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建国の絆 第6回

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建国の絆 第6回
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【先へ】

 サクラ・ウイングは、殺意のフラワシを携えて人の減った闇航船の甲板から降りている。
 身に付けた薔薇のマントの丈が長く、縁を握って持ち上げながら、サクラは一歩、また一歩先へと向かう。
 そのフラワシは、先日、闇航船を借りに行ったタシガン邸で、ウゲンから貰ったフラワシだった。
 フラワシを手にする過程で死にかけたけれど、フラワシを貸してもらえた嬉しさがサクラの中では強かった。
(いっぱい持ってるウゲンさんは、いっぱい死にかけたのかな……)
 司書の眼鏡をかけたツバサ・ウイングは、不安げな表情でそんなサクラとフラワシを見ている。
 ツバサはサクラから、フラワシを貸してもらったらしい、ということは聞いていた。
「……借りた物なら今度ちゃんと返しに行きましょうね」
 強く意識を保っていないと、フラワシの力で暴走して誰彼構わず攻撃してしまう恐れがある。
 それはさすがに危なげだと、普段は非戦闘員のツバサがサクラを助けに来たのだった。
 サクラはフラワシに意識を引っ張られないよう、薔薇のマントとリリーランジェリーの力で精神を強化しつつ、気をしっかりと持とうと意識している。
 そんなサクラの気を知ってか知らずか、フラワシはナラカ道人と戦っている味方の契約者たちに飛びかかろうとしている。
「あー、仲間を殴ろうとしないで~」
 使用人の統率で、フラワシに話しかけている。
 フラワシは落ち着かない様子であちらこちらを飛び回っている。
 サクラがフラワシに意識を集中できるよう、ツバサはサクラと自身の身を守ろうと敵の気配を瘴流拳で察知しようと警戒している。
 いざとなったら、サクラを殴って気絶させれば、フラワシも消えるはずーー。
 ツバサは内心ハラハラとしながらも、ナラカ道人の精神攻撃を受けないよう、心頭滅却で心を落ち着かせる。
 そんなサクラたちの前に、突如轟音と共にドージェが吹き飛ばされてきた。
 闇の渦のどこかから弾き出されたのだろうか。
(ドージェさん、傷だらけだ……そうだ、手当しよう。でも初対面だし、自分で行くのは恥ずかしいし……)
 サクラはフラワシを見た。
「ほら見てドージェさんだよ、大きいねー。今まで闇龍と一人で戦ってくれたんだって。これ持って手当てに向かってくれる?」
 サクラがそう言った瞬間、フラワシが飛び出した。
 暴走し、一直線にドージェに飛びかかるーー!
 が、そのフラワシをドージェはむずと掴むと、そのまま握り潰した。
「!」
 慌ててツバサがサクラの元へ走った。
 フラワシが潰されると同時に!サクラは膝をつき、吐血する。
「だめ……大事な服が汚れちゃうーー」
 駆け寄り起こすツバサにサクラはそう言い残し、意識を失った。

* * *

「ドージェさん……初めて全力で戦えていることが嬉しいのだろうと思えます」
 闇航船から、ドージェの傍に寄って行く砂原 秋良の姿がある。
「だよな」
 アリヤ・ネムレスが秋良に賛同する。
「せっかくの総長の晴れ舞台なんだ、俺たちでその物語を彩ってみたいって思うよ」
 秋良はアリヤに頷いた。
「成し遂げたいことが目の前にあるなら、その力になりたいって思うんだ。私自身にも成し遂げたいことがあるから……だから私は貴女の剣になる」
 ルベウス・クレプスクルンは応えた。
「総長が行くところに行くんだよね? それがどこであろうとも、私は剣としてやり抜くよ」
 秋良はアリヤとルベウスとともに、ドージェのもとに向かう。
「個人的な感情になりますが、ドージェさんには勝ってほしいと思うんですよ。できれば、共に……独りではないのだと思ってほしいから。なんて、勝手に思ってるだけですけどね」
 秋良は、ドージェの傍に駆け寄ってくるマレーナを見た。
「マレーナさんはどう思っているのかわかりませんが、せっかくの晴れ舞台なんです。一緒にいきましょうよ」
「あそこまで総長のために色々やってるんだ、あれを愛って言わずになんて言うんだよ。まあ、俺が勝手に思ってるだけだけどな……だからさ、後悔しないように一緒に最後までいこうぜ?」
 秋良とアリヤはドージェのもとに駆け寄った。
「傷を治しても良いでしょうか?」
『ああ、頼む』
 ドージェが頷くのを確認すると、秋良はドージェの怪我をエアリアルヒールで治す。
「BGMを奏でてもいいか?」
『ーー好きにしろ』
 ドージェの応えを聞いたアリヤは頷くと、ひとつ咳払いをした。
 ジンに乗ったアリヤが、Aeternumを奏でながら勇気の唄を歌い始める。
 ドージェは再び身体を奮い起こすと、にやりと笑って闇の奥を見据えた。
 ナラカ道人が行手を阻むその先にーー闇龍の下着がある。
 秋良とアリヤと連携した護国の聖域を展開し、ドージェの盾となる。
「これは私がやりたいと思うこと…私だけの正義というやつなんでしょう」
 蒼空旅行記での正義の鉄槌で、ドージェの行手の道を開く。
「その花道に立ち塞がるものなしーーなんて、導き手らしく締められるようにやってやろうじゃないですか」
(道中でも決戦でも私はこの紅で道を拓くだけ)
 ルベウスは紅の刃を振るう。
(立ち塞がるすべてを斬り伏せてみせる)
「なにが相手であっても折れないよ、負けないよ。だってそれが私がすると決めたことだから」
 ルベウスは心の中で問いかける。
(ねえ、総長……貴方だってそうなんだよね? 今は届かないのかもしれないけれど……いつか貴方にだって届いてみせる)
 ルベウスは刃に轟雷閃の雷を纏わせ、光速撃で自分自身を光と為すようにナラカ道人に飛びかかって行った。
「だから、絶対勝つよ。それが私が花嫁としてやると決めたことなんだから!!」

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