シャンバラへの偏見を吹き飛ばせ!
各地で巻き起こる反シャンバラの気運。
それを抑え込むべく、契約者たちも行動を起こすのだった。
「みなさん、こんにちは!
突然ですが――サムネとタイトルの通り、異常気象とパラミタの因果関係はまだ照明されていません!」
数多彩 茉由良が声を大にしてカメラの前で声高に超・重大発表! で宣言する。
動画サイトを始めとして展開され始めた、「シャンバラを応援しよう」という契約者たちの試みは、人々を少しずつだが動かしている。
インフルエンサーのスタイルを駆使して事前に集めた同接数は結構な数になっていた。
続けて
カラビンカ・ギーターが、
ベネディクティオ・アートマとともにスライドの前で解説を始めた。
「こちらをご覧くださいまし。
異常気象について言及した、シャンバラ研究のシステマティックレビューの結果ですわ」
「複数の研究で、因果関係を示す研究のエビデンスは弱いってことがわかるね」
さすがにすべてを調べ上げることはできなかったものの、スライドの説得力が視聴者たちにしっかりと訴求できている。
そして、二人は更に、あらじめ収録しておいた映像を電波に乗せて流し始めた。
画面に映し出されたのは、アーデルハイト・ワルプルギスの姿である。
「異常気象のことで映像出るとあとで炎上するんじゃがなあ……」
「そこを何とか! ばばんと箔をつけていただくだけでいいから!」
「……まあ、火あぶりとかはなれとるからな! よかろう!」
そしてしぶしぶながら、アーデルハイトはカメラの前で口を開いた。
「いいか、地球温暖化とか異常気象とか全部シャンバラのせいにするのはどうかと思うのじゃ!
地球はシャンバラが出現しようとしまいと大きく気候が変動してきたのが歴史じゃ。
2500年以上生きてきたワシが言うんだから、本当じゃって!」
そうしてアーデルハイトの話が交えられたところで、接続数が伸びてきた放送は徐々に炎上の気配を匂わせつつあった。
批判的なコメントが増えてきたところで、カラビンカと
ティスラス・サーガラがこれに対応し始めた。
「偶然であるという証拠を出せと仰るのですか……?
それはですね、『ないことを証明する』こと、つまり消極的事実の証明といいまして、不可能な――悪魔の証明であるといえます。
ニュースで言っていたからといって、それを正しいとうのみにするのは、いささか感情的であるかとわらわは考えますが」
「そうですわ。証拠をお出しなさい証拠を」
主張は裏付けに属すべきとする二人の意見はまったく論理的に十分妥当するものであった。
だが実際、視聴者はそんなに頭を使わない。動画サイトのコメントなどは、なおのこと脊髄反射だ。つまり二人の冷静な言は、火に油である。
そんな空気を和ませたのは、
ナイア・スタイレスのシャンバラの食レポ動画だ。
「これはすごいネ! いただきまーす!」
イルミンスール近辺と思しき森の中で、不思議な色の魚を食べているナイア。
見てくれは地球人もちょっと驚くような様子であったが、おいしそうに食べる様子にコメント欄は穏やかになっていくのだった。