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禍神伝 ~完結編~

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禍神伝 ~完結編~
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最後の避難


 学苑で出撃準備をしていた谷村 ハルキがふと窓を見上げると、先ほどまで激しく降りしきっていた雨が上がりはじめていた。

「荒天の術が破られたみたい」

 谷村 春香が霊子端末壱号で確認した情報をハルキに共有する。
 この事態の収束ももうあと一息かもしれないと、春香は希望を持つ。しかし、あと一息ゆえに油断はできないとも気を引き締めた。
 現に、この学苑内はまだ混乱している部分もある。
 同じ町内の誰それをまだ見ていない、誰誰がいない、家の様子が気になる……。学苑内にいれば様々な情報が耳に入り、その度に不安がる区民がいる。
 そんな区民に対応する隊士がいれば、負傷により前線から離脱してきた隊士たちも運ばれてくる。
 区民の救助や避難誘導が佳境に入ってきたがゆえに、学苑外で実働する隊士たちは減っていた。
 
 二人は最後まできっちりとこの事態を収拾すべく、今自分たちが出るべきだと学苑を後にした。
 
 
 春香が霊子端末から得た情報で他の修祓隊の手の薄い現場へ向かう。
 情報に寄れば、ここらは空き家や廃屋が多い場所で平時でも時たまマガカミの出現情報が寄せられる場所だ。
 避難の必要な住人や管理する人がいないことから今回の避難誘導では後回しにされていたが、このままマガカミを放っておくことはできない。
 
「やっぱりここにはいるね。放っておいたら他の世界への影響も出かねないからね……」

 ハルキは見禍でマガカミの気配を探ると、やはり廃屋の中に霊力を感じた。
 場所柄、避難経路にもなっていなかったため人が通らなかったのだろう。マガカミは、人の気配に引き寄せられることはなかったのか、屋内にとどまっていたようだ。
 しかし、二人の霊力におびき寄せられ廃屋の二階からその姿を現すと春香らに飛び掛かってきた。

「百目!」

 ハルキが春香の前に三戦立ちで立ち構える。
 体重を乗せた百目の一撃がハルキを襲うが、その堅牢な防御でダメージは少ない。
 ハルキの防御の反動で百目が後ずさったところで、ハルキの裏から春香が風雷の遠距離攻撃を繰り出せば、百目は勢いよく家屋に叩きつけられそのまま伸されてしまう。
 
 その衝撃を皮切りに、屋内から鉄鼠が立ち出でる。
 鎌のような爪が二人に迫るが、ハルキが蒼碌でそれを防ぐ。刃と刃がせめぎ合う甲高い音が響いた。
 蒼碌が鉄鼠を切りつけるたびその部分が凍り、徐々に鉄鼠の動きは鈍っていった。
 そこへ春香が風雷を一直線に浴びせた。ほとばしる稲妻のような電流が鉄鼠を射抜き、マヒさせる。
 蒼碌の効果もあり、鉄鼠がそこで動けなくなったことを確認した春香は、清祓でその霊力を浄化した。
 
「一旦学苑へ戻ろう」

 ハルキが浄化されたマガカミを見やって春香に言う。ここにはもうマガカミの気配はなかった。
 
 二人は学苑へ戻ると、ハルキの作った薬膳カレーライスを分け合って食べた。
 その後春香は霊子端末で最新の情報を収集し、次は逃げ遅れた区民の情報を得、再度二人で現場に向かうのだった。


■ ■ ■


 五星梓より、霊子兵器の制御権が奪取され全ての霊子兵器が停止したとの報が入った。
 いよいよ七難会との戦いが佳境となる頃、鴨 柚子飛鷹 シンも区民を護衛しながらのマガカミ退治に奔走していた。

「シンさん、その道を曲がった先からきます!」
「了解! 背中は任せる、柚子」

 空走下駄が瓦を蹴る音が響く。跳流駆で三次元的に駆け回る鴨が道の先で複数のマガカミを見つけ、飛鷹に報告する。
 報告を受けた飛鷹は了解すると、避難民を鴨に任せマガカミの迎撃に向かう。
 地噛を抜刀し、トップスピードで指示のあった角を曲がった先でマガカミを発見。雨の止んだ街中で、奴らを射程に捕えることは容易だった。
 
 飛鷹はホライゾンオーラを展開し、その音でマガカミの注目を集める。
 意識がこちらに向いたのを確信し、続いて月光で敵の目をくらませるとその間に間合いを詰めた。
 構えた地噛を振るい、マガカミを引き寄せた飛鷹は纏火・遅裂きでマガカミに付け入る隙を与えず畳みかける。
 
 その間鴨は雪月花を携え避難民を庇う。
 前方では飛鷹がマガカミと戦っているため前進はできない。周りを警戒しながらその場をやり過ごす。
 しかしその時、鴨の後方から夜雀の集団が飛翔してきた。雨が止んだことで活動的になったのか、嫌に攻撃的な勢いで襲い掛かる。
 鴨は瞬時に後方へ回り、雪月花を開く。傘を盾として使いウォールアタックの要領で押し返せば、体当たりしてきた夜雀は跳ね返された。
 だが、夜雀は次々と鴨らに襲い掛かる。数の多い夜雀に鴨は防戦を強いられた。
 一か八か、雪月花の仕込み刀を引き抜こうかとしたところで、別の隊士たちがやってくるのが見えた。
 
「こちらをお願いします!」

 鴨が叫ぶと、こちらへ向かっていた隊士――パレード ロェ結城 海流が反応し、区民の護衛をバトンタッチした。
 パレードはマリモで作った特製わたあめのついた錫杖を振り、霧散させた霊力で避難民を保護。結城は憑清の御守を渡し避難民を安心させる。
 
 鴨は雪月花から仕込み刀を抜くと向かい来る夜雀を千裂で切り払った。
 周りの木々や悪天候時に飛ばされてきた瓦礫などを巻き込んで吹き飛んだ夜雀たちは、ウォールアタックでのダメージも相乗したのかこちらに戻ってくることはなかった。
 
「ありがとうございました」

 鴨がパレードと結城にお礼を言って避難民の元へ戻ると、パレードたちも避難誘導に協力すると名乗り出た。
 そこへマガカミを処理しきった飛鷹も合流し、四人はパレードのわたあめ錫杖を先頭に学苑へと人々を送り届けたのだった。



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