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禍神伝 ~完結編~

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禍神伝 ~完結編~
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戦いの果てに2


「今こそ、宿儺の脚を潰す好機じゃ……!」
 禊の大鈴を取り付けた、神話の英雄が用いたとされる弓を手に、【帝都華撃団】の高橋 凛音は声を上げる。
 その周囲には複製された光の矢が浮かび、宿儺の膝裏を目掛け放たれていく。
「天照大御神よ……陽光を集いて……我に九厄を挫く為の光矢を賜らん……」
 凛音のパートナーたちも、彼女に合わせて攻撃を注ぐべく動く。
 気配と姿を隠していたアヤメ・アルモシュタラは彼女たちの反対側から宿儺の膝頭を狙ってに真っ赤なボルトアクション式霊子狙撃銃の銃口を向け、不参撃の逃げ気を見舞う。
 彼女が空走下駄で瓦礫を蹴ってその場を離れる合間に、目を赤く染まらせた忌ノ宮 刀華が宿儺の脚を駆け上がり、素早く篝火を抜き払って足の付け根に斬撃を与える。
「此方はデカイ相手と何度も戦ってるですよぅ~」
「腕の数でも、アタシの出番かねぇ……」
 四臂化で一対増やした腕に特殊な金属の腕輪から流した霊気を闘気に変え、ネーベル・ゼルトナーが間髪入れずに宿儺の巨体に迫った。
 装備の重量を霊子噴進靴で補いながらの踏み込みで、肥大化させた腕に霊力の炎を纏わせて舞うように殴りつけていった。
(殴るしか脳がねぇアタシがやるこたぁ……倒れるまで殴り続ける位さね……)
 彼女たちに他の隊士たちも続き、宿儺の足元は猛攻撃に晒される。
「おまえの明日を、泡のように溶かしてあげます」
 極めつけに、瑞稀が霊符に刻んで生み出した無数のシャボン玉が爆ぜ、宿儺の足の一部を爛れさせていく。
「そこですっ!」
 好機を見た愛須は、全体に霊力を通した地噛を振り被り、宿儺の下腿を大きく一閃した。
 脚部にダメージを受け続けた宿儺が、ついに膝を折る。
 追い打ちを掛けるように、真奈美は紫垣流の鉄砕の型で拳を硬化させ、弥恵が大きく傷つけていた宿儺の腕を打ち砕く。
 呼応するように、雨海が浄化の力を宿した雷を落とした。
 それによって消耗したのだろう、宿儺の上体が前傾してくる。
「大和さん、コロナさん! 手筈通りにです!」
 声を上げると同時に即座に駆け出した詩杏が、雷を纏わせた大鎌で宿儺の右頭部の目を斬り裂く。
 ほぼ同時に、大和コロナは左の頭部に向け駆け飛んでいた。
 蓬燕に纏わせた螺旋状の風を纏わせた蓬燕で、その右目を貫く。
 コロナは靴の霊力噴出で更に高度を上げ、額の目に黒時雨で斬りつけた。
『ガアァッ……!』
 その痛みに身を捩り、怒号のような声を上げてのたうつ宿儺。
 狙いも何もない、手当たり次第の体当たりのようなその衝撃を、魔滅の力を有する緋色の矛を打ち立ててフレデリカが打ち消す。
「デリカちゃんナイス!」
 シャーロットは一時笑って、すぐに真剣な表情に戻ると宿儺の肩に飛び乗り、その首に狂骨刀を突き立てた。
『オオオ……! オオォ……ォォ……』
 続いていた咆哮はやがて弱まり、尾を引いて途切れた。

 さらさらと、まるで豪奢な砂の城のように。
「宿儺が崩れていきます……!」
 早苗の言葉に頷いた楓が、朝凪を鞘に納める。
「よくやった……皆、よく戦った」
 九厄・宿儺は回復と増強を繰り返す難敵であった。
 長引く戦いはまさに死闘だったが、力を振り絞った隊士たちにより、今その身は潰えたのだ。
 巨体の名残りもなく消えていくその跡には、かつて立花 幹久と呼ばれた男の骸すらも、残ることはなかった。
 ただ屋敷の残骸と、激しい戦いの形跡があるだけ。
 その余韻と僅かな静寂の向こうには、勝ち取った扶桑の明日があった。
 
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