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禍神伝 ~完結編~

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禍神伝 ~完結編~
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区民の避難誘導――仁科町付近にて2


「クソッ、まだ来るか」

 玄が鉄鼠を殴り倒したところでつぶやく。
 雨風は強まり、跳ねた泥が体を汚す。
 
「そこで待っていてください!」

 乙町が戈を振るうと同時に、避難途中の住民へ指示する。住民たちは物陰や軒下に逃げる。
 玄と乙町、黒剣の尽力でマカガミ自体は減ってきていたが、次は避難民が増えつつあった。
 そのため護衛に割く労力が多くなり、対マガカミ戦は防戦に傾き始めていた。
 
 そんな折、黄泉ヶ丘 蔵人たちが現場へ到着した。
 
「あっちで固まってるのが住人達か」

 妖幼の風向で霊力を探った黄泉ヶ丘は、道沿いの家屋の中や軒下に点々と霊力が留まっていること――住人たちが逃げ隠れていることを確認した。
 黄泉ヶ丘はまずはその住民たちをこの戦闘のさなかから救出し、落ち着いて治療できる場所に移動させようと考えた。
 
「少し走った先に路地がある。そこを曲がれば奥に広めの屋敷があるはずだ」

 視界は悪いが、土地艦でここらの区画を把握していた黄泉ヶ丘には死角となりえる場所の目星がついていた。
 共に救助の手助けに来たシジマ アキナ保智 ユリカにもルートを共有し、隠れている住民の元まで走る。
 
「少し走れるか? 行くぞ」

 黄泉ヶ丘が住人に手を差し伸べ、先頭になって屋敷を目指す。
 シジマは危険把握で一番重篤な住人に肩を貸し、支えながら走った。
 後方には保智が控え、迫りくるマガカミに対し風神の一閃を浴びせる。
 
「数が多い……! 長引いてても面倒だ。さっさと片付けるぜ!」
 
 黄泉ヶ丘たちを追いかけるマカガミの多さに、保智が路地の手前で立ち止まりそれらを向かい打つ。
 シジマらは保智に後ろを任せ、屋敷に急いだ。

 路地を曲がり狭い道を行けば、道沿いに立派な門構えが見えた。
 ここの住人も避難したのだろう、門扉は開いたままだった。
 黄泉ヶ丘は簡単に中を確認すると、ひとまず雨をしのげる物置小屋に住人たちを誘導する。
 
 アキナは住人が揃ったところで、気吹を行う。一番重症であったものには、合わせて栄気も行った。
 目の前で繰り広げられた戦闘、次々と現れるマガカミたちに疲弊と恐怖を抱いていた住人にはハートケアで落ち着かせる。
 
「一人でも多く、助けます」

 精神的には落ち着きつつも、この緊急事態に不安を拭いきれない住人にシジマは冷静に、優しく声をかける。
 そんな住人たちの様子を見ながら、黄泉ヶ丘も胸を撫でおろす。――が、すぐに空気が張りつめた。
 
(門の前にいるな……)

 住人の前に立ち妖幼の風向で付近を警戒していた黄泉ヶ丘は、門前に一つの霊力を感じていた。
 ゆっくりとこちらに向かってくる様は、おそらくマガカミ。招かざる客だ。
 
「我が闇の領域を侵させはせん。ここで止まって貰おうか」
 
 黄泉ヶ丘が走る。念符に氷牢の印を刻み、向かってきた鉄鼠の足元へ放った。
 パキン、と氷の張る音が響き鉄鼠の動きが止まる。しかし完全には止めきれない。無理やりもがき動き、ビキビキと氷が砕けていく。
 何としてもここの住人は守らなければと、聖域を展開し敵の攻撃を防御する。
 
 ギリギリと、互いが攻防する最中、黄泉ヶ丘はふっと聖域を解いた。
 これぞチャンスとばかりに鉄鼠が牙を剥く。その瞬間に、その口へと氷牢の印を跳ばした。
 バキバキと氷を砕き口を閉じる鉄鼠だが、氷が邪魔をし空を噛む。
 その間に黄泉ヶ丘は後ろへ飛び退き間合いを取る。その瞬間、鉄鼠は後方から風雷の一閃を受けてばらばらと砕け散ってしまった。

「間に合ったね」

 保智が打刀を振り払い、納刀する。黄泉ヶ丘は薄く笑って手を挙げた。
 攻防が続いた後、黄泉ヶ丘はこちらへ走りくる霊力を感じていた。それが保智だと確信した時、聖域を切ったのだ。
 彼女がこの鉄鼠を切り伏せると信じて。
 
 保智と黄泉ヶ丘がシジマと住人に合流し、周りにマカガミがいないことを確認する。
 そして彼らは住人を引き連れ、学苑へと避難したのだった。



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