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建国の絆 第6回

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建国の絆 第6回
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シャンバラ応援団黄金旗支部

 続くシャンバラの応援も、大勢によるコラボ動画が上がり始める。
 その中のひとつに、契約者たちが懸命に戦い、応援する様子がある。

 まず映されたのは、長月 由鶴楼野 ミゾレ養藤 祥花、そしてアイリス・シェフィールドによるパフォーマンスである。
 無数の闇が飛んではいるが、彼らはフレーム外で戦う仲間に守られていた。

「おす」
「フレー! フレー! シャ・ン・バ・ラ!
 勝つぞ―ッ! 押せ押せ!! ごーごー!」

 ミゾレが長ランに長い手袋と鉢巻と、いかにもなバンカラ衣装で応援に臨む。その後ろでは、アイリスが声を張って拳を突き出していた。
 彼女の刻む三・三・七拍子にあわせて、由鶴は両手のポンポンを振って踊り、祥花は風のフルートで軽快なメロディを奏でていく。
 そんな力強い三人のパフォーマンスを、ダヴィデ・ダウナーがしっかり撮影していた。
 彼はこれまでどのようにシャンバラ地方が発展を遂げてきたか、契約者の努力を交えて語りながら、画面の向こうに向かって呼びかける。

「俺たちは今、ろくりんぴっくスタジアムを守ってる。
 だが、守り切るにはお前たちの応援が必要だ!」

 そうダヴィデが言うと、コメントがわっと送られてくる。
 彼らの文字による声援を受けて、ミゾレとアイリスの応援の声や由鶴のチアダンス、祥花の演奏にもいっそうの力が入る。
 シャンバラの、そして世界中の人々の不安を吹き飛ばすべく繰り出される応援は、闇が襲い来る厳しい現状の中でも、頼もしく見えた。

 その時、上空からカブトムシ大の闇がわらわらと押し寄せてきた。
 だがそれに動じることなく、アイリスはシャンバラの加護を発動して受け止める。
 ダメージを受けながらも、ウルミを駆使してこれを切り刻んだ。 

「っ……すみません!」
「だらしないぞ従者!」

 イオンはアイリスに向けてウインドオブヒールを送りながら叱責する。

 ヒポグリフのヴァルトに乗って空を飛ぶ人見 三美イオン・ノートの二人は、自分たちの気づかぬところから現れた闇に歯噛みしつつも迫る闇にそれぞれの武器を構えた。
 御者の心得をもってヴァルトを操る三美は、あたかもパフォーマンスの一環かのように自在な動きで、イオンのディテクトエビルによって感知されつ方向へと手綱を駆っていく。
 そして闇の群れを視界にとらえたイオンは、ハーフムーンロッドを構えて神威の矢を撃ち放った。

「よしっ!」
「お見事です!」

 幾条もの光の筋に拡散した神威の矢は、無数の闇を無へ帰していく。
 続けて、あたりを取り囲む小さな闇の群れに対して、三美が炎と氷の聖霊を呼び出す。
 燃え盛る火炎と凍てついた吹雪がどこからともなく現れ、闇を取り巻いて吹き飛ばした。

「はっ!」

 続けて、正義の鉄槌。
 三美の振り下ろしたシャンバラ六法全書に応じて出現した巨大な本が、応援団に襲い掛かる闇を叩き潰した。

(応援団の皆さんが、これで集中できるといいのですが……)

 一方応援のほうは、いよいよパフォーマンスのクライマックスを迎えつつあった。
 ミゾレとアイリスの力強い掛け声にあわせて、祥花はくるりと華麗にジャンプを決める。

「秩序と平和のために!ここに生きる人々のためにっ!」
「おーっ!」

 その由鶴の声に合わせて、祥花が予め用意しておいた色水のバケツを水の術式で操り、噴水のように空中へと吹き上げた。
 更にそのバケツをミゾレが空中へ放り投げると――次の演者、泡瀬 鈴蘭の出番だ。

「みんなみたいに、特別なことができるわけじゃないけど――
 あたしも、シャンバラを応援したい気持ちは一緒だよ!」

 華やかな衣装に身を包んだ鈴蘭はその言葉通り、シャンバラを応援するために明るく元気な歌とダンスを画面の前で披露し始めた。
 確かに彼女は、これといって目を引くような特別なことをしているわけではなかった。
 だが気持ちを込めたパフォーマンスはしっかりと、画面の向こうからコメントの形でレスポンスされていたのだった。

「みんなーっ! ありがとー!」

 鈴蘭の笑顔とともに、フレームは美空 蒼を映し出す。
 カラフルな布を使ったお手製ポンポンを持ち、踊り子風のファッションに身を包んだ彼女は、飛んだり跳ねたりといったパフォーマンスで画面を一杯につかってアピールし始めた。

(頑張ってる女王さんや契約者の皆が活躍すれば、パラミタも地球も良くなるはず!
 だからわたしも――思いっきり踊るの!」

「が・ん・ば・れーーー!!」

 画面越しにぶつけられたそのひとことは、まっすぐに視聴者のひとりひとりに、その胸にしかと響いたのであった。

「俺たちも負けてられないな」
「はい」

 地上で応援団を守っていた春夏秋冬 日向月雲 朱里の二人もまた、そのエールに励まされていた。
 日向は瘴流拳によって闇の気配を察知しつつも、実際の索敵は朱里による万全の感知体制による部分が大きかった。

「【禁猟区】に……あちらから反応がありました。
 それと、金糸雀が別の方向からも闇の群れが近づいています」
「忙しいな!」

 日向は朱里のパワーブレスを受けつつ、キマクの砦盾と古浪を構える。
 そしてやってくる闇に向かって、砦盾から魔力の壁を発現させてその行く手を阻んだ。
 堰き止めた闇の群れを、次々と古波で撫で斬りにしていく日向。
 さらに別方向からやってくる闇に向かって朱里が光術を放つと、それに合わせて反応した日向が盾で闇の攻撃を防ぎ、押し切ってファランクスで反撃をかける。
 二人の息の合った連携は、応援団に襲い来る闇の群れをまったく寄せ付けず、イオンと三美とともに、見事に動画の収録と放送まで守り切った。

「それじゃあみんな、応援よろしくな!」

 そう言ったダヴィデは、シャンバラの国章の幻と『#シャンバラをすこれ』と書いた名刺を映して動画を締めくくった。

「そっちは大丈夫?」

 アイリスがパートナーとの絆を通じた通話で、入谷 香澄リーナ・スターに呼びかける。
 二人がいるのは遥か地上――海京だ。この動画を地上へも無事に届けるため、直接地球へ赴いていたのである。

「大丈夫。応援団のみんなの晴れ姿、私達がバズらせてやるんだから」

 リーナと香澄は受信したデータを、海京からネットに拡散しようとしている。
 しかし、闇龍の影響で小さな闇の群れが地球にも現れ、人々を襲っていた。

「守らなくては」
「そうね」

 リーナはバーストフライで飛行しながら、星のメイスを操って闇を退治していく。
 サンダーブラストであたり一帯の闇を払いつつも、討ち漏らした敵から攻撃を受けるリーナ。
 だが香澄によるキュアオールが自然治癒力を高めており、その傷もみるみるうちに直してしまうのだった。

「はっ!」

 さらに香澄のほうもやってくる闇に対して光術を放ち、風のフルートで風を起こして華麗に移動。
 そして近づいてくる敵をサンダーブラストで消し飛ばすと、携帯端末を高々と掲げてネットへ動画を公開した。
 こうして、地上とシャンバラ、二つの地点から同時にネットへ公開された動画は、みるみる再生数を伸ばして『#シャンバラをすこれ』のハッシュタグは一時トレンドランキングにその姿を現したのであった。

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