この黒く覆われた空の下で
上空を川のようにうねりながら、無数の闇が飛び交っている。
ひとつひとつは小さく大した力もないが、数の暴力というものは強大だ。
なにしろ、どこに現れても不思議ではないということであり――
(こういう世が乱れた時は、不安な老人とかは先祖に会いにお墓に行きそうだな)
人のあまり近寄らない場所であっても、
龍造寺 八玖斗のように警戒の目を光らせなければならないということであるからだ。
案の定足をくじいた老人に治癒術を施し、襲い来る闇を光術で払う。
そして八玖斗は老人と共に、一刻も早くこの異変が収束することを祈るのであった。
――いっぽう、地球は日本、東京の神田にある麹屋。
吉井真理子の実家に、
ルルー・リッセンと
アルマンディン・ガーネットはやってきていた。
なぜならば……。
「ゲルバッキーはこちらにいませんの!?」
「えっ!? どうして?
あのヤバ犬がここにいることになるの!?」
「反シャンバラの機運がネットて高まっている今、あの犬っころが何をしでかすか気が気ではありませんの!」
目をギラギラさせているルルーに、真理子は若干引き気味だ。
その隣にいるアルマンディンはこの騒動になにやらトラウマを刺激されたらしく気落ちした様子であった。
「吉井さんも『いいね』とか『シェア』は気をつけてやった方がいいぞ……『りてらしー』なのだ……。
吾輩もルルーの契約相手募集の書き込みに間違えて『いいね』しちゃったせいで、契約するハメになってしまったのだ……」
「それはその……なんか、ご愁傷様……」
それはさておき、ゲルバッキーの居場所である。
とりあえず目のつく場所にはいないようだが。
「んんー、言われてみると妙な気配がしてる気も
するのよね……」
真理子が周囲ににらみを利かせると、どこからともなく声がした。
(いま、シャンバラが建国する重要な場面だぞ!
お前の相手なんてしてられるわけがなかろう……ぎゃーっ!?)
――プシュッー!!
吉井さんが怪しい所に除菌スプレーをかけると、
ゲルバッキーは悲鳴を上げた。
そして、空京。
ろくりんぴっくスタジアム周辺に詰め、警備していたミルザム・ツァンダの護衛を、
新星 魅流沙と
シエル・シャムシェラの二人が買って出ていた。
スタジアムの中ではシャムシエルやその影の襲撃が予測されているが、
彼女たちは闇龍のかけらにその戦いを邪魔されないように戦っているのである。
〇〇やってみます! の力によってミルザムの衣装を借りた魅流沙は、自然にミルザムを守るように立ち回っていた。
そしてシエルは、襲ってきた小さな闇に対して護国の聖域を発動し、二人を闇から守ろうと戦っている。
「ミルザム様、お下がりください!」
「ボクたちは好きにキミを守る――だからキミもやりたいようにやれ、ミルザム!」
「ありがとうございます……ではともに、この戦いの行く末を見守りましょう」
魅流沙は星杖槍剣ディップビッカーを振るい、小さな闇を会場に近づけさせない。
シエルもまた、群れた闇に対して嘘濤還襲斬星刀を振るい、ミルザムと会場を守り抜こうと戦う。
こうして、ミルザムは無事守られ
復活の儀式のその時には儀式に臨むこともできた。
女王復活の儀式はシャムシエル以外の茶々を入れられることはなかった。
しかし、その中で繰り広げられる戦いの行く末がどうなるか――いまだ知るものはいない。