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禍神伝 ~完結編~

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禍神伝 ~完結編~
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制御装置を奪え2


 霊子兵器を止めるための、制御装置の奪取。
 その作戦の間、直接霊子兵器を相手取って戦う者たちもいた。
 装備と技で機動力を高めた立花 衣更は、制御権を奪うまでの時間稼ぎとばかりに霊子兵器を相手取る。
「時間を稼ぐのはいいが――別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」
「奇遇ですね、ぼくもそう思ってました」
 古井戸 綱七も同じ心づもりだったらしい。
「いや……動力にされてる筈の付喪神たちも助けたいしな!」
 本音は今の自分がどれくらい強くなれたのか試してみたい、という衣更。
 ひとまず戦う目標も同じだと視線を交わし、天狗の翼をはためかせた衣更は黒鋼糸を足場に跳躍し、三井流の型を駆使して霊子兵器に斬撃を浴びせていく。
「サンダーーッ!!」
 流石に泳げるような状態ではないが、豪雨にテンションが上がる綱七は霊子兵器の硬い防護膜に斬りつけ、霊子噴進靴で跳びながらその攻撃を円の動きで受け流す。そうして引き付けた霊子兵器を今度は黒鋼糸の張り巡らされた場所まで引き付け、押し付けるようにして鋼糸に切断させていった。

 黒鋼糸の力を上手く利用して霊子兵器を罠に掛けようという者たちは、他にもいた。
「やばっ」
 非天苦無を投擲してわざと一体の霊子兵器の前に姿を現したのは、由緒正しい忍び装束に黒頭巾姿のヒルデガルド・ガードナー。【扶桑の光】の一員だ。
 付かず離れず、霊子兵器が追う彼女の行く先の道には、霊断を使って待っていた葛葉 祓がいた。
「僕はお子様の我が儘に付き合ってなんかられないの~」
 一瞬の霊力遮断と動作音を消したヒルデガルドに代わって、今度はブーツタイプの安全靴から車輪を飛び出させローラースケート状にした祓が霊子兵器を誘導する。
(私もママを手伝うよ!)
 流水の印を刻んだ灯狐の呼符を、月音 留愛は水溜りに叩きつけた。
 刻んだ術が発動したため狐は現れなかったが、ぶわりと飛沫を上げた水流は霊子兵器の気を引くことが出来たらしい。
 誘導したその先には、予め張ってあった結鏡の印の窓。
 祓そこに滑り込むと窓は消え、勢いのままに走る霊子兵器はその先にもうひとつあった窓に突っ込んだ。
 霊子兵器が出てきた窓の先には、誰もいない――ようだったが、察知する間もなく霊子兵器は見えない糸に絡め取られ呻きのような機械音を上げた。
 それはジェイク・ギデスが扶桑市全図と土地鑑を利用して、景に張って貰った黒鋼糸。
(俺は睦美の直弟子になりたいとか、流派の技を極めたいとかじゃない。霊子兵器の暴挙さえ止められるのなら、利用できる物は天下六霊槍だろうと使わせて貰う)
 潜能解放したジェイクは、黒鋼糸の端を思い切り引っ張って霊子兵器を雁字搦めの形に持っていこうとする。
「大物が掛かったぜ!」
「ジェイクさん、僕も拘束します~」
 祓は霊力を込めた符によって、霊子兵器を徒の檻に閉じ込める。
「蜘蛛の巣にようこそ」
 目を細めたヒルデガルドが、周囲の建物などの障害物を利用して四方八方からの投擲を行う。ほぼ全方位から向かってくる非天苦無の刃を、霊子兵器は避けることも出来ずに受け止めるだけだ。
 留愛も凍結の術式を刻んだ霊符を放ち、霊子兵器は霊気に包まれて動きを鈍くしていく。
 そして、ジェイクは霊子兵器を殴り続けた。
 動かなくなるまで何度も。

 青い鳥型の霊子からくり人形を飛ばして霊子兵器の一体を見定めたシア・クロイツが、皆にそれを知らせる。
「……戒兄! 【桔梗兄妹】の絆の強さ……みせつけるですよ」
「シア、人々に被害を出さない為にも、ここで食い止めよう!」
 霊力の流れを整える蒼い隊服を纏った戒・クレイルが間合いを測りながら、霊子兵器に接近し、霊力を斬ることが可能な蓬燕で防護膜を攻撃していく。
 セルヴァン・マティリアは四季符・秋によって霊力を奪いながら、びらびら簪に下がった飾りを揺らす。
「僅かに反応がある……? この兵器たちの殆どは、マガカミが動力のようですね」
 シアが冬の名を与えられた、強力な術式が刻まれた霊符に水の術式を刻んで放つと、それは霊子兵器の側で無数のシャボン玉に変わる。
「……みんな……気をつけるですよ」
 シャボンに触れたものは敵味方かかわらず溶解液の飛散に晒されるため、前衛にいた者たちは急いでその場から後退した。
 通常のマガカミよりは反応が弱いが、びらびら簪によって誘引された霊子兵器たちに彼らは手を焼く。
 霊子兵器は一体一体が強力で、一度に複数体を相手にしようというのは少々無理があったようだ。
 月路 海璃が振るう輝麗錫杖の清浄な力に癒されながら、やっとその一帯の防護膜を、戒の攻撃が斬り裂いた。
 すかさずセルヴァンは岩の術式を獣の形にして、防備の弱まった霊子兵器へけし掛けていく。
 シアが放った四季符・春を光る花弁に変え、霊子兵器の攻撃の先を惑わせると、駆け出したルナーリア・クロイツは空刀に霊力による霊気を纏わせ、敵を凍えさせる三連撃を叩き込み脚部を破壊する。
「シアちゃん、今霊力を分けるよ」
 術を使い続けて消耗したシアに、海璃は自らの霊力を流し込むように分け与えた。
(まだ間に合う、なら……利用された付喪神、を……救いたい)
 隠蓑笠で姿を消しながら浄錬や弓で援護射撃を行っていた志那都 彩は笠の端から滴り落ちる雨雫に目を伏しながらも、霊子兵器の動力に利用されている付喪神を助けたいと願った。

「レン、僕が全力で守るからね」
 霊子兵器に利用されている付喪神を助けたいからと、ヴェル・アルブスが浄化の技を持つレン・行坂に告げる。
 その眼前では、パートナーの行坂 貫龍造寺 八玖斗が一体の霊子兵器と相対していた。
 貫は黒鋼糸を足場に跳び、八玖斗は鉄刺薊を黒鋼糸に絡め敵に対する壁のように使いながら、同時に影を増やそうと試みる。
「霊子兵器の脆い箇所か……」
「やはり、間接駆動部などではないか?」
 霊子技術に纏わる知識を駆使して見極めようとする貫に、八玖斗が返す。
「確かに、足の関節なんかは弱そうだ。動きも封じられる」
 多脚での素早い動きもあり、機動力を奪う意味でも足を潰すのは有効そうだった。
 貫は積極的に霊子兵器の脚部を狙い、黒双身を撃ち放っていく。
 不規則な編み方と模様によって霊力を歪ませ、錯覚を生じさせる防具と軽業の如き動作で砲撃を避けた八玖斗は、影遁により影に潜った。
 立て続けに脚部を壊され立ち往生する霊子兵器の底側へと移動し、彼は太い二つの砲身を持つ銃の引き金を引いた。
 くぐもった破損の音が、激しい雨音に混じる。
(少しでも日の光を出すことが、僕の役目……)
 四季符・夏を手にしたヴェルは、その力で局地的な晴れを作り出す。
 激しい雨の中の、ほんのひと欠片の晴れ間を見て、半透明の打掛けにより作り出した結界で雨まら守られている状態のレンは、日輪を発動した。
 眩いまでの浄化の光が霊子兵器を焼き払っていく。
「動力部は無事かな?」
 ついに動かなくなった霊子兵器を窺うレンに、貫たちはその装甲を抉じ開け剥がす。
 そうして、彼らは動力として核を使われていた付喪神を救出していくのだった。



 枢の手や支線の動き、何気なく見せ掛けた動作――
 その様子を見極め、どうやって霊子兵器を捜査しているか確信を抱いたエリカが声を上げる。
「あそこだわ、右手側の腰下の方――鎧のあの辺りに制御装置はある筈よ!」
「ええ、恐らくそこで間違いないでしょう」
 アルヤァーガの目もそこに行き着いたらしく同意した。
「了解、うちがみんなに伝えてくる」
 ひとつ頷き、彼女たちの側からすっと離れたのは百地 雪奈だ。
 彼女が敵方に隠れて動き、仲間や睦美 景に伝達していった。
 自らの身体に霊力を付与し、クロウは周囲の敵を纏めて薙ぎ払った。
 枢はそれを軽業のようにかわしたが、足場としていた複数の霊子兵器が巻き込まれ、ピリピリと脚部を震わせている。
 そこに霊子噴進靴の霊力噴出の加速も加えて、キョウは形成した霊力の刃を脈動するような新緑の線が入った黒色の刃に重ね、滑るように枢へと迫った。
 それを舞うようにかわした枢は、クロウが雷切の術によって消耗したらしい様子を見て、左腕の砲身を彼女に向け撃った。
 しかし、それは彼女の狙い通り。
 一瞬、砲撃を食らったかのように見えたクロウは刈意による影で、当の本人は気付いた時には枢の間近に接近していた。
 渾身の一撃は、枢の装備していた右の草摺を抉るように奪い取る。
「これが制御装置か!」
 クロウがその装備から引き剥がした装置を操作すると、周囲の霊子兵器も沈黙した。
「取り返されないように、師範のところへ持っていく」
 そう告げる雪奈に装置を渡すと、彼女は瞬く間に後退して姿をくらませる。
「ちっ、アタシとしたことが……」
 枢は苦虫を噛み潰したような顔をした。
 しかし、彼の足元にある霊子兵器はもう動かない。
 そして、攻防の間に対処していた面々の活躍もあり、結構な数の霊子兵器が撃破されていた。
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