がける。
「荒事はあまりやりたくないからね、治療方面でのサポートメインということで。
 ああ、魔女さんが動いてくれることには全く期待していないから」
「わかってるじゃない」
 辰太郎の言葉に、アリスはそう言って笑った。
 契約者ではあるが、二人の立場は敵味方である。
 契約しているから見逃しているだけで、そうでなければアリスは辰太郎を討伐している。
 邪魔をしないでくれるだけでも有難いのだ。
「従者くんはよく解ってるね〜♪
 じゃあ、のんびり見学させてもらうよ」
「はいはい、わかってるよ」
(んっふっふ♪
 従者くんてば相変わらず半端だねぇ。
 他人から白い目で見られるのが嫌なくせに、承認欲求はまるでないんだから。
 ま、せいぜい足掻きなさいな。
 私はいつも通り、こうしてニヤニヤ見守っているだけだからさ♪)

 そのような訳でアリスは手伝わない。
 奔走する辰太郎は、じわじわと負傷を重ねる詩穂達を見つけて駆け寄り、救急セットを広げた。
「すぐ治療するよ。
 俺から見たら鬼のような強さだけど、やっぱり無傷ってわけにはいかないよねぇ」
「ありがと、おじちゃん!」
「おっ……?」
 治療を受けると、詩穂は再び立ち上がる。
 影の残り人数は問題ではない。儀式が終わるまでもたせればいいのだ。



 防衛ラインの隙をつき、陣の中に駆け込んだシャムシエルの影の動きが鈍った。
 そこを金鋭鋒が投擲した剣に貫かれ、動きを止めたところに、駆けつけたハロン・リグラッドがとどめを刺して、陣外に弾き飛ばす。
「この先は立入禁止よ!」
 シャムシエルの影は倒れ、ぼろりと崩れて土塊のようなものになった。
「こらぁ、持ち場を離れるなですぅ!」
「どの口が?」
 叱り飛ばしたエリザベートに環菜が突っ込んだが、鋭鋒は素直に「すまなかった」と言い、白波 理沙に「すまないが剣を拾って貰えないか」と頼む。
 理沙は慌てて崩れて土塊に走り寄り、剣を拾って鋭鋒に渡した。

 シャムシエルにとっては校長達は、邪魔だが必ず倒さなくてはならない相手ではない。だが、必ず倒さなくてはならない相手ではないが、非常に邪魔な存在ではある。
 シャムシエルは、陣を見下ろして顔を顰めた。
「あの清浄の結界、気持ち悪いな。行けないことはないけど。
 校長達邪魔だなぁ」


「攻撃は最大の防御、でしたわね」
 そう言って、エリシア・ボックは前衛でシャムシエルの影を迎え撃つ。
 空賊王のブーツを履いたエリシアは、三次元を駆けてシャムシエルの影に肉薄し、妖刀村雨丸で斬り付けた。
(空を飛ぶ相手はいないようですわね)
 その方が女王に攻めるには易いに違いないが、影達を操るのが難しくなるのだろうか、皆地上から攻めて来る。
 いずれにしろエリシアの実力であれば、油断さえしなければこのまま行けそうだ。

「敵をガンガン殴っていけばいいんだよね?」
 ハロンも同様に、白銀の衣を装備してシャムシエルの影に突貫して行き、武人の闘気を叩き込んで行く。
 流石に一撃で倒すことはできなかったが、対一であれば強敵という程の強さではない。
 ハロンは負傷することを気にせず、相手の動きを先読みしながら、とにかく攻撃して行った。

 影野 陽太は陣になるべく近い場所で、DDM- 23と共に、環菜の壁になるように立っている。
 環菜はそれらを確認し、次いで足元を見た。
 ぼんやりした光を帯びる陣の紋は、問題なく結界が発動されていることを意味している。
 最後に陣の中、女王を見た。
 未だ、女王に変化の兆しは現れない。
(まだもう少し時間が掛かりそうね)

 個々の強さならシャムシエルの影を圧倒するエリシアだったが、数で圧倒されていて無傷とはいかない。
 ノーン・スカイフラワーがエリシアやハロンを回復させる。
 また空花 凛菜は舞花の指示により、伏兵がいる可能性を考えて、司書の眼鏡やHCグラスを使って索敵していた。
 最も、シャムシエルの影がHCグラスのサーモグラフィーに反応していない。
 肉眼で見えているので全く問題はなかったが。

「……異常ヲ感知シマス」
 危険ではなく異常。
 警戒を弱めないDDM−23は、周囲の敵が減っていると感じ取った。
 勿論、シャムシエルの影は今のところ、最終防衛ラインを突破できずに倒されて行っている。
 それとは別に、環菜を襲撃して来るシャムシエルの影が少ない。
 舞花もそれを感じ取っていた。
(環菜校長がシャムシエルの標的から外れた、ということでしょうか)


「すっごい。
 一人だけ厳重に守られてるね、あの“お姫様”
 やっぱお金の力?」
 影からの視点ではなく自身の目で、環菜の鉄壁の護衛を見やって、シャムシエル本人がくすくすと笑った。
「ああいうの、あえてブチ壊しに行くの楽しそうだけど」
 主なる目的は校長ではなく女王と神子なのだから、わざわざ壁が厚いところを攻める必要はない、そう冷静に判断すると、シャムシエルは影を別方向から女王に向かわせる。
 校長達は倒せれば倒したいが、全員でなくていい。
「それに」
と呟いて振り向いた。
「あーあ、見つかっちゃった」
 そこにはアキラ・セイルーンが立っていた。
 
 
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